2021年07月25日

目の国と呼ばれる地では

「目の国で」高橋睦郎


そこ 目の国と呼ばれる地では

人人は私たちが見るようには見ない

彼等の目の中には 手があって

指頭で 遠い木や近い岩にさわる

ときには 五つの指を開いた手を伸ばして

太陽を負うた鷲の飛翔をがっしと掴みとる


    ※


そこ 目の国と呼ばれる地では

鉛筆による遠近法は存在しない

遠くに動く木と近くに座る岩とは

色彩の濃淡で段階づけられるわけではない

遠い木は近い岩と同じ線上に並んでいる

視線の舌は同時に二つを舐めねばならぬ

〈『続続・高橋睦郎詩集』(現代詩文庫)より〉

posted by koinu at 15:00| 東京 ☀| 観測 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする