2019年06月19日

「日本語ほど面白いもの はない邑智小学校六年一組特別授業」 柳瀬尚紀著/新潮社刊

天才の柳瀬先生、すばらしい時間をありがとう―『チョコレート工場の秘密』の訳者が島根県の山奥・美郷町で学ぶ十六名の前で教壇に立った。さて、事の顛末は...。子供たちの可能性は無限大!感動の教育ドキュメント。

生徒は六年生全員の十六人。2009年10月28日に行われた特別授業。

1 子どもの本屋さんに誘われて・・・著者の経歴、特別授業のきっかけについて 

2 みんな日本語という世界の住人−第一回特別授業

3 六年一組十六名からの手紙
4 邑智小学校は開校七年目・・・過疎という現実と、教育環境の素晴らしさについて
5 最大の奇蹟は言語である−第二回特別授業
6 子どもたちの創作
7 空想授業:邑智中学校一年生に向けて


▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)
一連のロアルド・ダール翻訳を世に出してみて、「子供」というものは決して侮れないと知ったこともある。読者ハガキに書かれている感想の言葉がすばらしかった。工夫を凝らした訳語に対して、常
識にとらわれない新鮮な反応が返ってくる。少年・少女というものがどれだけの可能性を秘めているか、ぼくはいささか無知でありすぎた。

「言葉のはじまり」を考えるとき、ぼくの頭にはいつも、人間同士が共通に持っている気持、通じ合っている気持というものが浮かびます。(…)なにかとても近い間柄同士で交わされている気持の通
じ合い方があって、そんな中から言葉が生まれてきたのではないかとも思うのです。言葉はもともと暖かい関係の中から生まれてきたのではないか、そんなふうにも考えたくなるときがあるのです。

言葉があるおかげでおたがいに通じ合える、言葉は他人に何かを伝える。そしてもう一つ、当たり前すぎていちいち意識しないでしょうが、言葉は他人だけでなく、自分に何かを伝えるんですね。(…)
つまり、ほとんど一日中、話相手がいなくても言葉といっしょなんですね。いつも言葉がいっしょにいてくれるから安心できる。
言葉は生き物です。ですから、大切に、ていねいに、使ってあげなくてはいけません。
「本」という文字は、「木」という文字に横棒が一本ついています。
この横棒は木の根もとを表します。本は、言葉を手に入れて文字を手に入れた人間の根もとになってくれるんですね。
木の葉は次から次へと生い茂ります。言葉というものも、みんながどんどんしゃべったり書いたりすることにより、言葉が言葉をどんどん生んで、葉っぱのように増えてゆく。「言葉」と書くようにな
った理由は、だいたいこういうことではないかと、古い国語の学者たちは言っています。
芥川の文章の中に、(…)「最大の奇蹟は言語である」という言葉があります。人間にとって、ほんとうに珍しく貴重な出来事は「言語」、言葉を持ったことだと言っているんです。
「すごくいい」と言ったのは、言葉が、ええと、どう言ったらよいかな…言葉が、そう、きみらの瞳みたいに生き生きしてる。言葉が、きみらの瞳のように、ひたむきなんです。うそがない。ごまかしがない。
去年、坂井先生とゆっくりお話したとき、小六のきみたちについてこうおっしゃっていました。
「みんな、力いっぱい遊んでいます」
いい言葉だなあ、と、心打たれました。「力いっぱい」という言葉には、充実感があります。
何が「本」で、何が「末」か。
これはなかなか厄介な問題です。中学生になって、これからぐんぐん大人になっていくきみたちは、将来、この難問に出会うことがしょっちゅうあるはずです。それは自分で決めなくてはいけない。自
分で決めるしかない。きみたちなら大丈夫だと信じていますから、ああしろ、こうしろと、ぼくは言いません。
きみたちなら大丈夫だと信じていますと言ったのは、きみたちの六年生のときの「学級目標」を知っているからです。目にしたとき、ぼくはほんとに感心しました。
「利他の行動」
「物事を追究」
「力を出し尽くす」
この三つですね。
(…)
この言葉さえ忘れなければ、これから先の人生で、何が「本」で何が「末」かという問題を正しく解いていけるはずです。
強烈に印象に残ったボードレールの言葉があります。天才とは、随意に再発見される幼少期である。天才というのは、好きなときに好きなように思い起こす幼少期なのだ、と、天才詩人は言っているのです。
(本書から引用)
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ランボーの10月詩篇

Jean Nicolas Arthur Rimbaud

(中原中也/ 翻訳)



「災難」


霰弾の、赤い泡沫しぶきが、ひもすがら

青空の果で、鳴つてゐる時、

その霰弾を嘲笑あざわらつてゐる、王の近くで

軍隊は、みるみるうちに崩れてゆく。


狂気の沙汰が搗き砕き

幾数万の人間の血ぬれの堆積やまを作る時、

――哀れな死者等は、自然よおまへの夏の中、草の中、歓喜の中、

甞てこれらの人間を、作つたのもおゝ自然おまえ!――


祭壇の、緞子の上で香を焚き

聖餐杯(せいさんはい)を前にして、笑つてゐるのは神様だ、

ホザナの声に揺られて睡り、


悩みにすくんだ母親達が、古い帽子のその下で

泣きながら二スウ銅貨をハンケチの

中から取り出し奉献する時、開眼するのは神様だ

〔一八七〇、十月〕Jean Nicolas Arthur Rimbaud

(中原中也/ 翻訳)



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「シーザーの激怒」


蒼ざめた男、花咲く芝生の中を、

黒衣を着け、葉巻咥へて歩いてゐる。

蒼ざめた男はチュイルリの花を思ふ、

曇つたその眼めは、時々烈しい眼付をする。


皇帝は、過ぐる二十年間の大饗宴に飽き/\してゐる。

かねがね彼は思つてゐる、俺は自由を吹消さう、

うまい具合に、臘燭のやうにと。

自由が再び生れると、彼は全くがつかりしてゐた。


彼は憑かれた。その結ばれた唇の上で、

誰の名前が顫へてゐたか? 何を口惜くやしく思つてゐたか?

誰にもそれは分らない、とまれ皇帝の眼めは曇つてゐた。


恐らくは眼鏡を掛けたあの教父、教父の事を恨んでゐた、

――サン・クルウの夕べ夕べに、かぼそい雲が流れるやう

その葉巻から立ち昇る、煙にジツと眼めを据ゑながら。

〔1870年10月〕Jean Nicolas Arthur Rimbaud

(中原中也/ 翻訳)


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「キャバレールにて」


午後の五時。

五六日前から、私の靴は、路の小石にいたんでゐた、

私は、シャルルロワに、帰つて来てゐた。

キャバレールでバタサンドヰッチと、ハムサンドヰッチを私は取つた、

ハムの方は少し冷え過ぎてゐた。


好い気持で、緑のテーブルの、下に脚を投出して、

私は壁掛布かべかけの、いとも粗朴な絵を眺めてた。

そこへ眼の活々とした、乳房の大きく発達した娘こが、

――とはいへ決していやらしくない!――


にこにこしながら、バタサンドヰッチと、

ハムサンドヰッチを色彩いろどりのある

皿に盛つて運んで来たのだ。


桃と白とのこもごものハムは韮の球根たまの香放ち、

彼女はコップに、午後の陽をうけて

金と輝くビールを注いだ。

〔一八七〇、十月〕 Jean Nicolas Arthur Rimbaud

(中原中也/ 翻訳)

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2019年06月18日

アルチュール・ランボー詩篇より 「いたづら好きな女」「失われた毒薬」

「いたづら好きな女」


ワニスと果物の匂ひのする、

褐色の食堂の中に、思ふ存分

名も知れぬベルギー料理を皿に盛り、

私はひどく大きい椅子に埋まつてゐた。


食べながら、大時計オルロージュの音を聞き、好い気持でジツとしてゐた。

サツとばかりに料理場の扉とが開くと、

女中が出て来た、何事だらう、

とにかく下手な襟掛をして、ベルギー・レースを冠つてゐる。


そして小さな顫へる指で、

桃の肌へのその頬を絶えずさはつて、

子供のやうなその口はとンがらせてゐる、


彼女は幾つも私の近くに、皿を並べて私に媚びる。

それからこんなに、――接唇くちづけしてくれと云はんばかりに――

小さな声で、『ねえ、あたし頬ほつぺたに風邪引いちやつてよ……』


シヤルルロワにて、1890

(中原中也/ 翻訳)



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「失はれた毒薬」(未発表詩)


ブロンドとまた褐かちの夜々、

思ひ出は、ああ、なくなつた、

夏の綾織レースはなくなつた、

手なれたネクタイ、なくなつた。


露台ルコンの上に茶は月が、

漏刻が来て、のんでゆく。

いかな思ひ出のいかな脣趾くちあと

ああ、それさへものこつてゐない。


青の綿布めんぷの帷幕とばりの隅に

光れる、金の頭の針が

睡つた大きい昆虫のやう。


貴重な毒に浸されたその

細尖ほさきよ私に笑みまけてあれ、

私の臨終をはりにいりようである!


OEVRES D'ARTHUR RIMBAUD

アルチュール・ランボー Jean Nicolas Arthur Rimbaud

(中原中也/ 翻訳)

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2019年06月16日

新編バベルの図書館 / ホルヘ・ルイス・ボルヘス編纂序文 (国書刊行会)

「バベルの図書館」全30巻は絶版になっているので、図書館で借りて読もうとしたら、「新編バベルの図書館」全6巻となっていた。

変形版「バベルの図書館」シリーズは図書として縦長で軽くてユニークなものだった。合本となると以前のように、寝転んで物語世界へ惚けてはいられないかも知れない。ボルヘスの選んだ作品の目次だけでも記憶しておこう。


1: アメリカ編: Hawthorne, Poe, London, James, Melville. 

2: イギリス編1: Wells, Wilde, Saki, Chesterton, Kipling. 

3: イギリス編2: Stevenson, Lord Dunsany, Machen, Hinton, Beckford. 

4: フランス編: Voltaire, Villiers de L'Isle-Adam, Bloy, Cazotte. 

5: ドイツ・イタリア・スペイン・ロシア編: Kafka, Dostoyevsky, Andreev, Tolstoy, Meyrink, Papini, Alarcón. 

6: ラテンアメリカ・中国・アラビア編: Racconti Argentini, Le mille e una notte : Galland, Le mille e una notte : Burton, P'u sung-ling, Lugones, Borges


収録作品

1: ウェイクフィールド / ナサニエル・ホーソーン著 ; 酒本雅之訳

人面の大岩 / ナサニエル・ホーソーン著 ; 竹村和子訳

地球の大燔祭 / ナサニエル・ホーソーン著 ; 竹村和子訳

ヒギンボタム氏の災難 / ナサニエル・ホーソーン著 ; 竹村和子訳

牧師の黒いベール / ナサニエル・ホーソーン著 ; 酒本雅之訳


盗まれた手紙 / エドガー・アラン・ポー著 ; 富士川義之訳

壜のなかの手記 / エドガー・アラン・ポー著 ; 富士川義之訳

ヴァルドマル氏の病症の真相 / エドガー・アラン・ポー著 ; 富士川義之訳

群集の人 / エドガー・アラン・ポー著 ; 富士川義之訳

落し穴と振子 / エドガー・アラン・ポー著 ; 富士川義之訳

マプヒの家 / ジャック・ロンドン著 ; 井上謙治訳

生命の掟 / ジャック・ロンドン著 ; 井上謙治訳

恥っかき / ジャック・ロンドン著 ; 井上謙治訳

死の同心円 / ジャック・ロンドン著 ; 井上謙治訳

影と光 / ジャック・ロンドン著 ; 井上謙治訳

私的生活 / ヘンリー・ジェイムズ著 ; 大津栄一郎訳

オウエン・ウィングレイヴの悲劇 / ヘンリー・ジェイムズ著 ; 林節雄訳

友だちの友だち / ヘンリー・ジェイムズ著 ; 林節雄訳

ノースモア卿夫妻の転落 / ヘンリー・ジェイムズ著 ; 大津栄一郎訳

代書人バートルビー / ハーマン・メルヴィル著 ; 酒本雅之訳


2: 白壁の緑の扉 / H・G・ウェルズ著 ; 小野寺健訳

プラットナー先生綺譚 / H・G・ウェルズ著 ; 小野寺健訳

亡きエルヴシャム氏の物語 / H・G・ウェルズ著 ; 小野寺健訳

水晶の卵 / H・G・ウェルズ著 ; 小野寺健訳

魔法屋 / H・G・ウェルズ著 ; 小野寺健訳

アーサー・サヴィル卿の犯罪 / オスカー・ワイルド著 ; 小野協一訳

カンタヴィルの幽霊 / オスカー・ワイルド著 ; 小野協一訳

幸せの王子 / オスカー・ワイルド著 ; 矢川澄子訳

ナイチンゲールと薔薇 / オスカー・ワイルド著 ; 矢川澄子訳

わがままな大男 / オスカー・ワイルド著 ; 矢川澄子訳

無口になったアン夫人 / サキ著 ; 中西秀男訳

お話の上手な男 / サキ著 ; 中西秀男訳

納戸部屋 / サキ著 ; 中西秀男訳

ゲイブリエル-アーネスト / サキ著 ; 中西秀男訳

トーバモリー / サキ著 ; 中西秀男訳

名画の額ぶち / サキ著 ; 中西秀男訳

非安静療法 / サキ著 ; 中西秀男訳

やすらぎの里モーズル・バートン / サキ著 ; 中西秀男訳

ウズラの餌 / サキ著 ; 中西秀男訳

あけたままの窓 / サキ著 ; 中西秀男訳

スレドニ・ヴァシュター / サキ著 ; 中西秀男訳

邪魔立てするもの / サキ著 ; 中西秀男訳

三人の黙示録の騎士 / G・K・チェスタトン著 ; 富士川義之訳

奇妙な足音 / G・K・チェスタトン著 ; 富士川義之訳

イズレイル・ガウの名誉 / G・K・チェスタトン著 ; 富士川義之訳

アポロンの眼 / G・K・チェスタトン著 ; 富士川義之訳

イルシュ博士の決闘 / G・K・チェスタトン著 ; 富士川義之訳

祈願の御堂 / ラドヤード・キプリング著 ; 土岐恒二訳

サーヒブの戦争 / ラドヤード・キプリング著 ; 土岐恒二訳

塹壕のマドンナ / ラドヤード・キプリング著 ; 土岐恒二訳

アラーの目 / ラドヤード・キプリング著 ; 土岐知子訳

園丁 / ラドヤード・キプリング著 ; 土岐知子訳


3: 声たちの島 = The isle of voices / ロバート・ルイス・スティーヴンソン著 ; 高松雄一, 高松禎子訳

壜の小鬼 = The bottle imp / ロバート・ルイス・スティーヴンソン著 ; 高松雄一, 高松禎子訳

マーカイム = Markheim / ロバート・ルイス・スティーヴンソン著 ; 高松雄一, 高松禎子訳

ねじれ首のジャネット = Thrawn Janet / ロバート・ルイス・スティーヴンソン著 ; 高松雄一, 高松禎子訳

潮が満ち引きする場所で = Where the tides ebb and flow / ダンセイニ卿著 ; 原葵訳

剣と偶像 = The sword and the idol / ダンセイニ卿著 ; 原葵訳

カルカッソーネ = Carcassonne / ダンセイニ卿著 ; 原葵訳

ヤン川の舟唄 = Idle days on the Yann / ダンセイニ卿著 ; 原葵訳

野原 = The field / ダンセイニ卿著 ; 原葵訳

乞食の群れ = The beggars / ダンセイニ卿著 ; 原葵訳

不幸交換商会 = The bureau d'echange de maux / ダンセイニ卿著 ; 原葵訳

旅籠の一夜 = A night at an inn / ダンセイニ卿著 ; 原葵訳

黒い石印のはなし = The novel of the black seal / アーサー・マッケン著 ; 南條竹則訳

白い粉薬のはなし = The novel of the white powder / アーサー・マッケン著 ; 南條竹則訳

輝く金字塔 = The shining pyramid / アーサー・マッケン著 ; 南條竹則訳

第四の次元とは何か = What is the fourth dimension? / チャールズ・ハワード・ヒントン著 ; 宮川雅訳

平面世界 = A plane world / チャールズ・ハワード・ヒントン著 ; 宮川雅訳

ペルシアの王 = The Persian king / チャールズ・ハワード・ヒントン著 ; 宮川雅訳

ヴァテック = Vathek / ウィリアム・ベックフォード著 ; 私市保彦訳



4: メムノン / ヴォルテール著 ; 川口顕弘訳

慰められた二人 / ヴォルテール著 ; 川口顕弘訳

スカルマンタドの旅行譚 / ヴォルテール著 ; 川口顕弘訳

ミクロメガス / ヴォルテール著 ; 川口顕弘訳

白と黒 / ヴォルテール著 ; 川口顕弘訳

バビロンの王女 / ヴォルテール著 ; 川口顕弘訳

希望 / ヴィリエ・ド・リラダン著 ; 釜山健訳

ツェ・イ・ラの冒険 / ヴィリエ・ド・リラダン著 ; 井上輝夫訳

賭金 / ヴィリエ・ド・リラダン著 ; 井上輝夫訳

王妃イザボー / ヴィリエ・ド・リラダン著 ; 釜山健訳

最後の宴の客 / ヴィリエ・ド・リラダン著 ; 井上輝夫訳

暗い話、語り手はなおも暗くて / ヴィリエ・ド・リラダン著 ; 釜山健訳

ヴェラ / ヴィリエ・ド・リラダン著 ; 井上輝夫訳

煎じ薬 / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

うちの年寄り / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

プルール氏の信仰 / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

ロンジュモーの囚人たち / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

陳腐な思いつき / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

ある歯医者へのおそろしい罰 / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

あんたの欲しいことはなんでも / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

最後に焼くもの / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

殉教者の女 / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

白目になって / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

だれも完全ではない / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

カインのもっともすばらしい見つけもの / レオン・ブロワ著 ; 田辺保訳

悪魔の恋 / ジャック・カゾット著 ; 渡辺一夫, 平岡昇訳



5: 禿鷹 / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

断食芸人 / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

最初の悩み / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

雑種 / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

町の紋章 / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

プロメテウス / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

よくある混乱 / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

ジャッカルとアラビア人 / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

十一人の息子 / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

ある学会報告 / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

万里の長城 / フランツ・カフカ [著] ; 池内紀訳

鰐 / ドストエフスキー [著] ; 望月哲男訳

ラザロ / アンドレーエフ [著] ; 金澤美知子訳

イヴァン・イリイチの死 / トルストイ [著] ; 川端香男里訳

J・H・オーベライト、時間 - 蛭を訪ねる / グスタフ・マイリンク [著] ; 種村季弘訳

ナペルス枢機卿 / グスタフ・マイリンク [著] ; 種村季弘訳

月の四兄弟 / グスタフ・マイリンク [著] ; 種村季弘訳

泉水のなかの二つの顔 / ジョヴァンニ・パピーニ [著] ; 河島英昭訳

完全に馬鹿げた物語 / ジョヴァンニ・パピーニ [著] ; 河島英昭訳

精神の死 / ジョヴァンニ・パピーニ [著] ; 河島英昭訳

「病める紳士」の最後の訪問 / ジョヴァンニ・パピーニ [著] ; 河島英昭訳

もはやいまのままのわたしではいたくない / ジョヴァンニ・パピーニ [著] ; 河島英昭訳

きみは誰なのか? / ジョヴァンニ・パピーニ [著] ; 河島英昭訳

魂を乞う者 / ジョヴァンニ・パピーニ [著] ; 河島英昭訳

身代わりの自殺 / ジョヴァンニ・パピーニ [著] ; 河島英昭訳

逃げてゆく鏡 / ジョヴァンニ・パピーニ [著] ; 河島英昭訳

返済されなかった一日 / ジョヴァンニ・パピーニ [著] ; 河島英昭訳

死神の友達 / ペドロ・アントニオ・デ・アラルコン [著] ; 桑名一博訳

背の高い女 / ペドロ・アントニオ・デ・アラルコン [著] ; 菅愛子訳


6:

アルゼンチン短篇集/千夜一夜物語 ガラン版/千夜一夜物語 バートン版/蒲松齢/レオポルド・ルゴーネス/ホルヘ・ルイス・ボルヘス

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『塩の像』レオポルド・ルゴーネス 牛島信明 訳(国書刊行会)

衝撃的に創造性ある面白い短篇集だが絶版となっている。作者L・ルゴーネスは、1874-1938のアルゼンチンの作家。ボルヘスの先駆者である。

巻頭の短編「イスール」は飼い猿に言葉を教えるのにとり憑かれた科学者の物語。猿に並々ならぬ関心で「説明し難い現象』と人間嫌いの紳士が人格分裂を起こしたとき、もう一人の「自分」は猿の形を示した。

イスール Yzur

火の雨 La Lluvia de Fuego

塩の像 La Estatua de Sal

アブデラの馬 Los Caballos de Abdera

説明し難い現象 Un Fenomeno Inexplicable

フランチェスカ Francesca

ジュリエット祖母さん Abuela Julieta


「アブデラの馬」は挙って馬の飼育に熱中する国で、甘やかされた馬が人間並みの知性を持ってしまい反乱を起こす。かなり寓話的・比喩的な内容で、最後の結末に驚く。

「火の雨」はゴモラの街に火の雨が降り始まり、住民が死に絶えた街で最後まで生きていた男の目から描いた終末の話。

「塩の像」はソドムの町で隠遁生活をしていた修道僧が、塩の像になったロトの妻と会う話。対となって描かれるゴモラは栄耀栄華を謳歌していた人類の滅亡の儚さを叙情的に語られ、ソドムのほうは神と人間の対立する焦点を濃厚に展開される。


J・L・ボルヘス編纂 バベルの図書館 18 レオポルド・ルゴーネス『塩の像』 1989年国書刊行会

ルゴーネス

1874-1938。アルゼンチンの詩人、小説家。ボルヘスの師。

詩集

『黄金の山々』 (Las montañas del oro) 1897年

『庭園の黄昏』(Los crepúsculos del jardín) 1905年

『感傷的な暦』 (Lunario sentimantal) 1909年

『世俗的な頌歌』 (Odas seculares) 1910年

『風景の書』 (El libro de los paisajes) 1917年

『昔からの詩』 (Poemas solariegos) 1927年

『リオ・セコのロマンセ』(Romances del Río Seco) 1938年

短編集

『ガウチョの戦い』 (La guerra gaucha) 1905年

『奇妙な力』 (Las fuerzas extrañas) 1906年 収録作に「イスール」(Yzur)など。


牛島信明

1940年生れ。東京外国語大学教授。主要著訳書--『反=ドン・キホーテ論』(弘文堂)、パス『弓と竪琴』(国書刊行会)、ガルシア・ロルカ『血の婚礼 他二篇』(岩波文庫)、セルバンテス『ドン・キホーテ』(岩波少年文庫)ほか。

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ボルヘスが編纂しイタリアのフランコ・マリーア・リッチ社から刊行された文学全集『バベルの図書館』全30巻。本の形は縦長で箱入り、瀟洒という言葉が当てはまる装丁。一冊は本棚に置きたい、書物メディアの魅力をいかんなく発揮しているシリーズだった。


絶版になっている本書の亡き訳者を敬いつつ「塩の像」訳文をWB公開されていた。

http://www.k-hosaka.com/nonbook/shionozo.html

短編「塩の像」レオポルド・ルゴーネス 
posted by koinu at 15:37| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ボルヘス『詩という仕事について』(岩波文庫)

【1967年にアメリカのハーヴァード大学で行われたボルヘスの講義録より】


The woods are lovery, dark, and deep,

But I have promises to keep,

And miles to go before I sleep,

And miles to go before I sleep.


「森は美しく、暗く、深い、しかし、私には果たすべき約束がある、

眠りに就く前に歩くべき道のりが、

眠りに就く前に歩くべき道のりが」


 これらの詩行は完璧そのもので、トリックなどは考えられない。しかしながら、不幸なことに、文学はすべてトリックで成り立っていて、それらのトリックは−−いずれは−−暴かれる。そして読み手たちも飽きるわけです。しかしこの場合は、いかにも慎ましいものなので、それをトリックと呼ぶのが恥ずかしいほどです(ただし、他に適当な言葉がないので、そう呼ばせてもらいます)。

 何しろここでフロストが試みているのは、誠に大胆なものですから。同じ詩行が一字一句の違いもなく二度、繰り返されていますが、しかし意味は異なります。最初の "And miles to go before I sleep." これは単に、物理的な意味です。道のりはニューイングランドにおける空間としてのそれで、sleep は go to sleep 「眠りに就く」を意味します。二度目の "And miles to go before I sleep" では、道のりは空間的なものだけでなく、時間的なそれでもあって、その sleep は die 「死ぬ」もしくは rest 「休息する」の意であることを、われわれは教えられるのです。詩人が多くの語を費やしてそう言ったとすれば、得られた効果は遙かに劣るものとなったでしょう。

私の理解によれば、はっきりした物言いより、暗示の方が遙かにその効果が大きいのです。人間の心理にはどうやら、断定に対してはそれを否定しようとする傾きがある。エマソンの言葉を思い出してください。

"Arguments convince nobody" 「論証は何ぴとをも納得させない」と言うのです。

それが誰も納得させられないのは、まさに論証として提示されるからです。われわれはそれをとくと眺め、計量し、裏返しにし、逆の結論を出してしまうのです。

『詩という仕事について』ボルヘス(岩波文庫)より


「詩は隠喩だ」とボルヘスは言った。

アルゼンチンの詩人ルゴネスから言葉を引きつつ「単語はすべて死せる隠喩である」という。
ボルヘスによると kingの語源は代表者、熟慮を意味するconsider という単語は元来は「星占い」という意味だった。それが「王」「熟慮」という意味になったらしい。
知らずしらずのうちに「隠喩」を使っているが、ボルヘスは「読み手が隠喩として受け止めるものに限定」していた。

目と星、時と河、女と花、夢と生、眠と死、戦と火など、書き手の関心のある隠喩に絞って執筆トレーニングを積み重ねればいい。 


 ボルヘス『詩という仕事について』(岩波文庫)電子書籍

https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b248482.html


レオポルド・ルゴネス(Leopoldo Lugones, 1874年6月13日 - 1938年2月18日)アルゼンチンの詩人、短編作家。アルゼンチン近代を代表する文学者の一人で、モデルニスモ文学の担い手の一人。行動的な性格と旺盛な知的好奇心の持ち主で、著作の中には哲学や数学に踏み込むものもある。斬新な詩風と巧みな修辞が評価されている。ルゴーネスとも表記する。

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『アテンション 注目で人を動かす7 つの新戦略』(飛鳥新社)

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注目には3種類ある。

@即時の注目:感覚による数秒で揮発

A短期の注目:一時的な記憶の保管庫

B長期の注目:HDドライブに保存

3種類の注目を集めるのに使われる動機づけ →7種類のトリガー


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01 自動トリガー

感覚的刺激を与えて注目させる

色・シンボル・音など視覚・聴覚・触覚によって効果あげる。

02 フレーミング・トリガー

経験・性質・興味・文化的傾向などの文脈が判断基準に及ぼす影響の大きさ。

枠フレームを利用して「思考の惰性」を突破するのに「適応」と「議題設定」を活用。

03 破壊トリガー

相手の予想を裏切り、破壊して注目を集める。驚き(サプライズ) 単純さ(シンプリシティ)重要性(シグニフィカンス)の3S要素。

意味があり妥当で大事な要素が冒頭に含まれていること。

04 報酬トリガー

何か達成したら金品や物品を授ける 「外的報酬」、達成感といった心の満足を授ける「内的報酬」が長期における忠誠を育む。

05 評判トリガー

注目する・しないの判断に評判に依拠する。「専門家」「権威者」「大衆」へ、長期に注目を集める評判は「一貫性」「個性」「時間」によって構成。

06 ミステリー・トリガー

ウェイターがまだ料理の出てない注文について信じられないほど細かい記憶力を発揮する。

終わっていないタスクを忘れられない現象「サスペンス」「感情移入」「予期せぬ展開」

「クリフハンガー(ハラハラ状態)」 

07 承認トリガー

他者や社会から認められたいという欲求を利用。承認とは「認知」「評価」「共感」を満たす。自分に注目してほしいとか、人気者になりたいと望むことはタブーである。

以上7つのトリガーは、置かれた状況や相手により具体的手法が変化する。まず「相手を知る」=『ペルソナ』で具体的かつ存在する人とシンボリズム描くのが有効。アテンションとトリガーを駆使することで、人々が望んでいる音楽や映画を創作することが限りなく永遠に続けられる。

プロは新しいモノを生み出し、アマチュアはお金を払って💰、自己満足な詩集や音楽アルバムを消費する。人々や世界へ向かうよりは、一人称の幼稚な満足を望むからだ。

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2019年06月14日

『金沢・酒宴 』吉田 健一( 講談社文芸文庫)

『金沢・酒宴 』吉田 健一( 講談社文芸文庫)

金沢の町の路次にさりげなく家を構えて心赴くままに滞在する、内山という中年の男。名酒に酔い、九谷焼を見、程よい会話の興趣に、精神自由自在となる"至福の時間"の体験を深まりゆく独特の文体で描出した名篇『金沢』。


灘の利き酒の名人に誘われて出た酒宴の人々の姿が、四十石、七十石入り大酒タンクに変わる自由奔放なる想像力溢れる傑作『酒宴』を併録


「菊正という酒はどこか開き直った、さよう、然らば風のところがあって寝転んでなどは飲めないが、こっちもその積りで正坐して付き合っていれば、味は柾目が通っていて、酔い心地もかえって頭を冴えさせるのに近いものだから、まずは見事な酒である。これに比べると、酒田の初孫という酒はもっと軟かに出来ていて、味も淡々として君子の交りに似たものがあり、それでいて飲んでいるうちに何だかお風呂に入っているような気持ちになって来る。自分の廻りにあるものはお膳でも、火鉢でも、手を突き出せば向うまで通りそうに思われて、その自分までが空気と同じく四方に拡る感じになり、それが酔い潰れたのではなしに、春風が吹いて来るのと一つになった酔い心地なのである。」(「酒宴」)

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2019年06月09日

アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー (ハヤカワ文庫JA)

最前線の作家陣が贈る 

百合とSFをテーマにした 

世界初のアンソロジー 


百合――女性間の関係性を扱った創作ジャンル。創刊以来初の3刷となったSFマガジン百合特集の宮澤伊織・森田季節・草野原々・伴名練・今井哲也による掲載作に加え、「ゲンロン 大森望 SF創作講座」出身の新鋭女性作家2名による共作「海の双翼」、『元年春之祭』の陸秋槎が挑む言語SF「色のない緑」、そして『天冥の標』を完結させた小川一水が描く宇宙SF最新作「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」などを収める、世界初の百合SFアンソロジー。


http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014242/

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クリエイティブな編集術

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地方同人誌のような田舎くさい、
泥臭い世界から遠く離れた感覚。
「編集術」によって、
映像も言葉も音響も化学反応をおこす。
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posted by koinu at 10:00| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月06日

『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ』―16歳から始める思考者になるための社会学― 秋嶋 亮(旧名・響堂雪乃)

続・ニホン内容説明全目次版.TXT

待望のベストセラー続編が堂々完成!


私たちが直面する「重層化する危機」とは何なのか?

もはや国家の消滅は避けられないのか?

そして私たちはこの時代を生き抜くことができるのか?

本書はそれに明晰に答える最高峰の社会学テクストである。


目次

第1章 これから君たちは政府が消滅した時代を生きる

1  主権が無くなったことに誰も気付いていない

2  自国のことを自国で決めてはならないというルール

3  国民の議会が廃止され外国の企業が政府になる

4  離脱も撤回も永久に許されない協定に署名した

5  政治家もTPPの内容を知らない

6  代表する権利の無い者が勝手に協定を結んだ

7  国民を守る機能としての政府はもう無い

8  相手国を破滅させる貿易を何と言うか

9  津波や地震よりもグローバルな資本が脅威である世紀

10  主権を明け渡して繁栄できるわけがない

11  ニホンは植民地主義に呑み込まれた

12  TPPに不参加のアメリカがTPPを通じてニホンを支配する仕組み

13  ニホンという地域は残るが日本という国家は消える 

14  メキシコの国境フェンスが暗示するニホンの未来

15  新聞テレビが外国企業の手先となり侵略の実態を隠した

16  やがて投資家の訴訟がニホンのおカネを奪い尽くす

17  どれほど酷いことになるかは隣の国を見れば分かる

18  国を売ることが一番儲かる時代

19  経済特区は現代の租界

20  世界で最も愚かな国であることの証明

21  『家畜人ヤプー』さながらの人々

22  移民社会は低賃金社会である

23  失業者で溢れ返る国が100万人の移民を呼ぶ狂気

24  国産の奴隷よりも安く使える外国産の奴隷が欲しい

25  移民の数だけ雇用が消える

26  かつてない「就業の大競争時代」の到来

27  この貧困のスパイラルから永久に逃れられない

28  下層に転落した人々の運命

29  イギリス国民は移民に悲鳴を上げEU離脱を求めた

30  移民国家は犯罪国家になる

31  なぜ貴重な雇用を国民ではなく移民に与えるのか

32  天文学的な移民コストは国民の負担となる

33  要するに外資の配当のための移民政策であるということ

34  少子化を仕掛け労働者不足を訴える

35  移民を呼ぶためにわざと出生率を引き下げた

36  グローバル資本が描いたニホン人削減計画

37  国民が移民に入れ替わってもニホンと言えるのか

38  野党もグルになって移民を推進した

39  安価な外国人を輸入するため国会で用いられた詭弁

40  ギャンブル依存症者が世界一多い国でカジノを作る

41  外国の食い物にされる国は何と呼ばれるか

42  植民地主義は生活領域にまで広がる

43  「水による支配」は未来永劫続く

44  縁故主義者が生命の水を外国に売り飛ばした

45  水道の民営化によって政治家が手にする報酬の額

46  社会資本を私物化した挙句に生きる権利を粉砕する

47  重大な問題が伝えられないのではなく、重大な問題だからこそ伝えられない

48  東欧の女性と同じ悲劇がニホンの女性を襲う

49  地球的な経済暴力が弱者を翻弄する時

50  「生きづらさ」は海を超えてやって来た

51  白昼堂々と売春婦の募集車が行き交う


第2章 「政治が存在しないこと」について語ろう

52  国会は国会議員が法律を作っていると錯覚させるための「劇場」である

53  与野党の対立はシナリオに基づく

54  重要な事は絶対に国会で取り上げられない

55  政治家が政治をやっているのではないから、政権が交代したところで何も変わらない

56  避難者の支援打ち切りが与党と野党の談合を浮彫りにした

57  本質を読み解くため極論から出発すること

58  被選挙権のない者たちが法律を作っている

59  それでも政治家が政治をやっていると思っているなら頭がどうかしている

60  「威嚇の装置」として置かれている在日米軍

61  外国の軍隊が駐留して政治を決める

62  公式には認められないが非公式の事実であること

63  アメリカの政界にばら撒かれたおカネがニホンの法律を決定する仕組み

64  経済が失敗すると国民は貧しくなるが投資家は栄える

65  人間のクズたちに支配される社会

66  有権者は肉屋を支持する豚に等しい

67  響きは美しいが中身は空っぽの言葉がある

68  宗教と政治が癒着し地獄のような社会を作った

69  政府が国民に仕掛けるテロリズム

70  選挙の開票結果は最初から決まっているのか

71  外資からおカネを貰い外資のための法律を作る

72  法律を商品として取引する市場がある

73  政治家の人柄ではなく政治家の金脈から考えること

74  歴史は政治家が金融家の下僕であることを語る

75  国民を安売りすることで成り立つ経済

76  外資をボロ儲けさせるために計画倒産する国

77  消費税が投資家の配当に化ける仕組み

78  国民からマネーを搾り取る装置としての消費税

79  考えないことを伝統とする社会

80  生きるという行為そのものに課税する

81  福祉の解体が国策であること

82  「世帯の貧困」を「子どもの貧困」という言葉で誤魔化す

83  政治が失敗したからではなく、政治が成功したから貧困が蔓延した

84  これほど豊かな国がこれほど貧しい理由

85  国民の老後のおカネを戦争産業に貢ぐ最低の国になった

86  日米関係とは主人と奴隷の関係だと考えればいい

87  500年にわたる文明の蹂躙の果てに

88  本当の権力は常に透明である

89  ニホンの財政が悪化するほど外資の利益は増える

90  人類史上最も搾取される社会


第3章 原発事故は終わっていない

91  ニホン人の民度を超えた問題であること

92  悲観か楽観かではなく、何が事実かを考える

93  事故の処理にかかる費用の一切が国民の負担となる

94  怒りで頭の中が真っ白になること

95  自分の利益のために他者の人生を奪う

96  2+2=5的な思考の強制

97  矛盾を受容させ思考力を破壊する

98  東京ドームが衆愚ドームになった日

99  ド級の原子力災害の最中にオリンピックを開催する

100  国連の人権委員に「風評被害」と言えるのか

101  検閲と宣伝によって成り立つ政府

102  学者もエコノミストも現実を理解していない

103  沈黙する君も悪の共犯である

104  国民を虐待する政府の登場

105  道徳と法律が同時に崩壊した

106  無抵抗であるほど残虐度は増す

107  最悪の時代に最悪の事故が起きたという意味

108  文学者も哲学者もこれほど危険な社会を想像できなかった

109  だから国民は永久に抵抗しない

110  戦時社会と酷似した同調圧力の下で

111  チェルノブイリより酷い汚染地帯に子どもたちを住まわせるな

112  この軽薄の群れを人間の集合と言えるのかよく考えて欲しい

113  卑劣な人々によって災禍は果てしなく広がる

114  冷静でいられるのは理性的だからではなく理解力に欠けているからだ

115  それでも楽しく歌い踊れる人々

116  正常な思考を麻痺させるもの

117  報道の自由度は原発事故によって先進国中最悪になった

118  世界から軽蔑されるきっかけとなった出来事

119  新聞を信じる者は生き残れない

120  ニホンが世界の核処理場になると狂喜する新聞社

121  地球上で最も汚染された国の末路として

122  自由貿易の枠組みで原発事故を捉えると恐ろしい現実が見える

123  経済の破滅に気付かない経済人たち

124  言語の壊乱が社会の錯乱を表す

125  自分は何も知らないと自覚すること

126  その場限りのデマカセが公式の話法になった

127  この国の人権はあくまで「目安」であって、法律によって保障されたものではない

128  「絆」は家畜を縛る道具の意味なのだが

129  迷信と疑似科学で纏められる国民

130  原子炉の爆発とともに巨大なカルト国家が出現した

131  進化ではなく退化を目指す文明

132  悪は裁かれるという妄想を捨てること

133  なぜ子どもたちを守ろうとしないのか

134  これはやがて国際問題に発展するが幼稚な詭弁は通用しない

135  存在の基盤が液状化する現代

136  国家の消滅は人類社会のありふれた事件なのだ

137  私たちの文明はオブラートのように溶解的な基層の上に立つ

138  人間の生命が羽毛のように軽い時代になった


第4章 メディアという意識の牢獄から抜け出す

139  巨大な不況が戦後最長の好況に偽装された

140  報道が認識を歪め事実を不明にする

141  現実は在るのではなく作られるということ

142  メディアが提供する虚構の共有によって社会は成立する

143  国民は無知に沈められる

144  問題はどのようにすり替えられているか

145  とろい人々を標本にして政府が望む世論をデッチ上げる

146  対日支配の道具としてのテレビ

147  大衆とは情報に操作される群れを意味する

148  ニホン人を「下等人種」にするためのプログラム

149  身体ではなく精神を破壊する戦争

150  見てきたものは領土ではなく地図に過ぎない

151  テレビに気を取られている隙に国を乗っ取られた

152  派手なスキャンダル報道の裏で危険な法案がひっそりと決まる

153  マスコミと政治家が酒を飲みながらニュースの内容を決定する国

154  自民党に献金する日本新聞協会

155  知的レベルが低い者ほど新聞を信用する

156  思考しない脳の餌となるもの

157  レベルの低い文化の泡からレベルの低い国民が生まれた

158  「文化一般は死の文化である」という言葉の意味

159  世界観はマスコミによって作られた擬制である

160  新聞テレビを神と崇めるのか

161  この国では50歳の大人の政治知識が15歳の子どもと大差無い

162  マスメディアを所有する者たち

163  内閣官房機密費に飼われる卑しいジャーナリストの群れ

164  世界の投資マネーで潤う北朝鮮がニホンを攻撃する理由などない

165  「騙されやすい軽信の時代」を象徴する北朝鮮問題

166  1億人がポスト真実に惑わされている

167  「民は愚に保て!」という号令が聞こえないか

168  全てが見えているようで何も見えていない

169  ある年齢を過ぎて事実を知ると発狂する


第5章 生き残るために世界の仕組みを知ること

170  ニホンの主義を誰も知らない

171  国家は国民のためではなく資本のためにある

172  何重にも巻き付けられた支配の鎖

173  戦争をやっている国よりも人が殺されている

174  人間の本性は危機で露わになる

175  グローバルな戦争経済の中で全てが繋がった

176  バラバラに見えるものが一つの恐ろしい構造を示す

177  金融と軍事の連合に支配される「自由の国」

178  大統領も末端の使い走り程度の者に過ぎない

179  政治家は選出母体の代理人であるという原則 

180  資本は議会に命令する

181  だから戦争は永久に無くならない

182  憎悪と対立を煽れば支配が容易になるという論理

183  暴力の思想が戦時から今に繋がる

184  気付いた時には戦争前夜

185  自由から逃走する時代の再来

186  ニホンのナチ化が東京から始まった

187  戦争を経済の中心に据える構想

188  やがて非国民という言葉が日常語になる

189  右翼も左翼も形式的に存在するだけで機能は無い

190  愛国者ほど国を批判し、売国奴ほど国を賛美する

191  支配を正統化するための神話とフィクション

192  馬鹿が多くなると社会は右翼化する

193  こうすれば憲法は簡単に改正できる

194  派遣の兵隊になって死んだところで何の補償もない

195  監視と検閲と弾圧の未来

196  権力に付け込まれている内に思考力を失い無反応になった

197  鋳型でモノを成型するように学校で大衆を生産する

198  非理性を振りかざす醜い大人たち

199  素直に死ぬ群れに調教する手段であったものが今も残っている

200  学校は「準軍隊」なのだから残酷なのが当たり前

201  愚か者が宗教に取り込まれ政治に利用される

202  兵器産業に投資する聖職者たち

203  宗教は普遍の支配ツールである

204  科学と疑似科学の境界を見極められるか

205  危機は砂山のように堆積している

206  迷いを深める答えが本当の答え

207  滅び行く国に生まれた若い君たちが考えなくてはならないこと

208  「大衆」として生きるか、「分衆」として生きるか

209  知識によって世界像を新しく塗り替える


(白馬社)


秋嶋亮(あきしまりょう)響堂雪乃より改名。 
社会学作家。ブログ・マガジン「独りファシズムVer.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/を主宰し、グローバ リゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)などがある。 
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2019年05月24日

幻想哲学小説『創造者』ミュノーナ(蝸牛文庫)

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絹山絹子:訳 黒死館附属幻稚園:発行

カント哲学に溺れたマッド・サイエンティストに、自我の世界を究極まで拡大されると、如何なる結果が現れるか。そんな実験材料にされた男女の物語。技術とオカルティズムの破天荒な融合がここに驚くべき結末を迎える。


ドイツの幻想作家ミュノーナの幻想小説の翻訳。訳者あとがきによれば、ミュノーナは『小遊星物語』のシェーアバルトと知り合いで、カント学者でエルンスト・マルクスの友人らしい。


作者の友人アルフレッド・クービンが挿絵を担当して、図版を再現した翻訳を自主出版された。
蝸牛文庫 B6 132p 900円
只今売切れ絶版。再版を願いましょう。

ミュノーナ [Mynona] 本名ザロモ・フリートレンダー。哲学者で作家。1871年ゴランチュ(ポーゼン)にユダヤ人医師の長男として生まれる。初め医学を専攻していたが、哲学に転じて、1902年ショーペンハウアーの位置づけ並びにカント「純粋理性批判」の認識論的基礎に関する試論で学位取得。哲学の主著に『創造的中立』『フリードリヒ・ニーチェ』。
ベルリンでミュノーナ、匿名(Anonym)のアナグラムの筆名で詩や短篇を発表、ダダイストたるバーダーやハウスマンとともに雑誌『地上1915年』を計画、シュティルナーの個人主義を旗印にした雑誌『唯一者』刊行。1933年パリに亡命、闘病生活の後1946年パリに客死。「カントと道化のジンテーゼ(統合)」を自認するフリートレンダー/ミュノーナはアヴァンギャルド文学の寵児。
posted by koinu at 14:54| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『スフィンクス・ステーキ―ミュノーナ短篇集』ミュノーナ Mynona (未知谷)

ユーモアに満ちた奇想小説やファンタジーを多く収録された異色作家短篇集。


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人の体毛の生え方をオルゴールの筒に移植して、その人間固有の音楽を奏でる『性格音楽−毛のお話』。

スフィンクスを食べてしまうタイトル通りの話『スフィンクス・ステーキ』。

まったく同じ名前、同じ行動をとる40人の集団を描く奇談『謎の一団』。

砂漠に現れた巨大な卵をめぐるナンセンスな出来事『不思議な卵』など、突飛なイメージが印象に残る。

posted by koinu at 10:44| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月22日

偉大な哲学者の名言たち

偉大な人物たらんとする者は、自分自身や自分に属するものをではなく、正しいことをこそ愛すべきなのだ。


驚きは、知ることの始まりである。


無理に強いられた学習というものは、何ひとつ魂のなかに残りはしない。


賢者は、話すべきことがあるから口を開く。愚者は、話さずにはいられないから口を開く。


だれに対しても、不正を不正でもって、悪を悪でもって、埋め合わせしてはいけない。よしんば、その相手にどれほど苦しめられていようとである。 


どんなにひどいことをされても、同じ手段で返したら相手と同じとなってしまう。復讐はさらなる復讐を生むだろう。


「弱いものほど相手を許すことができない。許すことは強さの証だ。」ーマハトマ・ガンジーー

 

「己の欲せざるところ人に施すことなかれ。」ー孔子ー

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2019年05月20日

『珈琲に遊ぶ―おいしいコーヒーを淹れるヒント』川中幸博(未知谷)

コーヒーに関するノウハウを越えたノウハウの一書。 コーヒーも究めると哲学になる。 誠実であることへの憧れ、熱中できることとの出逢い、そしてそれが他人の役に立つかも知れない。果たしてこれは仕合せではないのか―― 勿論ここにはコーヒーに関する実際的知識も溢れている。 ノウハウを越えたノウハウの一書。

http://www.michitani.com/books/ISBN4-89642-023-3.html

内容(「MARC」データベースより)

コーヒーの味を決定づける要素についての説明や、おいしいコーヒーを淹れるために役に立つ実践的な知識を中心に構成。ドリップ注湯の動作や悪い例、浅煎り豆と深煎り豆の抽出方法の違い、フライパンで焙煎する方法などを紹介。 



コーヒーをいれる時にお湯を沸騰させたり沸騰したのを冷ますと不味い。
注ぐ湯の温度は85〜90℃が適当で「完全に沸騰させない」というのが重要。沸騰の前後で湯に含まれる色々な微量成分が変化して、コーヒーの抽出に影響する。これは紅茶や日本茶も同様である。



川中幸博氏は1949年鹿児島生れ。武蔵野美術大学卒業後25歳でコーヒー業界に入り、7年余の研鑽の後独立「どりっぷ」を東京国分寺市に開店、25年間一筋にコーヒーを穿って現在に至る。


自家焙煎珈琲どりっぷ - 〒185-0021 東京都 国分寺市南町3-19-6 2F 

http://drip-coffee.com/

(メニュー例)
ブレンド珈琲 550円〜
ストレート珈琲 600円〜
ネルドリップ珈琲 800円〜
特製ソースの野菜ピザ 1100円
自家製ケーキ 400円〜
自家製果実酒 600円〜
など
「jazzが流れる落ち着いた雰囲気」

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2019年05月16日

『おおきな木』シェル・シルヴァスタイン作 ; 村上春樹:訳(原題:The Giving Tree)

リンゴの木と少年は友達であった。ともに遊び、心を通わせていた。
しかし少年は大人になってゆきお金が必要になる。
木は「私の果実を売りなさい」と言う。少年は果実をすべて持っていった。
しばらくして、大人になったその子は家が必要になる。
木は「私の枝で家を建てなさい」と言う。
その子は枝をすべて持っていった。
また時が経ち、男は「悲しいので遠くへ行きたい」と言う。
木は「私の幹で舟を作りなさい」と言う。
男は幹を持っていった。
木は それで うれしかった・・・
だけど それは ほんとかな。

時が経ち、男は年老いて帰ってきた。そして「疲れたので休む場所がほしい」と言う。
木は「切り株の私に腰をかけなさい」と言う。
男は腰をかけた。
木は幸せだった


訳者あとがきより
あなたはこの木に似ているかもしれません。
あなたはこの少年に似ているかもしれません。
それともひょっとして、両方に似ているかもしれません。
あなたは木であり、また少年であるかもしれません。
あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です。
それをあえて言葉にする必要もありません。
そのために物語というものがあるのです。
物語は人の心を映す自然の鏡のようなものなのです。
(村上春樹)

いつでもそこにある木。成長して変わっていく少年。
それでも木は少年に惜しみない愛を与え続けた・・・
何度でも読み返したい、シルヴァスタインのロングセラー絵本。
posted by koinu at 10:00| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月15日

『ぼくを探しに』シェル・シルヴァスタイン

『ぼくを探しに』シェル・シルヴァスタイン,
Shel Silverstein,翻訳 倉橋 由美子

「何かが足りない それでぼくは楽しくない 足りないかけらを 探しに行く」
ころがりながら、歌いながら、自分に足りないかけらを探す旅。
みみずとお話をしたり、花のにおいをかいだり、楽しみながら、野を越え、海を越えていきます。
かけらを見つけますが、小さすぎたり、大きすぎたり。
ぴったりだと思っても、しっかりはめておかなかったので、落としてしまったり、きつくくわえすぎて壊れてしまったりします。そしてとうとう、ぴったりのかけらに出会います。ところが……。

訳者あとがき「いつまでも自分のmissinng pieceを追いつづける、というよりその何かが『ない』という観念をもちつづけることが生きることのすべてであるような人間は芸術家であったり駄目な人間であったりして、とにかく特殊な人間に限られる」「子供にはこの絵本が示しているような子供の言葉では言いがたい複雑な世界が必要なのではないか。その世界を言い表す言葉を探すこと、これも子供にとってはmissing pieceを探すことに当る。」倉橋由美子

http://konoichi.kodansha.co.jp/1205/05.html



『続・ぼくを探しに』シェル・シルヴァスタイン,
Shel Silverstein,翻訳 倉橋 由美子

きっと僕なしでは生きられない、最高の相棒が現れる。
そう信じて、待って、待って、待ち続けても空振りばかりだった三角のかけら君。
そこに、助けなんていらないというビッグ・オーが現れて
「ぼくと一緒にころがるのは無理だ。
君ひとりならころがっていけるかもしれない。
角はとれて丸くなるものさ。形も変わってゆくよ」

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2019年05月14日

『黄金の果実』 ナタリー・ サロート Sarraute, Nathalie:平岡篤頼 訳

『黄金の果実』 ナタリー・ サロート Sarraute, Nathalie:平岡篤頼 訳
架空の本の題名「黄金の果実」は、夢想の対象になる書物ではない。「黄金の果実」が出版されて、知識人たちで話題になり、後世に残る記念碑的作品だと称賛されるが、そうした空気が醒めて、誰の話題にもならなくなるまでの過程を描いた。
「黄金の果実」の内容について具体的に言及されるのは殆どない。特別な登場人物も存在しないで、会話が漂っているだけである。
「あの本は、思うに、文学のなかに、あるひとつの照応を補足するに至った特権的言語を導入したのであり、その照応があの本の構造そのものとなっている。これは、律動的記号群のきわめて新しく且つ完全な掌握であり、それらの記号群がその緊張によって、あらゆる意味域の内に存在する非本質的なものを超越するんだ。」

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「黄金の果実」ナタリー・サロート(本文より)
 彼の訴えが誰かの耳に届いて欲しい、彼らのうちのただひとりでいいから、やって来て彼の味方になって欲しい……ただひとりでいいから、彼以外の誰かの目が、彼の目に見えているものを見て欲しい……それ以上のことは要求しない。彼が絶対に自信があり、不屈であると感じることができるためには、真理が凱歌をあげることができるためには、ほんのそれだけが必要なのだ、ただひとりの証人が。彼の目は四方を見廻し、恍惚とした顔、一種の麻疹状態に石化した表情の上を滑り過ぎる。
(平岡 篤頼 訳 87-88)

「黄金の果実」の評価が凋落していった会話が挿入する。
「無気味な波の音・・・・・・足がのめりこむ・・・・・・彼が飛び込んだのは、こんな水気の多い土地なのだ。これを彼は、斧を手に、松明を手に、開拓しようなどと思ったのだ・・・・・・(中略)見渡すかぎり目に入るのは、泥まじりの灰色の拡がりばかり、生気のない形象がそこから現れ出ては、目に見えない波のまにまに、気の抜けたように旋転する・・・・・・」

「傑作」といった常套句から「駄作」という常套句へと落ちつくのを、植物が光の方向に茎を伸ばすように、非人称的で方向性があり、散文的な喋りの連続で捉える。濃厚な渋さを醸し出す「黄金の果実」である。


解説:平岡篤頼
 一見したところ、本書「黄金の果実」と最近作『生と死の間』では、文学とは何かという重大問題を前面に据えることによって、サロートは、『プラネタリウム』までの彼女の作品の特徴となったことさら平板陳腐な世界を捨て。いっそう深刻な意味をもった作品を書こうとしたかに見える。すなわち、「黄金の果実」の主人公は、プレイェなる作家の同名の小説であり、『生と死の間』の主人公は、現に小説を書こうとし、しだいに書いて行き、やがて書き終った小説家自身なのである。そして『黄金の果実』は、ブレイェの『黄金の果実』にたいするさまざまな人間の評価、というよりはもっと衝動的な反応の変遷だけから成り、「生と死の間」には、さまざまな人間やみずからの作品にたいする、作家自身のおなじような反応の変遷しか見出せない。当然、前者では文学作品の評価における価値規準の問題、後者では文学的創造の秘密とでもいった根源的な問題か問われ得るはずで。これは文学そのもの、書くという行為そのものへの反省が小説の内容となるという、サロートのみならず、ロブ・グリエらヌーヴォー・ロマンの作家たちにも共通する傾向の必然的帰結と言うことができる。
『黄金の果実』新潮社 (1969年)。 より

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2019年05月05日

ヤマザキマリさんのベスト10冊

海外生活の長い人の読書体験は、貴重な時間となっている。とても実感が伝わる惹かれるガイド内容。

極論を言えば一度でも「自分を辞めて」観ることが、大切な時を与えてくれるだろう。


第1位『百年の孤独』ガブリエル・ガルシア=マルケス著 鼓直訳 新潮社 

蜃気楼の村マコンドの創設から興隆、滅亡まで、めくるめく百年の物語。ラテンアメリカ文学ブームを巻き起こした傑作


第2位『けものたちは故郷をめざす』安部公房著 新潮文庫 

敗戦後、旧満州に残された少年が、正体不明の中国人と日本を目指す。「私が映画監督なら、映像化したい作品1」


第3位『豊饒の海』全4巻(『春の雪』ほか) 三島由紀夫著 新潮文庫 

三島が「究極の小説」を目指して書いたという輪廻転生の物語。第四巻の最終回を書き上げた後、三島は割腹自決した


第4位『眩暈』エリアス・カネッティ著 池内紀訳 法政大学出版局 

ノーベル賞作家の代表作。「人間の内部構造をつぶさに観察した本。表現者には必読書」


第5位『ハドリアヌス帝の回想』マルグリット・ユルスナール著 多田智満子訳 白水社

病に伏した皇帝が自らの治世、旅、愛した人の死を振り返る。類い稀なる人間の内省の物語


第6位『ロビンソンの末裔』開高健著 新潮文庫 

敗戦後、北海道にわたった開拓民の過酷な現実と自然との苦闘を、感傷を交えず綴る


第7位『老人と海』ヘミングウェイ著 福田恆存訳 新潮文庫 

「戦う老人とカジキマグロの間には敬意がある。両方とも、地球に愛されていると感じる」


第8位『族長の秋』ガブリエル・ガルシア=マルケス著 鼓直訳 集英社文庫

「モデルは著者と親しかったカストロ。ダイナミックな人間の在り方が凝縮された作品」


第9位『シリウス』オラフ・ステープルドン著 中村能三訳 ハヤカワ文庫 

人間と同等の知能を得た犬の物語。「他と異なるものを持ってしまった人間の物語でもある」


第10位『異邦人』カミュ著 窪田啓作訳 新潮文庫

「受け止められなさと向き合った作品。世界に不条理が満ちている今、読まれるべき」

『週刊現代』2017年2月25日号より

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50975?page=2



ヤマザキマリ公式サイト

https://www.thermariromari.com/


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2019年05月04日

『けものたちは故郷をめざす』安部公房(新潮文庫)

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敗戦後、旧満州に残された少年が、正体不明の中国人と日本を目指す。『終わりし道の標べに』が故郷という鎖からの脱却を図ったのに対して、意味さえ不明な「故郷」の中に不可解な「自己の存在」を探しに行く物語。


終戦前後の満州はソ連の侵攻に、八路軍と潰走する日本軍の中で、住民達は旗色を鮮明にできず、状況に応じた生しか残されてない。

村に侵攻してきたのはソ連で、主人公・久木久三は将校アレクサンドロフに可愛いがられ、そのまま生き延びる事が妥当ではあった。彼にとっても故郷とは思い出多き村自体であった。しかし「故郷・日本」を目指して脱出する。


 昨日の中に今日があるように、今日の中に明日があり、明日の中に今日があるように、今日の中に昨日が生きている。だが戦争の結果は、そんな約束をばらばらな無関係なものに分解してしまった。久三にとって昨日と明日は、何のつながりもないものになってしまった。

 二時間経てば、此処はもう昨日とも呼べない他人の土地になってしまう。明日については何も知らない。日本について知っているのは、学校の教科書から想像しているだけだ。(富士山、日本三景、海にかこまれた、緑色の微笑の島・・・風は柔らかで、小鳥が鳴き、魚がおよいでいる・・・秋になると、林の中で、木の葉がふり、そのあとに陽がかがやいて、赤い実が色づく・・・勤勉なる大地、勤勉なる人々・・・)



  南行きの列車が出るので、貨車の中で隠れていると、結局アレクサンドロフに見つかり、彼の好意で特別旅行者証明書を発行してもらう。この証明書は見せる場所によって有利にも不利にもなる時勢。列車は南へと向う。



  連れだって旅することになった「高石塔」とは列車の中で出会うが、国籍さえ不明で、旅の課程によって名前も変わる怪しい人物。高が何故に近づいたのか、久三の持つ旅券を奪って利用するためで、もう一つは阿片を運ばせるためだ。

列車事故を演出して、仲間と山分けにするはずの阿片を高は独り占めにする。

しかし久三の旅はこの事故のために過酷なものになってしまう。零下45度の冬の満州を数百キロ、二人は延々歩きつづける。ただひたすら獣たちは、故郷を目ざし信じがたい生命力で歩きつづける。


 雪を掻き集めてきて、火の上にかけた。黒い蒸気が吹き上がり、その中に赤い色ガラスのような火の粉が泳いでみえた。脂臭いベタベタした臭気が立ち込める。冷えこんで皮を剥がれたみたいになる。アレクサンドロフの部屋を逃げだそうとして、ドアを開けたあの瞬間のを思いだす。そのドアの表には希望と書いてあり、しかし裏には絶望と書いてあったのかもしれない。ドアとはいずれそんなものなのかもしれないのだ。前から見ていれば常に希望であり、振向けばそれが絶望にかわる。そうなら振向かずに前だけを見ていよう。アレクサンドロフの部屋のことを高に話したいと思ったが、どんなふうに話したらよいか、よく分からなかった。


雪を飯盒で温めて溶かしているのは、湯をつくり、水分の補給と体を温めるためだ。夜寝ると凍死してしまうので、夜は進軍、寝るのは昼間の2時間ほど。昼間ですらマイナス25度なので、二人は交互に休み、起きている者がたき火の番をしていなければ、やはり凍死してしまう。燃やすものを見つけるのも大変で、風が強いため、ちょっと手を休めると火は消えてしまう。


心配なのは高が大変なこれらの仕事をちゃんとしてくれるかどうか。 寝る番に広げた毛布の端に横になり、毛布と一緒に転がって全身にまきつける。うまく頭は隠れたが、足のほうが出ているようで心細い。高が抑えてくれるのを感じながら、すぐに寝入ってしまった。

殴りつけられるような寒さに、驚いて目をさました。まるで氷の上に寝ているみたいだ、体が地面と同じ温度になり、鼻の頭だけを残して凍死してしまったようである。鼻だけがひどく痛んだ。それから置き去り、という考えが閃いたた。感覚のにぶった体を、死にもの狂いで動かして、やっと毛布から這い出してみると、高は消えた焚火の中に頭をつっこみ、ひろげた膝の間に前のめりになって睡りこんでいた。声をかけても揺すっても、気づかない。力一杯殴りつけると、やっと目を覚ましたが、見えるほうの目は真赤に腫れ上がり、歯をガチガチ鳴らして様子が変である。何か言いかけて、痙攣して、二回ほど黄色いものを吐いた。それでも口を右につり上げて、顔の半分で凍えた笑いを浮かべてみせた。久三はその笑いに好意を感じた。


  高は何故か人里を避けて荒野を歩く。食料もなく厳寒の地だというのに、2週間もあればつくさ、と嘘ぶいている。

高の正体が分からないので、なぜ村のある方向を目指さないか分からないが、何れにせよ二人は道に迷ってしまっている。もはや離ればなれになっては、寝る番に火を見ていてくれる人がいない。衰弱しきって役割を勤めることもままならない。


ある日、高の身に変化が起こる。

久三は、あたりの変化に驚き、まだぼんやりしている目で、高が崖から足をふみ外したのだと思った。高は崖によりかかったまま、いびきをかいていた。まだ死んではいないが、死ぬなと思った。沼の向う岸は、ゆるやかな斜面で、低い灌木の茂みがつづいている。二、三度往復して、枝を運んだ。高を寝かせて、そのそばに火をおこし、靴を脱がせて、足を暖めてやった。氷をかいて湯を沸す。飲ませてやろうとして、抱え起すと突然笑いだし、沼のほうを指さして意味のない叫ぶをする。

「アンダラ、ツォアン、チィ、ルゥルゥルゥ・・・」

 そのまま睡って、顔全体が青黒くむくんだ。見えるほうの目に、大つぶの涙がうかび、唇は白く乾いて凍傷の黒い輪ができていた。ひたいにさわってみると、びっくりするほど熱い。まちがいなく死ぬなと思い、恐ろしくなってしまった。


この後数日間その場所にとどまり、高は死ななかった。気がつくと発狂していて、大事な食料を台無しにして、強靱な生命力でまともに戻る。


荒野の行進はつづき、飢えと疲労から、歩きながらでも夢を見てしまうぎりぎりの二人、足を止めた途端に眠りに襲われ、そこを犬に狙われた。目覚めた二人と犬との格闘。犬も病気にかかっているらしく、二人が完全に弱るのを待って食いつくつもりで、すぐには飛びかかって来ない。二人は何とか犬を食おうと、残った体力を振り絞って追いかけるが、スピードでは所詮犬にはかなわない。やがて犬の方が諦めて、走り去った。 


徒労のために費やした体力を嘆く人間。二人の人間は、言葉を交せると言うだけで、荒野の中で犬とは全くの同格。犬には後悔というものがない。生きる希望の元に守り合うとき、二人は犬以上の生き物になれるが、あの時ピストルの弾を久三が無駄にしなかったらなど、後悔の元に罵り合うとき、厳寒の荒野の中で、二人は狂犬と変わらない。

生きるにはあまりにも体力がなさ過ぎて、凍える二人は抱き合って眠る。


馬車が通りかかると、乗せてもらおうと久三は有り金全部で交渉しようとすると、「三百円だ」と高は打ち消す。命のスイッチが切れてない限り、どんなに弱いときも強かであった。



 陽が沈んでから、馬車が止まった。年寄りが久三の寝息がしなくなったのを案じて、若者に注意したからである。久三の口もとに耳をよせて、まだ完全には息絶えていないのを確かめてから、若者は道ばたに火をおこして湯をわかし、二人を外に担ぎだした。揺すっても殴っても、目を覚まさない。強い酒をふくませると、やっと意識をとりもどした。冷たく凍った煎餅を火にあぶり、味噌をぬって食べさせる。ニンニクを齧らせ、熱い湯に酒をたらしてすすらせる。二人は半分眠りながら、貪り食った。いっぺんなど、久三が、間違えて自分の指を咬んでしまったほどである。


  目を覚ますと、馬車ではなく、屋根すらなくなっている廃屋の中だった。

貴重な毛布や高の鞄がなくなっている。

身ぐるみ全部剥がされてないところをみると、馬車は何か性急な事情に出会ったのではないかと高が推察する。


その向こうに土塀が見え、高が何か怪しげな交渉をしに、一人で町へ向かう。残った久三は、その廃屋で家族らしい5つのミイラを見つける。


 すぐ頭のところに、丁度陽射しに半ばかかって、石で彫り込まれた文字が読めた。



 ムネン

 ミチ ナカバニシテ

 ココニ

 ワレラ ゼンイン

 ネツビョウニテ

 タオル

 二十一ネン ナツ

 ミズウラ タケシ

 ホカ 四メイ



 久三は始め嫌な気がした、休息の邪魔をされたように思ったのだ。それから、相手が同じ日本人であるのに、そんなふうに考えるのは少し気の毒なような気もした。誰だろう?どこからやってきたのだろう。子供が混じってているところを見ると、家族かもしれないな、それとも会社かなにかの同僚だったのかな?・・・あの小さなミイラは、きっとあの女のミイラの子供にちがいない、どっちが先に死んだのだろう?・・・すると、急に、なんだかこわくなってくる・・・もしかするとこの連中も、おれたちと同じようにあの荒野を歩いてやってきて・・・そして、あの苦しみのあとで、まだ死ななければならないなんて、はたして信じることができただろうか・・・いや、そんな不公平は、絶対に信じることができなかったにちがいないのだ・・・久三はぞっとして後ずさりする。ミイラたちが彼をうらんでいるような気がしてきたのだ。



高は村で、ある将校に車の便に同乗させてもらえるよう手配してきたが、そのために久三は全財産を将校にわたすよう高にせまられてしまう。

二人は瀋陽にたどりつく。そこで又久三と高は別行動になるのだが、一切は高の計略で、高は久三から預けていた阿片と身分証明書を奪い、久三の名を語って日本行きの船に乗る。

ところが、久三の方でも、日本の将校に出会い、同じ船に乗ることに。


久三を名乗って船の客室にいる高は、本物の久三に引き合わされて嘘がばれ、囚われの身となってしまう。チョッキに隠していた阿片は没収され、船の狭い空間に足首を手錠で繋がれ、衰弱している。その高を久三は発見する。したたかな高もついに狂ってしまった。


「実はな、相談したいと思っとったんだがな・・・いいか、重大な秘密だぞ・・・おれはな、この船を買いとったんだぞ・・・しかし、実をいうとな、君も知っとるとおり、おれは重大な使命をもっておる・・・それで、こうして、身をかくしておらんとならんのでな・・・いや、わざわざ尋ねてきてくれて、ありがとう」

 薄気味わるくなってきた。思わず身を引こうとして、高の強い腕に抱きとめられた。単調に、うたうように高がつづける。「まて・・・その話というのはだな・・・誰も聞いておらんだろうな・・・実は、私は、満州共和国亡命中央政権樹立の任務をおびてきておる。・・・しかし、どうやら情勢が緊迫しておるんでな、ここでとりあえず、大統領の就任式をやろうと思っとるんだがな・・・むろん極秘だ・・・そこで、君にも、参列してもらいたいと思っとるんだが・・・分るかな・・・私は任務をおびているんでな・・・しかし、こいつは極秘でな、日本人だけに教えるんだが、私は本当は日本人なんだ。久木久三と言いましてな」


久三は焦る。高から阿片の分け前をもらうはずであったのだ。船長の部屋をひっくり返し、阿片を探していた所を捕まってしまい、暴れ回った挙げ句、ついには高と一つの手錠で結び合わされ、外から錠をおろされる。


船は日本を眼前として、沖合で何やら怪しい取引をすすめ、決して上陸することもない。日本はそこに見えているにも関わらずず、高と一緒に繋がれなけれればならないのか。


・・・ちくしょう、まるで同じところをぐるぐるまわっているみたいだな・・・いくら行っても、一歩も荒野から抜けだせない・・・もしかすると、日本なんて、どこにもないのかもしれないな・・・おれが歩くと、荒野も一緒に歩きだす。日本はどんどん逃げていってしまうのだ・・・

「アー、アー、アー。」と高が馬鹿のようにだらしなく笑いだした・・・そうだな、もしかすると、おれははじめから道をまちがえていたのかもしれないな・・・「戦争だぞ、アー、アー、戦争だぞ、アー。私は主席大統領なんだぞ、アー。」・・・きっとおれは、出発したときから、反対にむかって歩きだしてしまっていたのだろう・・・たぶんそのせいで、まだこんなふうにして、荒野の中を迷いつづけていなければならないのだ・・・

 だが突然、彼はこぶしを振りかざし、そのベンガラ色の鉄肌を打ちはじめる・・・けものになって、吠えながら、手の皮がむけて血がにじむのにもかまわずに、根かぎり打ちすえる。




 (大日本雄弁会講談社1957年 ) 

満洲を舞台にした唯一の長篇小説『けものたちは故郷をめざす』も体験とはかけ離れたものであり、のちに安部はエッセイ「一寸先は闇」に私小説を書かない理由を記している。

映画『けものたちは故郷をめざす』(脚色:恩地日出夫。恩地氏のシナリオは、『映画評論』1965年8月号掲載。)


『けものたちは故郷をめざす』安部公房(新潮文庫)

第一章 錆びた線路
第二章 旗
第三章 罠
第四章 扉
解説 磯田光一

https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/112103/


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