2021年11月14日

『アリになった数学者』森田真生『僕たちはどう生きるか』

 数や図形を便利につかう方法を教えてくれるのが「算数」。「数学」は、そもそも、その数や図形とはなにかと考える学問です。そんな「数学」の世界を探求する数学者は、ある日気がつくと、アリになっていました。数学者は、アリたちと数学について語りあいたいと願います……。さて、アリたちに人間の数学、「数」は理解されるのでしょうか?この物語は、「1とはなにか」という数学的な問いを着想に描かれました。数学の世界では、「1とはなにか」を定義しようとたくさんの数学者たちが挑戦をつづけてきたそうです。みなさんなら、「1とはなにか?」ときかれたらどうこたえますか? 1個のりんごや1本のペンを見せて、「これが1だ」という手もあるかもしれませんが、りんごとペンは、ちがうものです。そのどちらもが「1」だというのはどうしてなのでしょうかわたしたちが漠然と疑う余地のないものだと思っている「1」というものは、じつは、色んな見え方、とらえ方ができる可能性に満ちたものなのかもしれないのです。数を通してこの世界をどう理解するか。アリたちが導くあたらしい数の世界へといざないます。

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『アリになった数学者』ハードカバー版刊行にあたり、 


「この本を読んで、わたしは安心しました。 

算数や算術の姿をしてわたしたちをなやませたのは、 やはり数学の本意ではなかったことがわかったからです。 

発見のよろこびがいたるところにちりばめられた思考の大建築、 それが本当の数学の姿です。そのエッセンスを、ぜひ子どもたちに 届けてあげてください。この本は、数学の核心にしっかりと触れた、 とてもうつくしい"絵本"なのです。」 

安野光雅 


森田真生 1985年、東京に生まれる。2歳から10歳までアメリカのシカゴで育つ。小さい頃から数が好きで、怪我をしても、たし算の問題を出されるとすぐ泣きやんだ。中学校、高校と、バスケットボールに夢中になった。大学では文系の学部に入学し、さらにロボット工学を学ぶ。そのなかで、友人や先輩から数学の面白さを教えられ、幼いころに抱いた数への関心がよみがえる。数学科への転向を決意し、東京大学理学部数学科で学び、卒業。現在は京都に拠点を構え、在野で数学の世界を探究する。全国各地で「数学の演奏会」を開催中。数学を、音楽のようにたくさんの人の心に届くように「演奏」したいと願っている。著書は『数学する身体』(新潮社)。同作で第15回小林秀雄賞受賞。子どもにむけた出版は本作がはじめて。 


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『僕たちはどう生きるか』森田真生

未来はすでに僕を侵食し始めている。 


未曾有のパンデミック、加速する気候変動……人類の自己破壊的な営みとともに、「日常」は崩壊しつつある。それでも流れを止めない「生命」とその多様な賑わいを、いかに受け容れ、次世代へと繋ごうか。 


史上最年少で小林秀雄賞を受賞した若き知性が2020年春からの「混沌」と「生まれ変わり」を記録した、四季折々のドキュメント・エッセイ。

【目次】 

はじめに 

 / STILL 

 / Unheimlich 

 / Pleasure 

 / Alive 

再び、春 /Play 

おわりに 


 病むこと、死ぬこと、老いること――未来が来ることに目を背けずに、目を開いて生きていくこと。対症療法ではなく根本治療へと向かっていくこと。『僕たちはどう生きるか』は、このために、二〇二〇年の春から試行錯誤を始めた、僕自身の混沌と生まれ変わりの記録だ。

 僕たちはどう生きるか。僕たちはどう生きていたのか。いまよりも地球が温暖化し、海面が上昇し、自然災害が激甚化している未来において、それでも潑剌と生きる子たちの姿を思い描こうとしながら、この本を書いた。


《草木国土悉皆成仏

posted by koinu at 09:00| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする