2021年12月04日

『牧水の恋』俵万智(文藝春秋)

『牧水の恋』俵万智

旅と酒の歌人・若山牧水は、恋の歌人でもあった――。


白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

幾山河越えさりゆかば寂しさのはてなむ国ぞけふも旅ゆく


これらの名歌が生まれた背景には、小枝子という女性との痛切な恋があった。

若き日をささげた恋人の持つ秘密とは? 

恋の絶頂から疑惑、別れまでの秀歌を、高校時代から牧水の短歌に共感し、

影響を受けてきた俵万智が丁寧に読みこみ、徹底した調査と鋭い読みで、二人の恋をよみがえらせる。スリリングな評伝文学。


29回宮日出版文化賞特別大賞受賞作。


『ぼく、牧水!』の共著がある俳優・堺雅人氏も絶賛。


〈俵さんは、ご自身の体験さえ曝けだしながら牧水の恋に迫る。自分はこんな状況のときこんな歌をうたったから、牧水もきっとそうだろう、という具合に。その考察は容赦ないけれど、小動物を解剖する子どもみたいに、いきいきしている。よみおわったとき「牧水の恋」そのものが、ひとつの生き物のように感じられた。〉                      

けれども、よみすすむにつれ、「どうしてこの人はこんなに必死に恋愛をかんがえるんだろう」という疑問がわいてきた。この人、とはもちろん著者の俵さんだ。俵さんは、ご自身の体験さえ曝けだしながら牧水の恋に迫る。自分はこんな状況のときこんな歌をうたったから、牧水もきっとそうだろう、という具合に。その考察は容赦ないけれど、小動物を解剖する子どもみたいに、いきいきしている。よみおわったとき「牧水の恋」そのものが、ひとつの生き物のように感じられた。

 もしかすると牧水も、自分の恋を、別個の生命体のように思っていたのかもしれない。牧水の短歌をよんでいると、このひとは自分の心を花や木や風や海みたいに眺めているんじゃないかと思うときがあるからだ。そうなると追う俵さんも追われる牧水も、命の不思議に引き込まれた似たもの同士ということになる。そもそも歌人とは、そういう人たちなのかもしれない。

(推薦コメントより一部を抜粋)


「解説」は牧水研究の第一人者・伊藤一彦氏(堺氏の高校時代の恩師で、『ぼく、牧水!』の共著者)。


【目次】

幾山河越え去り行かば

白鳥は哀しからずや

いざ唇を君

牧水と私

疑ひの蛇

わが妻はつひにうるはし

わかれては十日ありえず

私はあなたに恋したい

酒飲まば女いだかば

眼のなき魚〔ほか〕


[文藝春秋(2018/08発売)]


俵万智[タワラマチ] 

1962年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒。87年刊行の歌集『サラダ記念日』で翌年、第32回現代歌人協会賞を受賞。以降、幅広い執筆活動を行い、96年より読売歌壇の選者を務める。2004年、『愛する源氏物語』で第14回紫式部文学賞、06年、『プーさんの鼻』で第11回若山牧水賞を受賞。

posted by koinu at 10:00| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする