2021年02月26日

『夢七日 夜を昼の國』いとうせいこう

交通事故に遭い、意識不明となった木村宙太。311の後、原発で働いていた君だが最愛の妻の呼びかけにも応じられない深い眠りの中にいる。201911月、私は君に、日々ささやきかける。―君よ、目覚めよ。(「夢七日」)

1710年、身分違いの悲恋で心中し、恋人・久松と共に「書かれた世界」に放り込まれてしまったお染。歌舞伎や浄瑠璃に脚色され、名誉を傷つけられてきた彼女は今また生き返り、ネットでの中傷に立ち向かおうとする(「夜を茶の國」)。言葉の力を知り抜いた著者がいまこそ贈る、渾身の小説集

文藝春秋 (2020/10/29)


いとうせいこう 1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・テレビ・舞台など、様々な分野で活躍。1988年、小説『ノーライフキング』で作家デビュー。1999年、『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞、2013年、『想像ラジオ』で第35回野間文芸新人賞を受賞。


〈日本の中世に生まれたその前衛を、我々はもっと味わうべきです。文化に理解がない人は「現代の人間にとって意味がよく分からないものはなくなってもいい」みたいな短絡的なものの見方をしますが、いいんですよ。わけの分からないまま取っておくべきなんですよ〉いとうせいこう

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2021年02月20日

「碁石を呑んだ八っちゃん」有島武郎


 八っちゃんが黒い石も白い石もみんなひとりで両手でとって、股の下に入れてしまおうとするから、僕は怒ってやったんだ。

「八っちゃんそれは僕んだよ」

 といっても、八っちゃんは眼ばかりくりくりさせて、僕の石までひったくりつづけるから、僕は構わずに取りかえしてやった。そうしたら八っちゃんが生意気に僕の頬っぺたをひっかいた。お母さんがいくら八っちゃんは弟だから可愛いがるんだとおっしゃったって、八っちゃんが頬ぺたをひっかけば僕だって口惜しいから僕も力まかせに八っちゃんの小っぽけな鼻の所をひっかいてやった。指の先きが眼にさわった時には、ひっかきながらもちょっと心配だった。ひっかいたらすぐ泣くだろうと思った。そうしたらいい気持ちだろうと思ってひっかいてやった。八っちゃんは泣かないで僕にかかって来た。投げ出していた足を折りまげて尻しりを浮かして、両手をひっかく形にして、黙ったままでかかって来たから、僕はすきをねらってもう一度八っちゃんの団子鼻の所をひっかいてやった。そうしたら八っちゃんは暫く顔中かおじゅうを変ちくりんにしていたが、いきなり尻をどんとついて僕の胸の所がどきんとするような大きな声で泣き出した。

 僕はいい気味で、もう一つ八っちゃんの頬ぺたをなぐりつけておいて、八っちゃんの足許あしもとにころげている碁石ごいしを大急ぎでひったくってやった。そうしたら部屋のむこうに日なたぼっこしながら衣物を縫っていた婆ばあやが、眼鏡をかけた顔をこちらに向けて、上眼うわめで睨らみつけながら、

「また泣かせて、兄さん悪いじゃありませんか年かさのくせに」

 といったが、八っちゃんが足をばたばたやって死にそうに泣くものだから、いきなり立って来て八っちゃんを抱き上げた。婆やは八っちゃんにお乳を飲ませているものだから、いつでも八っちゃんの加勢をするんだ。そして、

「おおおお可哀そうに何処を。本当に悪い兄さんですね。あらこんなに眼の下を蚯蚓ばれにして兄さん、御免んなさいと仰有いまし。仰有らないとお母さんにいいつけますよ。さ」

 誰が八っちゃんなんかに御免なさいするもんか。始めっていえば八っちゃんが悪いんだ。僕は黙ったままで婆やを睨みつけてやった。

 婆やはわあわあ泣く八っちゃんの脊中を、抱いたまま平手でそっとたたきながら、八っちゃんをなだめたり、僕に何んだか小言をいい続けていたが僕がどうしても詫ってやらなかったら、とうとう

「それじゃよう御座んす。八っちゃんあとで婆やがお母さんに皆んないいつけてあげますからね、もう泣くんじゃありませんよ、いい子ね。八っちゃんは婆やの御秘蔵っ子。兄さんと遊ばずに婆やのそばにいらっしゃい。いやな兄さんだこと」

 といって僕が大急ぎで一ひとかたまりに集めた碁石の所に手を出して一掴ひとつかみ掴もうとした。僕は大急ぎで両手で蓋をしたけれども、婆やはかまわずに少しばかり石を拾って婆やの坐すわっている所に持っていってしまった。

 普段なら僕は婆やを追いかけて行って、婆やが何んといっても、それを取りかえして来るんだけれども、八っちゃんの顔に蚯蚓ばれが出来ていると婆やのいったのが気がかりで、もしかするとお母さんにも叱しかられるだろうと思うと少し位ぐらい碁石は取られても我慢する気になった。何しろ八っちゃんよりはずっと沢山こっちに碁石があるんだから、僕は威張っていいと思った。そして部屋の真中まんなかに陣どって、その石を黒と白とに分けて畳の上に綺麗にならべ始めた。

 八っちゃんは婆やの膝に抱かれながら、まだ口惜しそうに泣きつづけていた。婆やが乳をあてがっても呑もうとしなかった。時々思い出しては大きな声を出した。しまいにはその泣声が少し気になり出して、僕は八っちゃんと喧嘩しなければよかったなあと思い始めた。さっき八っちゃんがにこにこ笑いながら小さな手に碁石を一杯いっぱい握って、僕が入用ないといったのも僕は思い出した。その小さな握拳が僕の眼の前でひょこりひょこりと動いた。

 その中うちに婆やが畳の上に握っていた碁石をばらりと撒くと、泣きじゃくりをしていた八っちゃんは急に泣きやんで、婆やの膝からすべり下りてそれをおもちゃにし始めた。婆やはそれを見ると、

「そうそうそうやっておとなにお遊びなさいよ。婆やは八っちゃんのおちゃんちゃんを急いで縫い上あげますからね」

 といいながら、せっせと縫物をはじめた。

 僕はその時、白い石で兎を、黒い石で亀を作ろうとした。亀の方は出来たけれども、兎の方はあんまり大きく作ったので、片方の耳の先きが足りなかった。もう十ほどあればうまく出来上るんだけれども、八っちゃんが持っていってしまったんだから仕方がない。

「八っちゃん十だけ白い石くれない?」

 といおうとしてふっと八っちゃんの方に顔を向けたが、縁側の方を向むいて碁石をおもちゃにしている八っちゃんを見たら、口をきくのが変になった。今喧嘩したばかりだから、僕から何かいい出してはいけなかった。だから仕方なしに僕は兎をくずしてしまって、もう少し小さく作りなおそうとした。でもそうすると亀の方が大きくなり過ぎて、兎が居眠りしないでも亀の方が駈っこに勝そうだった。だから困っちゃった。

 僕はどうしても八っちゃんに足らない碁石をくれろといいたくなった。八っちゃんはまだ三つですぐ忘れるから、そういったら先刻のように丸い握拳だけうんと手を延ばしてくれるかもしれないと思った。

「八っちゃん」

 といおうとして僕はその方を見た。

 そうしたら八っちゃんは婆やのお尻の所で遊んでいたが真赤な顔になって、眼に一杯涙をためて、口を大きく開いて、手と足とを一生懸命にばたばたと動かしていた。僕は始め清正公様せいしょうこうさまにいるかったいの乞食がお金をねだる真似をしているのかと思った。それでもあのおしゃべりの八っちゃんが口をきかないのが変だった。おまけに見ていると、両手を口のところにもって行って、無理に口の中に入れようとしたりした。何んだかふざけているのではなく、本気の本気らしくなって来た。しまいには眼を白くしたり黒くしたりして、げえげえと吐はきはじめた。

 僕は気味が悪くなって来た。八っちゃんが急に怖い病気になったんだと思い出した。僕は大きな声で、

「婆や……婆や……八っちゃんが病気になったよう」

 と怒鳴ってしまった。そうしたら婆やはすぐ自分のお尻の方をふり向いたが、八っちゃんの肩に手をかけて自分の方に向けて、急に慌てて後から八っちゃんを抱いて、

「あら八っちゃんどうしたんです。口をあけて御覧んなさい。口をですよ。こっちを、明るい方を向いて……ああ碁石を呑んだじゃないの」

 というと、握り拳をかためて、八っちゃんの脊中を続けさまにたたきつけた。

「さあ、かーっといってお吐きなさい……それもう一度……どうしようねえ……八っちゃん、吐くんですよう」

 婆やは八っちゃんをかっきり膝の上に抱き上げてまた脊中をたたいた。僕はいつ来たとも知らぬ中うちに婆やの側に来て立ったままで八っちゃんの顔を見下みおろしていた。八っちゃんの顔は血が出るほど紅あかくなっていた。婆やはどもりながら、

「兄さんあなた、早くいって水を一杯……

 僕は皆まで聞かずに縁側に飛び出して台所の方に駈けて行った。水を飲ませさえすれば八っちゃんの病気はなおるにちがいないと思った。そうしたら婆やが後からまた呼びかけた。

「兄さん水は……早くお母さんの所にいって、早く来て下さいと……

 僕は台所の方に行くのをやめて、今度は一生懸命でお茶の間の方に走った。

 お母さんも障子を明けはなして日なたぼっこをしながら静かに縫物をしていらしった。その側で鉄瓶のお湯がいい音をたてて煮えていた。

 僕にはそこがそんなに静かなのが変に思えた。八っちゃんの病気はもうなおっているのかも知れないと思った。けれども心の中うちは駈っこをしている時見たいにどきんどきんしていて、うまく口がきけなかった。

「お母さん……お母さん……八っちゃんがね……こうやっているんですよ……婆やが早く来てって」

 といって八っちゃんのしたとおりの真似を立ちながらして見せた。お母さんは少しだるそうな眼をして、にこにこしながら僕を見たが、僕を見ると急に二つに折っていた背中を真直になさった。

「八っちゃんがどうかしたの」

 僕は一生懸命真面目になって、

「うん」

 と思い切り頭を前の方にこくりとやった。

「うん……八っちゃんがこうやって……病気になったの」

 僕はもう一度前と同じ真似をした。お母さんは僕を見ていて思わず笑おうとなさったが、すぐ心配そうな顔になって、大急ぎで頭にさしていた針を抜いて針さしにさして、慌あわてて立ち上って、前かけの糸くずを両手ではたきながら、僕のあとから婆やのいる方に駈けていらしった。

「婆や……どうしたの」

 お母さんは僕を押しのけて、婆やの側に来てこう仰有おっしゃった。

「八っちゃんがあなた……碁石でもお呑のみになったんでしょうか……

「お呑みになったんでしょうかもないもんじゃないか」

 お母さんの声は怒った時の声だった。そしていきなり婆やからひったくるように八っちゃんを抱き取って、自分が苦しくってたまらないような顔をしながら、ばたばた手足を動かしている八っちゃんをよく見ていらしった。

「象牙のお箸を持って参いるましょうか……それで喉を撫でますと……」婆やがそういうかいわぬに、

「刺がささったんじゃあるまいし……兄さんあなた早く行って水を持っていらっしゃい」

 と僕の方を御覧になった。婆やはそれを聞くと立上ったが、僕は婆やが八っちゃんをそんなにしたように思ったし、用は僕がいいつかったのだから、婆やの走るのをつき抜けて台所に駈けつけた。けれども茶碗を探してそれに水を入れるのは婆やの方が早かった。僕は口惜くなって婆やにかぶりついた。

「水は僕が持ってくんだい。お母さんは僕に水を……

「それどころじゃありませんよ」

 と婆やは怒ったような声を出して、僕がかかって行くのを茶碗を持っていない方の手で振りはらって、八っちゃんの方にいってしまった。僕は婆やがあんなに力があるとは思わなかった。僕は、

「僕だい僕だい水は僕が持って行ゆくんだい」

 と泣きそうに怒って追っかけたけれども、婆やがそれをお母さんの手に渡すまで婆やに追いつくことが出来なかった。僕は婆やが水をこぼさないでそれほど早く駈けられるとは思わなかった。

 お母さんは婆やから茶碗を受取ると八っちゃんの口の所にもって行った。半分ほど襟頸に水がこぼれたけれども、それでも八っちゃんは水が飲めた。八っちゃんはむせて、苦しがって、両手で胸の所を引っかくようにした。懐ふところの所に僕がたたんでやった「だまかし船ふね」が半分顔を出していた。僕は八っちゃんが本当に可愛そうでたまらなくなった。あんなに苦しめばきっと死ぬにちがいないと思った。死んじゃいけないけれどもきっと死ぬにちがいないと思った。

 今まで口惜しがっていた僕は急に悲しくなった。お母さんの顔が真蒼まっさおで、手がぶるぶる震えて、八っちゃんの顔が真紅で、ちっとも八っちゃんの顔みたいでないのを見たら、一人ぼっちになってしまったようで、我慢のしようもなく涙が出た。

 お母さんは僕がべそをかき始めたのに気もつかないで、夢中になって八っちゃんの世話をしていなさった。婆やは膝をついたなりで覗きこむように、お母さんと八っちゃんの顔とのくっつき合っているのを見おろしていた。

 その中うちに八っちゃんが胸にあてがっていた手を放して驚いたような顔をしたと思ったら、いきなりいつもの通りな大きな声を出してわーっと泣き出した。お母さんは夢中になって八っちゃんをだきすくめた。婆やはせきこんで、

「通りましたね、まあよかったこと」

 といった。きっと碁石がお腹の中にはいってしまったのだろう。お母さんも少し安心なさったようだった。僕は泣きながらも、お母さんを見たら、その眼に涙が一杯たまっていた。

 その時になってお母さんは急に思い出したように、婆やにお医者さんに駈けつけるようにと仰有った。婆やはぴょこぴょこと幾度も頭を下げて、前垂まえだれで、顔をふきふき立って行った。

 泣きわめいている八っちゃんをあやしながら、お母さんはきつい眼をして、僕に早く碁石をしまえと仰有った。僕は叱れたような、悪いことをしていたような気がして、大急ぎで、碁石を白も黒もかまわず入れ物にしまってしまった。

 八っちゃんは寝床の上にねかされた。どこも痛くはないと見えて、泣くのをよそうとしては、また急に何か思い出したようにわーっと泣き出した。そして、

「さあもういいのよ八っちゃん。どこも痛くはありませんわ。弱いことそんなに泣いちゃあ。かあちゃんがおさすりしてあげますからね、泣くんじゃないの。……あの兄さん」

 といって僕を見なすったが、僕がしくしくと泣いているのに気がつくと、

「まあ兄さんも弱虫ね」

 といいながらお母さんも泣き出しなさった。それだのに泣くのを僕に隠して泣かないような風をなさるんだ。

「兄さん泣いてなんぞいないで、お坐蒲団をここに一つ持って来て頂戴だい」

 と仰有った。僕はお母さんが泣くので、泣くのを隠すので、なお八っちゃんが死ぬんではないかと心配になってお母さんの仰有るとおりにしたら、ひょっとして八っちゃんが助かるんではないかと思って、すぐ坐蒲団を取りに行って来た。

 お医者さんは、白い鬚の方のではない、金縁の眼がねをかけた方のだった。その若いお医者さんが八っちゃんのお腹をさすったり、手くびを握ったりしながら、心配そうな顔をしてお母さんと小さな声でお話をしていた。お医者の帰った時には、八っちゃんは泣きづかれにつかれてよく寝てしまった。

 お母さんはそのそばにじっと坐すわっていた。八っちゃんは時々怖い夢でも見ると見えて、急に泣き出したりした。

 その晩は僕は婆やと寝た。そしてお母さんは八っちゃんのそばに寝なさった。婆やが時々起て八っちゃんの方に行ゆくので、折角く眠りかけた僕は幾度も眼をさました。八っちゃんがどんなになったかと思うと、僕は本当に淋さびしく悲しかった。

 時計が九つ打っても僕は寝られなかった。寝られないなあと思っている中うちに、ふっと気が附ついたらもう朝になっていた。いつの間に寝てしまったんだろう。

「兄さん眼がさめて」

 そういうやさしい声が僕の耳許でした。お母さんの声を聞くと僕の体はあたたかになる。僕は眼をぱっちり開いて嬉うれしくって、思わず臥えりをうって声のする方に向いた。そこにお母さんがちゃんと着がえをして、頭を綺麗に結いって、にこにことして僕を見詰めていらしった。

「およろこび、八っちゃんがね、すっかりよくなってよ。夜中にお通じがあったから碁石が出て来たのよ。……でも本当に怖こわいから、これから兄さんも碁石だけはおもちゃにしないで頂戴ね。兄さん……八っちゃんが悪かった時、兄さんは泣いていたのね。もう泣かないでもいいことになったのよ。今日こそあなたがたに一番すきなお菓子をあげましょうね。さ、お起き」

 といって僕の両脇に手を入れて、抱き起おこそうとなさった。僕は擽ぐったくってたまらないから、大きな声を出してあははあははと笑った。

「八っちゃんが眼をさましますよ、そんな大きな声をすると」

 といってお母さんはちょっと真面目まじめな顔をなさったが、すぐそのあとからにこにこして僕の寝間着を着かえさせて下さった。


初出「読売新聞」大正10年連載

「一房の葡萄」叢文閣1922(大正11)年6月刊行

底本「一房の葡萄 他四篇」岩波文庫19881216日改版第1刷発行


アニメーションにする脚本のように読んだら、令和の今にはない日本人の子供たちの姿が浮かぶ兄弟ケンカも面白かった。

改めて物質や玩具が、不要にも溢れている現実に違和感を抱いた。

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「シャボン玉」ジャン・コクトー

「シャボン玉」(作:ジャン・コクトー、訳:堀口大学)は、たった3行の短い詩なんです。


La Bulle de Savon


Dans la bulle de savon

le jardin n’entre pas.

Il glisse

autour.


「シャボン玉」


シャボン玉の中へは

庭は入れません

まわりをくるくる回っています


短いながら様々な情景や透明な球体が意図する世界へと、探索に導きかせるエネルギーがある。

講談社文芸文庫「月下の一群」の窪田般彌の解説によると、原詩はもっと長いらしい。

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2021年02月19日

「おかし男の歌」長谷川四郎

「おかし男の歌」長谷川四郎


おかし男 詩人だった

町角から ふいと出て


it rains

cats and dogs


パイプに 火つけて

火と水の 音楽きかせ


ふる雨とのぼる煙と

空にローマ字かいた 


o my lonely hat 

おかし男 もういない


長谷川四郎 1909年、北海道に生まれ、法政大学文学部独文科卒業。満州鉄道株式会社に入社、帰国後1952年『シベリヤ物語』(筑摩書房)を発表。以後、小説だけでなく、詩、戯曲、エッセイなど個性的な執筆活動を続けた。著書に『鶴』(1953)『中国服のブレヒト』(1973、以上、みすず書房)『九つの物語』(1980、青土社)、訳書に、デュアメル『パスキエ家の記録』(全10巻、1950-1952)『ブレヒト詩集』(1978、みすず書房)ほか。 1987年歿。

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2021年02月18日

「過激にして愛嬌あり」宮武外骨

異端のジャーナリスト宮武外骨(18671955年)

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『滑稽新聞』『スコブル』など生涯に新聞・雑誌を44刊行して、発禁や入獄を繰り返した反骨の人。


「過激にして愛嬌あり」という言葉を、座右の銘にする。


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「虚偽を排し形式を打破し、露骨正直天真爛漫、無遠慮に大胆に猛烈に其虚を訐き実を写し以て現代社会の指導者たり革命者たらん」宮武外骨

不屈のプロデューサー精神の原点。


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シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選 (竹書房文庫)

ロバート・シルヴァーバーグによる序文、編者によるイスラエルSFの歴史をも含む、知られざるイスラエルSFの世界を一望の中に収める傑作集。 

http://www.takeshobo.co.jp/book_d/shohin/6037501


シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選

 【収録内容一覧】 

まえがき ロバート・シルヴァーバーグ 

「オレンジ畑の香り」(“The Smell of Orange Groves”)ラヴィ・ティドハー/小川隆  

「スロー族」(“The Slows”)ガイル・ハエヴェン/山田順子  

「アレキサンドリアを焼く」(“Burn Alexandria”)ケレン・ランズマン/山田順子  

「完璧な娘」(“The Perfect Girl”)ガイ・ハソン/中村融  

「星々の狩人」(“Hunter of Star”)ナヴァ・セメル/市田泉  

「信心者たち」(“The Believers”)ニル・ヤニヴ/山岸真  

「可能性世界」(“Possibilities”)エヤル・テレル/山岸真  

「鏡」(“In the Mirror”)ロテム・バルヒン/安野玲  

「シュテルン=ゲルラッハのネズミ」(“The Stern-Gerlach Mice”)モルデハイ・サソン/中村融  

「夜の似合う場所」(“A Good Place for the Night”)サヴィヨン・リーブレヒト/安野玲  

「エルサレムの死神」(“Death in Jerusalem”)エレナ・ゴメル/市田泉  

「白いカーテン」(“White Curtain”)ペサハ(パヴェル)・エマヌエル/山岸   

「男の夢」(“A Man’s Dream”)ヤエル・フルマン/市田泉  

「二分早く」(“Two Minutes Too Early”)グル・ショムロン/山岸真  

「ろくでもない秋」(“My Crappy Autumn”)ニタイ・ペレツ/植草昌実  

「立ち去らなくては」(“They Had to Move”)シモン・アダフ/植草昌実  

イスラエルSFの歴史 シェルドン・テイテルバウム&エマヌエル・ロテム

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2021年02月17日

筒井康隆さん最新作「ジャックポット」(新潮社刊)

嗤え、歌え、踊れ、狂え。

今日も世界中が〈大当たり(ジャックポット)〉! 

読者の度肝を抜く超=私小説的短篇集。

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コロナ禍、戦争、ジャズ、映画、文学、嫌=民主主義、そして息子の死――。

かつてなく「筒井康隆の成り立ち方」を明かす最前衛にして超弩級の〈私小説〉爆誕! 

亡き息子との〈再会〉を描いた感動の話題作「川のほとり」収録。


【作者インタビュー】

https://article.auone.jp/detail/1/2/2/202_2_r_20210217_1613516612067500

筒井康隆さん最新短篇集『ジャックポット』【収録内容】

「漸然山脈」「コロキタイマイ」「白笑疑」「蒙霧升降」「ニューシネマ「バブルの塔」」「ダークナイト・ミッドナイト」「レダ」「南蛮狭隘族」「縁側の人」「花魁櫛」「一九五五年二十歳」「ジャックポット」「ダンシングオールナイト」「川のほとり」収録。

編集者さんの要請で最後に三作品が追録されたという。装丁画は筒井伸輔さんで、「川のほとり」で作者を待つ人として夢の中に登場する。



「新潮」コロナ期日記特集号

文芸誌がめずらしく増刷かかりましたね。

筒井康隆町屋良平松田青子ブレイディみかこ柴崎友香菊地信義菊地成孔小山田浩子ヤマザキマリ町田 佐伯一麦角田光代朝吹真理子高橋源一郎石原慎太郎植本一子内沼晋太郎金井美恵子山城むつみ水村美苗飴屋法水今村夏子 浩紀エリイ大竹伸朗島田雅彦青山七恵桐野夏生高山羽根子滝口悠生小川洋子坂本慎太郎千葉雅也塩田千春津村記久子多和田葉子いしいしんじ金原ひとみ池田亮司ケラリーノ・サンドロヴィッチ村田沙耶香柳美里上田岳弘近藤聡乃黒河内真衣子柄谷行人宇佐見りん平野啓一郎坂本龍一青葉市子川上弘美蓮實重彦

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000142.000047877.html

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2021年02月13日

『偶然世界』フィリップ・K.ディック

近未来世界では生産過剰で消費が追い付かないので、クイズや籤引きでポトラッチ風の浪費が定常的に行われていた。無級者と有級者に区別されて、有級者はヒルシステムに所属していて、パワーカードを持って無くすと無級者になる。コンピュータ管理する社会で、計算された偶然が起こるようになっていた。パワーカード持ち主の中からクイズマスターがランダムに選ばれて、社会の統治者として全権を握っている。そして対抗者や前クイズマスターなどが選ぶ、刺客の挑戦を受けなければならない。

元クイズマスターのリース・ベリックは刺客の挑戦を退けて、例外的に長命な権力をもっていた。それはテレパス集団の支援を受けているからで、そのティープは人の思念を読み取り、次の行動を把握して、阻止する能力をもっている。

システムが作動して、現クイズマスターは失脚する。宗教集団のリーダーであるレオン・カートライトが次のクイズマスターに選ばれると、リース・クラッグは刺客としてキース・ペリッグを選び、カートライトに向かわせる。


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あるヒルシステムに所属していた生化学者テッド・ベントリイは、突然に失業する。この巨大な組織の生活に飽き飽きしていたので、リース・ベリックを訪ねて誓約を結んだのだ。カートライトへの刺客にベントリイを利用する目論見だった。

人間がクイズマスターに近づくとき、周囲のティープが即座に刺客を発見し排除してしまうので、合成人間に29人?のオペレータの思念をランダムに刷り込んで、人格の統一性がないようにして、ティープのテレパス能力の裏を書こうとした。

ベントリイはオペレータのひとりとなる。カートライトの宗教集団は無級者のなかの志願者を募って、冥王星の外にある第十惑星への冒険旅行を計画していた。

地球のゲームとクイズと暗殺の統治システムから外れたのが、「自由」な社会の構築を目指した。そこに近づいたとき、惑星の方から地球人は生存可能範囲から出てくるなと異星人の声を聴く。

合成人間キース・ペリッグがカートライトのいる建物へ攻撃、カートライトとティープの逃亡。ダンジョンの奥に到着した合成人間が敵を発見できず、宇宙船の機能を持って月へ飛んで行く。ベントリイが罠から逃れて、ルナでカートライトとべリックの壮絶なコンゲームとなる。

第十惑星で宇宙船が発見され、後半に物語のスピードはすさまじい。大状況のスペクタクルもある一方で、キャラたちの愛憎のもつれも加わって、デックの世界には馴染みとなる合成人間、人格転移、自己同一性の喪失、宇宙的な意志と交流する宗教、人間を罰する巨大で交通不可能な意志、因果律が解体して偶然が支配する社会、消費過多のまま停滞した社会、思い通りに動かない機械、シミュラクラ、テレパス、コミュニケーション不能、自由への渇望、自然の喪失、人造の食べ物やペット、理由不明に追われる主人公、若い女性への憧憬、失業と失恋、家族の解体など入り乱れる。

〔『太陽クイズ』改題〕◇米1955(Philip K. Dick) 


【原題】「SOLAR LOTTERY(アメリカ版)。「WORLD OF CHANCE(イギリス版)。ディック自身がつけた原稿時点の題名は「QUIZMASTER TAKE ALL」。

【邦訳本】ハヤカワ文庫SF 241 小尾芙佐


ハリウッド映画の傑作を10作品観たくらいの充実した空想力が堪能されます。長編テーマとひとつ取り出して、十分に展開していった偶然世界が横たわる。ディックの素晴らしい処女作と評されている原点作品。

ハヤカワ文庫SF電子書籍Kindleで、手軽に読める時代となりましたね。

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2021年02月10日

『ランボー全詩集』アルチュール・ランボー 著(河出文庫・鈴木創士 訳)

「このまま進んでも、あるのは世界の果てだけだ」

史上、最もラディカルな詩群を残して砂漠へ去り、いまだ燦然と不吉な光を放つアルチュール・ランボーの新訳全詩集。

生を賭したランボーの「新しい言語」が鮮烈な日本語でよみがえる。

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「黄金時代」

世界は悪辣だ。

驚くまでもないことさ!

生きろ、そして暗い不運を

火にくべてしまえ。


「永遠」

また見つかった! 

何が? 永遠。

太陽に混じった

海だ。


鈴木創士(スズキ ソウシ)

1954年生まれ。著書に『アントナン・アルトーの帰還』『中島らも烈伝』『魔法使いの弟子』。訳書に『神の裁きと訣別するため』(共訳)『狂人の二つの体制』(共訳)『歓待の書』『ロデーズからの手紙』。

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イーディス・ウォートン(1862-1937)の短編『ローマ熱』(1934年の作品)

『ローマ熱』イーディス・ウォートン


少女時代から幼なじみのふたり。

ふっくらとして血色がよいのがMrs. Sladeと、気弱に見える方がMrs. Ansleyである。

ニューヨーク上流階級出身どちらも早々に夫を亡くして、娘を連れてローマを訪れている。スレイド夫人にとっては、今は亡き夫と出会い、ローマは婚約をした思い出の土地。


月夜の晩に娘たちが夜遊びに出かけてから、レストランのテラス席でおしゃべりをする。表面上は仲がいいのだけれど、スレイド夫人はどこかアンスリー夫人を見下して何かにつけていらいらしている。

若い頃はその美貌が評判でパーティーの花だったスレイド夫人に、その引き立て役に徹していたアンスリー夫人であった。今スレイド夫人はアンスリー夫人が羨ましくてたまらない理由は娘にあった。スレイド夫人の娘ジェニーは完璧ながら良い子すぎてつまらないところがある。ゴージャスだったスレイド夫人の若い頃に比べると、見劣りする。


アンスリー夫人の娘のバーバラは快活で少し危なっかしいが、大輪のバラのような美人。ローマ滞在中に若いイタリア人の公爵とお近づきになり、婚約も間近というところ。バーバラと一緒にいるとジェニーは引き立て役でしかない。この娘たちはスレイド夫人とアンスリー夫人がそっくり入れ替わってしまったような存在である。


これがスレイド夫人のイライラを誘い、アンスリー夫人より優位に立ちたくて、長年秘密にしていたことを打ち明けてしまう。

今は亡き夫デルフィンは、若くハンサムで人気者だった。すでにアリダ(現スレイド夫人)と付き合ってはいたものの、グレイス(現アンスリー夫人)も密かにデルフィンに恋をしていた。

アリダはこっそりデルフィンのふりをして「二人きりで会いたい。夜にコロッセオに来てくれ」とグレイス宛に手紙を出す。デルフィンに恋するグレイスはコロッセオに向かい、病弱なのに長時間ひとり夜風にさらされて待ちぼうけて、ひどい風邪を引き寝込んでしまう。グレイスが寝込んでいる間に、アリダはさっさとデルフィンとの婚約をとりまとめてしまった。

だがスレイド夫人はアンスリー夫人の大事な思い出である、恋していた相手からもらった最初で最後の手紙をぶち壊すことには成功したのだが、思わぬ反撃が待ちうけていたのだった。


[友達だったけれど、本当はあなたは私のことがずっと嫌いだったのよね」FIN


【関連図書】

『アメリカ短編ベスト10』平石貴樹

『Sモームが薦めた米国短篇』小牟田康彦

20世紀アメリカ短篇選』(岩波文庫)


イーディス ウォートン(Edith Wharton)1862 - 1937 米国の作家。ニューヨーク生まれ。旧名イーディス・ニューボールド ジョーンズ。

名門の家に生まれ、ヨーロッパ風の教育を受け小さい頃より創作をしたといわれる。結婚後、ニューヨークの社交界で暮らし、1907年以降パリに住み、国際人として暮らした。’13年に離婚。ニューヨークの上流社会を題材とする作品を次々に発表し、第一作「歓楽の家」(’05年)は社交界で成功しようとした女性の破滅を描き、「汚れなき時代」(’20年)で女性として初のピューリッツァ賞を受賞した。他に自伝「ふりかえって」(’34年)などがあり、’24年にはアメリカより小説上の功績に対して金メダルを授与され、晩年にはアメリカン・アカデミー会員にもなった


イーディス・ウォートン(1862-1937)の短編『ローマ熱』(1934年の作品)を訳しています。

http://f59.aaacafe.ne.jp/~walkinon/romanfever.html

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2021年02月09日

『20世紀イギリス短篇選』小野寺健編訳(全2巻)岩波文庫

短篇小説の面白さは人生のある局面を鋭く鮮かに切りとって見せる,その技の冴えにあるといってよい。

そういう実作にこと欠かぬ現代イギリスの傑作短篇から二十三篇を選りぬいておとどけする。


上巻には第一次大戦前から第二次大戦中の,また下巻には五〜七年代の作品を収められ、どの一篇にも短篇の妙味をたっぷり味わうことができる。


テレビドラマを観るよりも、刺激的な展開や想像する面白さにあふれている世界です。本書を構成された小野寺 健さんの業績結晶のように想えます。

【収録作品】

『20世紀イギリス短篇選 上』

「船路の果て」 ラドヤード・キップリング 

「故郷への手紙」 アーノルド・ベネット 

「ルイーズ」 サマセット・モーム 

「岩」E・M・フォースター 

「上の部屋の男」P・G・ウドハウス 

「キュー植物園」ヴァージニア・ウルフ 

「痛ましい事件」 ジェイムズ・ジョイス 

「指ぬき」 D・H・ロレンス 

「脱走」 ジョイス・ケアリー 

「ジョコンダの微笑」 オルダス・ハックスリー 

「幽鬼の恋人」 エリザベス・ボウエン 

「単純な生活」 H・E・ベイツ 


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『20世紀イギリス短篇選 下』

「あいつらのジャズ」 ジーン・リース

「確実な人生」 ショーン・オフェイロン

「この四十年」ノーラ・ロフツ

「レディだけの旅」オリヴィア・マニング

「届かない花束」 ウィリアム・サンソム

「蠅取紙」エリザベス・テイラー

「豪華な置時計 ミュリエル・スパーク

「愛の習慣」 ドリス・レッシング

「欠損家庭」 ウィリアム・トレヴァー

「再会」 マーガレット・ドラブル

「別れられる日」スーザン・ヒル 


(岩波文庫1987年刊行)


小野寺 健(おのでら たけし、1931919 -201811日)

英文学者、翻訳家、横浜市立大学名誉教授。神奈川県横浜市生まれ。東京大学英文科卒、同大学院に学び、1958年茨城大学専任講師、1962年横浜市立大学助教授、1967年英国リーズ大学に留学。横浜市立大学教授を96年定年退官、日本大学教授、2002年退職。文化学院・文芸学科講師。英国20世紀小説を専門とし、ジョージ・オーウェル、アニータ・ブルックナー、EM・フォースターなど翻訳多数、またエッセイ集もある。

posted by koinu at 14:26| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

親鸞『教行信証』総序より

「難思の弘誓は難度海を度する大船」 


人の知性ではおもいはかれない、生けるものを広く救済しようと誓った。その阿弥陀仏の本願は、渡ることが難しい荒海のような苦悩の中を生きる人を、苦しみを超えた世界へと渡らせる大きな船である。


「無碍の光明は無明の闇を破する慧日なり」

何ものにも妨げられない阿弥陀仏のひかりは、真実の智慧がない人の闇を破る太陽であろう。


「難思の弘誓は難度海を度する大船、無碍の光明は無明の闇を破する慧日なり」親鸞『教行信証』総序より

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2021年02月08日

『20世紀アメリカ短篇選』(岩波文庫)

上巻には主として20世紀前半に活躍した作家13人の作品を収録。突然失踪して修道僧となった社交界のヒーロー、ニューヨーク下町の人間群像、飢餓に苦しむ先住民族の長老を待つ掟―見事な人物描写を通して、20世紀前半のアメリカ社会を写しとる。 

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<上巻>【収録作品】

オー・ヘンリー『平安の衣』/イーデス・ウォートン『ローマ熱』/セオドア・ドライサー『ローゴームと娘のテレサ』

ジャック・ロンドン『生命の法則』/シャーウッド・アンダソン『手』/キャサリン・アン・ポーター『あの子』

ジョン・ドス・パソス『メアリー・フレンチ』/スコット・フィッツジェラルド『パット・ホビーとオーソン・ウェルズ』

ウィリアム・フォークナー『ある裁判』/アーネスト・ヘミングウェイ『なにかの終焉』/ジョン・スタインベック『人を率いる者』

アースキン・コードウェル『スウェーデン人だらけの土地』/ネルソン・オルグレン『スティックマンの笑い』

 

20世紀アメリカ短篇選』(岩波文庫)<下巻

主として第二次大戦前に活躍した作家たちの作品を収録した上巻に続いて、ウラジーミル・ナボコフからフィリップ・ロスまで、下巻は戦後に活躍した作家たちの作品を収める。極めて対照的な作品世界で興味深い。

【収録作品】

ウラジミール・ナボコフ『ランス』/ユードラ・ウェルティ『ある記憶』/バーナード・マラマッド『ユダヤ鳥』

ソール・ベロウ『父親になる男』/ジーン・スタフォード『動物園で』/カーソン・マッカラーズ『木・岩・雲』

J.D.サリンジャー『笑い男』/カート・ヴォネガット・ジュニア『バーンハウス心霊力についてのレポート』

トルーマン・カポーティ『ミリアム』/フラナリー・オコナー『ゼラニューム』/ジョン・バース『暗夜海中の旅』

ドナルド・バーセルミ『黄金の雨』/ジョン・アップダイク『別居』/フィリップ・ロス『たいへん幸福な詩』

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2021年02月07日

『アメリカ短編ベスト10』平石貴樹

アメリカ小説の魅力がぎっしり詰まった短編小説集。

「アメリカ人のいろいろな生活、いろいろな考えかたを、まずは楽しんでもらいたい」という主旨のもとベスト10作品をアメリカ文学研究の泰斗で本格推理小説作家・平石貴樹が厳選し翻訳した。氏、初の編訳アンソロジー。

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【内容】

1 エドガー・アラン・ポー「ヴァルデマー氏の症例の真相」

2 ハーマン・メルヴィル「バートルビー」

3 セアラ・オーン・ジュエット「ウィリアムの結婚式」

4 イーディス・ウォートン「ローマ熱」

5 ジャック・ロンドン「火をおこす」

6 ウィリアム・フォークナー「あの夕陽」

7 アーネスト・ヘミングウェイ「何かの終わり」

8 バーナード・マラマッド「殺し屋であるわが子よ」

9 ジェイムズ・ボールドウィン「サニーのブルース」 

10 レイモンド・カーヴァー「シェフの家」

次 リチャード・ブローティガン「東オレゴンの郵便局」

あとがき

松柏社 (2016/6/8)


小説家・平石貴樹ならではのセレクションと名訳でお届けする珠玉のアンソロジーとなっている。


エドガー・アラン・ポー「ヴァルデマー氏の病状の真相」

催眠術の研究をしていた男は、かねてより「死に行く人に対する催眠術の効果」について調査をしたいと考えていた。今まさに死につつある人には催眠術はかかるのか、かかりかたはどうなのか。

そんな彼の疑問に長患いの末死期が近いヴァルデマー氏が協力を申し出てくれた。今まさに臨終と言う時に男がかけた催眠術の影響で、ヴァルデマー氏は

 


ハーマン・メルヴィル「バートルビー」

法律家の男は代書人としてバートルビーという男を雇い入れる。問題だらけの他の従業員と比べ、バートルビーは黙々とたくさんの仕事をこなす能力を持っていた。

しかしバートルビーは、代書以外の仕事はどんな些細な雑用でも「しない方がありがたいのですが」と繰り返すばかりで何もしようとしない。そのやんわりとした拒絶は徐々に拡大し、やがて代書の仕事さえしなくなりだす。


セアラ・オーン・ジュエット「ウィリアムの結婚式」

久しぶりに田舎に戻った女性は、旧友の女性を訪ねる。そこで遠くで働く彼女の息子ウィリアムが帰省して、結婚式を挙げると知る。村はその噂でウキウキとわきたっていた。


イーディス・ウォートン「ローマ熱」

幼馴染の未亡人二人が、お互いの娘を連れてローマへと旅行に来た。娘たちが出かけたあとに、二人はかつて娘時代にローマへと来た時の思い出話を始める。そしてかつての悪意と裏切りが、今になって暴かれてゆくのだった。


ジャック・ロンドン「火をおこす」

極寒の山中に、男は犬を連れて一人で調査に出かけた。仲間の待つキャンプ地へと戻るところ、とてつもない寒さの中、川の氷を踏み抜いて足を濡らしてしまった。命を守るために火を起こして濡れた体を温めようとするのだったが。


ウィリアム・フォークナー「あの夕陽」

まだ幼い白人の少年。父が所有する黒人奴隷の女性は、失踪した内縁の夫である黒人奴隷が自分を襲うために隠れていると信じている。

少年は彼女に懐いているが、そんな妄想のような考えを持っているのに不安を抱いていた。


アーネスト・ヘミングウェイ「何かの終わり」

河原に釣りに来たふたり男女。いつも通り振る舞う女性に対して、男性は妙に心沈んでいるのだった。


バーナード・マラマッド「殺し屋であるわが子よ」

仕事もせず引きこもり、ただ街を徘徊する息子。心配する父は何をしてやればいいのかもわからず、ただ息子の後を追いかけている。


ジェイムズ・ボールドウィン「サニーのブルース」

教師である黒人青年は弟のサニーを心配していた。サニーは過去問題を起こし、刑務所に入っていた過去がある。出所後何をしているかもわからないサニーがバンドでピアノを弾くと呼ばれて、青年は弟を見守りに行く。


レイモンド・カーヴァー「シェフの家」

アルコール依存症の夫と離婚した女性。入院した元夫が友人のシェフの家をただ同然で借り、自分とやり直したがっていると聞く。現在の恋人と別れ、元夫を支えるためその家に行き、彼を支えることにする。

今までにないほど穏やかで満ち足りた生活を送る二人のもとに、家主のシェフから連絡があったのだが。


平石貴樹 1948年、北海道函館生まれ。アメリカ文学者、作家。東京大学名誉教授。斬新な切り口と強烈な筆致で読者未体験の世界を切り拓き話題を呼んだ『アメリカ文学史』(小社刊) 1983年すばる文学賞受賞作『虹のカマクーラ』、最近では『松谷警部と目黒の雨』『松谷警部と三鷹の石』 『松谷警部と三ノ輪の鏡』(東京創元文庫)を発表し作家として活躍する。

posted by koinu at 17:00| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『フォークナー短編集』ウィリアム・フォークナー著 (新潮社)

ノーベル賞作家が捉えた嫉妬、怒り、嘘――。ヘミングウェイと並び称される20世紀アメリカ文学の巨匠が映し出す、8つの物語。

ミシシッピー州に生れ、アメリカ南部の退廃した生活や暴力的犯罪の現実を斬新で独特な手法で描き、20世紀最大のアメリカ文学者に数えられるノーベル賞作家フォークナーの作品集。大人の悪の世界と子供の無邪気な世界を描いた「あの夕陽」をはじめ、黒人リンチ事件と老嬢の心境を捉えた「乾燥の九月」、南部人の中にくすぶる復讐心を扱った「納屋は燃える」など珠玉の8編を収録。

【目次】
嫉妬(Jealousy)
赤い葉(Red Leaves)
エミリーにバラを(A Rose for Emily)
あの夕陽(That Evening Sun)
乾燥の九月(Dry September)
孫むすめ(Wash)
バーベナの匂い(An Odor of Verbena)
納屋は燃える(Barn Burning)
解説 龍口直太郎/訳
《新潮文庫649円(税込)》

「想像力と数100円」
アメリカンな軽量嗜好な思考になる前に、想像力と数100円が可能となる文庫読書。頭が悪くなるような音楽を聴いている場合じゃない事態が続いている。
posted by koinu at 14:00| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『Sモームが薦めた米国短篇』小牟田康彦 編訳

名作の案内人としても名高いサマセット・モームがアメリカの大都市以外に住む、手軽に文学書が手に入らない読者のために選んだ20世紀初頭の英米短篇46篇から米国作家の6篇を厳選して新訳。

 【目次】

「贈り物」ジョン・スタインベック

「再訪のバビロン」F・スコット・フィッツジェラルド

「フランシス・マカンバーの短い幸せな生涯」アーネスト・ヘミングウェイ

「エミリーに一輪のバラを」ウイリアム・フォークナー

「詩は金になる」コンラード・バーコヴィッチ

「ローマ熱」イーディス・ウォートン

編訳者 あとがき


四六判上製256頁 2,500(税別)

ISBN978-4-89642-538-3 C0097


このところアメリカの短編小説がさまざまに、乱反射して面白く読んだりします。


「キリスト教を教会という場所や制度に閉じ込めることをやめ、個人の手に『霊性』を開放したために、アメリカの近代文学は、日本やイギリスのように、徹底的な世俗化をともないながら展開することはなく、「身近なもの」への注目が、そのまま『霊的なもの』への関心や思索を導くような、超越的な文学、アレゴリーやら象徴主義やらを招きよせやすい、いわば『前近代の香りの高い』文学を、産み出すことになった。」

平石貴樹『アメリカ文学史』より。

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2021年02月03日

句集「此処」池田澄子(朔出版)

◆『此処』12句抄 

初蝶来今年も音をたてずに来 

私生きてる春キャベツ嵩張る 

桜さくら指輪は指に飽きたでしょ 

大雑把に言えば猛暑や敗戦日 

ごーやーちゃんぷるーときどき人が泣く 

玄関を出てあきかぜと呟きぬ 

散る萩にかまけてふっと髪白し 

粕汁の雲のごときを二人して 

偲んだり食べたり厚着に肩凝ったり 

この道に人影を見ぬ淑気かな 

生き了るときに春ならこの口紅 

柚子の皮刻み此の世よ有り難う 

〈第72回読売文学賞作品より〉


口語を駆使した俳句で人気の池田澄子が、80代を迎えて直面したのは 親しい句友、そして伴侶の死。 

亡き師へ、友へ、夫へ――語りかけるように、優しく切なく真っ直ぐ言葉で、 この世の「此処」から放つ380句。 前作『思ってます』以後、待望の第七句集。


◆「あとがき」より 俳句を詠むその時の思いは、この地球に何故か生まれたマンモスの、狼の、 金魚の菫の人間の、偶然に生まれ合わせたもの同士の偶然の出会いと別れの、 その数知れぬことの一つとして書こうとした。 

少なくともペンを持っているときの私の大小の悦びや嘆きは、 此の世に在る万物の思いの一つであった。 


◆池田澄子(いけだすみこ) 

1936年、鎌倉に生まれ、新潟で育つ。 30歳代の終り近く俳句に出会う。1975年、「群島」入会のち同人。 1983年より三橋敏雄に私淑、のち師事。 「俳句評論」を経て、1988年「未定」「船団」入会。 1995年「豈」入会。 2020年3月、「トイ」創刊に参加。 

2020年6月、「船団の会」散在。 

句集に、『空の庭』『いつしか人に生まれて』『ゆく船』『たましいの話』『拝復』『思ってます』『現代俳句文庫29・池田澄子句集』。 散文集に、『休むに似たり』『あさがや草紙』『シリーズ自句自解1・ベスト100』。 対談集 に『兜太百句を読む・金子兜太×池田澄子』。 現在「トイ」「豈」所属。第72回読売文学賞。


◆自選十五句より 
人たちよ駅に寒しと相知らず 
籠に蜜柑テレビのテロップに「爆破」 
年越し蕎麦の蕎麦湯暗渠に合流す 
此処あったかいよとコンビニエンスストアの灯 
心配をしながらリラを嗅いでいた 
夜目遠目染井吉野は花ばかり 
アマリリスあしたあたしは雨でも行く 
河骨や大人になり老人になり 
夕凪や寄港のたびに船古び 
わが晩年などと気取りてあぁ暑し


『池田澄子句集』抄

瞬いてもうどの蝶かわからない

閉経までに散る萩の花何匁

青い薔薇あげましょ絶望はご自由に

じゃんけんで負けて蛍に生まれたの

まいまいに生まれずまいまいを愛す

これ以上待つと昼顔になってしまう

生きるの大好き冬のはじめが春に似て

クリスマス熟睡の猫抱いてあげる

セーターにもぐり出られぬかもしれぬ

ピーマン切って中を明るくしてあげた

私より彼女が綺麗糸みみず

あめんぼがあめんぼを見る目の高さ

着ると暑く脱ぐと寒くてつくしんぼ

山彦や知らなくてもよいけもの道

鯣マラルメ年の始めが暇である

いつしか人に生まれていたわ アナタも?

小一時間噴水を見たり見なかったり

蝉殻を見つけオーイと男親

魚図鑑にデンキウナギがいつも一匹

枝垂桜わたくしの居る方が正面

想像のつく夜桜を見に来たわ

行く先はどこだったよくさくらさくら

舟虫のあつまりづかれしておる

さむいさむいと夜が好き雪が好き

おーいおーいと永久にあなたを呼ぶ山彦

藤壺の生死のほどがわからない

一旦緩急ありし山河よ蚊柱よ


「池田澄子句集」(現代俳句文庫)より

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2021年01月31日

カア カア カア 〜 アレン・ギンズバーグ

長詩「カディッシュ」ギンズバーグより


カア カア 生まれてからのすべての僕の年月 それはひとつの夢だ カア カア ニューヨークのバス 破れた靴 広いハイスクール 

カア カア すべて主の幻


主よ 主よ 主よ カア カア カア 

主よ 主よ 主よ カア カア カア ああ主よ。


アレン・ギンズバーグ

1926年生まれ。アメリカの詩人。ニュージャージー州出身。コロンビア大学を卒業後、1956年に詩集『吠える その他の詩』を刊行、ビート・ジェネレーションの中心的存在に。1997年没。

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2021年01月27日

『21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考』ユヴァル・ノア・ハラリ(河出書房)

私たちはどこにいるのか。そして、どう生きるべきか――。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』で全世界に衝撃をあたえた新たなる知の巨人による、人類の「現在」を考えるための21の問い。

いま何が起こっているのか――?
すべての現代人必読の21章

1 幻滅――先送りにされた「歴史の終わり」
2 雇用――あなたが大人になったときには、仕事がないかもしれない
3 自由――ビッグデータがあなたを見守っている
4 平等――データを制する者が未来を制する
5 コミュニティ――人間には身体がある
6 文明――世界にはたった一つの文明しかない
7 ナショナリズム――グローバルな問題はグローバルな答えを必要とする
8 宗教――今や神は国家に仕える
9 移民――文化にも良し悪しがあるかもしれない
10 テロ――パニックを起こすな
11 戦争――人間の愚かさをけっして過小評価してはならない
12 謙虚さ――あなたは世界の中心ではない
13 神――神の名をみだりに唱えてはならない
14 世俗主義――自らの陰の面を認めよ
15 無知――あなたは自分で思っているほど多くを知らない
16 正義――私たちの正義感は時代後れかもしれない
17 ポスト・トゥルース――いつまでも消えないフェイクニュースもある
18 SF――未来は映画で目にするものとは違う
19 教育――変化だけが唯一不変
20 意味――人生は物語ではない
21 瞑想――ひたすら観察せよ

内容(「BOOK」データベースより)
『サピエンス全史』で人類の「過去」を、『ホモ・デウス』で人類の「未来」を描き、世界中の読者に衝撃をあたえたユヴァル・ノア・ハラリ。本書『21 Lessons』では、ついに人類の「現在」に焦点をあてる―。テクノロジーや政治をめぐる難題から、この世界における真実、そして人生の意味まで、われわれが直面している21の重要テーマを取り上げ、正解の見えない今の時代に、どのように思考し行動すべきかを問う。いまや全世界からその発言が注目されている、新たなる知の巨人は、ひとりのサピエンスとして何を考え、何を訴えるのか。すべての現代人必読の21章。

ユヴァル・ノア・ハラリ
イスラエルの歴史学者・哲学者。
オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得、エルサレムのヘブライ大学で教鞭をとる。
著書『サピエンス全史』は世界で1200万部を超えるベストセラー。

柴田 裕之
翻訳家。早稲田大学・Earlham College卒業。訳書にドゥ・ヴァール『道徳性の起源』、リドレー『繁栄』(共訳)、リフキン『限界費用ゼロ社会』、ハラリ『サピエンス全史(上下)』など。 
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2021年01月25日

千三つ屋と正直不動産は言った!

千に三つしか本当のことを言わないこと、すなわち嘘つきとかほら吹きのことをいう。 また、不動産の商談では千に三つしか成約に至らないという意味から不動産業者のことを千三つ屋という。 併せて不動産業者は本当のことを言わない嘘つきであるという蔑視語として使われることもある。 


ビッグコミック連載『正直不動産』が、日経メディアでも話題になってる。人気マンガはウソを言えなくなった不動産勤務のキャラクターが主人公で、「千三つ」というセリフが初回に登場する。


隠語大辞典「千三つ屋」

読み方:せんみつや

千の中三つがやつと真当だといふ当にならぬ人のこと。〔隠語〕

千の中三つだけが真実だといふ当にならぬ人のことをいふ。

噓言家。本当のことは千に三つ位といふ意「万三屋」ともいふ。いい加減なことを云つて特許品や其他種々の事柄を周旋する者をいふ。


⑴ブローカー(周旋屋)のこと、千に三つ当ればよいの意。⑵転じて虚言家のこと。

当てにならぬ人。千三ツ屋とは鰻漁師のことで、千かきに三尾位とれることから連想し、千の中三ツ位しか真実のない人物をいう。〔俗〕


@噓言家。本当のことは千に三つ位という。又「万三屋」ともいう。Aいい加減なことをいって特許品やその他種々の事柄を周旋するものをいう。

分類 俗/一般 【隠語大辞典】より

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