
「歩む者のない道」
黄色い森の中で道が二つに分かれていた
残念だが両方の道を進むわけにはいかない
一人で旅する私は、長い間そこにたたずみ
一方の道の先を見透かそうとした
その先は折れ、草むらの中に消えている
それから、もう一方の道を歩み始めた
一見同じようだがこちらの方がよさそうだ
なぜならこちらは草ぼうぼうで
誰かが通るのを待っていたから
本当は二つとも同じようなものだったけれど
あの朝、二つの道は同じように見えた
枯葉の上には足跡一つ見えなかった
あっちの道はまたの機会にしよう!
でも、道が先へ先へとつながることを知る私は
再び同じ道に戻ってくることはないだろうと思っていた
いま深いためいきとともに私はこれを告げる
ずっとずっと昔 森の中で道が二つに分かれていた。
そして私は… そして私は人があまり通っていない道を選んだ
そのためにどんなに大きな違いができたことか
(川本皎嗣訳)
自然や人生を描いた詩集に、これからの読書季節へどっぷりと浸りたい方、お勧めの岩波文庫です。
「Dust of Snow」『フロスト詩集』より
The way a crow
Shook down on me
The dust of snow
From a hemlock tree
Has given my heart
A change of mood
And saved some part
Of a day I had rued.
<和訳>
「雪の粉」
一羽のカラスが
ツゲの樹から
僕に雪の粉を
ゆりおとす
僕はその様子に
気分がかわり
悼みの一日の
幾分を取り戻す。
(川本皎嗣訳)
●「フロスト詩集」川本皎嗣氏解説:「俳句のように軽妙な味わいを持ち、ワンセンテンスからなるこの短詩は、ほぼ単純な単音節語でできている。
イマジズムの影響があるかもしれない。カラスを無理に擬人化する必要はない。共に生きる自然の一部に過ぎないのだ」
〈フロスト朗読詩〉
○ 「森」は死の世界だろうか。
村の中に住んでる私は、死に出会う前に死の世界を眺めている。
しかし日常の世界に住む馬には、死の観念世界を見つめるのが理解できない。「私の小柄な馬は変だと思ったに違いない」のだ。○