2021年09月23日

「フロスト詩集」川本皎嗣(岩波文庫)

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評判どおりの深い洞察と優れた編集・翻訳による、貴重な存在として企画されたフロストの詩集文庫です。 


「歩む者のない道」

黄色い森の中で道が二つに分かれていた

残念だが両方の道を進むわけにはいかない

一人で旅する私は、長い間そこにたたずみ

一方の道の先を見透かそうとした

その先は折れ、草むらの中に消えている


それから、もう一方の道を歩み始めた

一見同じようだがこちらの方がよさそうだ

なぜならこちらは草ぼうぼうで

誰かが通るのを待っていたから

本当は二つとも同じようなものだったけれど

あの朝、二つの道は同じように見えた

枯葉の上には足跡一つ見えなかった

あっちの道はまたの機会にしよう!

でも、道が先へ先へとつながることを知る私は

再び同じ道に戻ってくることはないだろうと思っていた

いま深いためいきとともに私はこれを告げる

ずっとずっと昔 森の中で道が二つに分かれていた。

そして私は そして私は人があまり通っていない道を選んだ

そのためにどんなに大きな違いができたことか

(川本皎嗣訳)


自然や人生を描いた詩集に、これからの読書季節へどっぷりと浸りたい方、お勧めの岩波文庫です。


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Dust of Snow」『フロスト詩集』より

The way a crow

Shook down on me

The dust of snow

From a hemlock tree

Has given my heart

A change of mood

And saved some part

Of a day I had rued. 


<和訳>

「雪の粉」

一羽のカラスが

ツゲの樹から

僕に雪の粉を

ゆりおとす

僕はその様子に

気分がかわり

悼みの一日の

幾分を取り戻す。

(川本皎嗣訳)


「フロスト詩集」川本皎嗣氏解説:「俳句のように軽妙な味わいを持ち、ワンセンテンスからなるこの短詩は、ほぼ単純な単音節語でできている。

イマジズムの影響があるかもしれない。カラスを無理に擬人化する必要はない。共に生きる自然の一部に過ぎないのだ」


〈フロスト朗読詩〉

https://youtu.be/Ig3zsQUhXaw


○ 「森」は死の世界だろうか。

村の中に住んでる私は、死に出会う前に死の世界を眺めている。

しかし日常の世界に住む馬には、死の観念世界を見つめるのが理解できない。「私の小柄な馬は変だと思ったに違いない」のだ。

posted by koinu at 10:00| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする