2021年10月17日

あさってから手紙が来るよ

詩人・多田智満子さんの詩である。


あさってから手紙が来るよ

あしたのことが書いてある

あしたってつまりきのうのこと

あしたのわたしはごきげんですか

今日を折り目にして

あしたときのうが向きあっている

みんな読みちがえてしまうのさ

あしたをきのうと

きのうをあしたと

(多田智満子「夏の手紙」より)


これは人にして人にあらず 

女にして女にあらず 

この世に在りてあの世に在り 

顕界幽界を往来する 

山姥とはわが事なり

(多田智満子「乙女山姥」より)


 宇宙は一瞬のできごとだ

 すべての夢がそうであるように

 神の夢も短い

 この一瞬には無限が薔薇の蜜のように潜む 

 復元された日常のなかでも 

 あらゆる断片は繧繝彩色がほどこされてある 

 夢はいくたびもの破裂に耐える

 私の骨は薔薇で飾られるだろう 


2003123日に逝去した多田智満子の遺した詩から高橋睦郎が構成編集した。遺詩集全23篇。

かろやかな遺言『封を切ると』。

病を得、間近に迫った死に際して身辺整理をしていた時期の作品なのに不思議なほど機知に富んで明るい。

付録に作者の告別式司式次第、遺句集、年譜、献辞(池澤夏樹、小池昌代、高橋睦郎)を収められた。 


「すべてが終ったとき 

虚空に梅が薫ったのだ」

posted by koinu at 11:05| 東京 ☔| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする