2021年06月30日

『K』三木卓(講談社文芸文庫)

詩人として出発し、小説、児童文学など幅広く活躍してきた著者が、詩への志を同じくする配偶者との出会いから末期癌による辛い闘病生活の末の最期までを愛惜とともに描いた私小説。貧しい暮らしをものともしない生き方、自我のぶつかり合いによって築き上げられた特異な夫婦生活、常軌を逸した子供との結びつき、詩と学問への執着、どこか平静な病気との向き合い方などを通して浮かび上がる「K」の孤高の魂が感動を呼ぶ長篇小説。


Kのことを書く。Kとは、ぼくの死んだ配偶者で、本名を桂子といった。」詩への志を抱く仲間として出会い、結婚したKとの暮らしは苦労の連続ながら子供にも恵まれ落ち着くかに見えたが、「ぼく」が小説を書くようになると家庭から遠ざけられる。幼い娘と繭のなかのように暮らし、詩作や学問に傾注していった彼女の孤高の魂を、最期まで寄り添った同志として丁寧に描き出した純真無垢の私小説。逝きし妻への切なる鎮魂の書。


三木卓 1935513~。小説家。東京生まれ。幼少より何度も病魔に襲われる。1959年、早稲田大学卒業。57年ころより、詩を書き始める。67年『東京午前三時』でH氏賞受賞。73年「鶸」で第69回芥川賞受賞。84年『ぽたぽた』で野間児童文芸賞受賞。86年『馭者の秋』で平林たい子文学賞受賞。89年『小噺集』で芸術選奨文部大臣賞受賞。97年『路地』で谷崎潤一郎賞受賞。99年紫綬褒章受章。2000年『裸足と貝殻』で読売文学賞受賞。『北原白秋』で05年に藤村記念歴程賞、蓮如賞、06年に毎日芸術賞受賞。07年日本芸術院・恩賜賞を受賞し、日本芸術院会員となる。11年春の叙勲で旭日中綬章受賞。13年『K』で伊藤整文学賞受賞。

posted by koinu at 10:00| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする