2021年06月15日

「音はしぐれか(種田山頭火)」

「おとはしぐれか」


この俳句の作者は山頭火。山頭火に時雨を題材にした俳句が多い。 


 しぐるるや死なないでいる

 しぐるるやしぐるる山へ歩み入る

 うしろすがたのしぐれてゆくか

 などある。が、この句は、

 「おとはしぐれか」

 という七字である。


「わずか七字という短律であるが、これには他の一字も加えることは出来ない。この句は昭和七年十月二十一日、山口県小郡の其中庵での作である。日記(山頭火の)を見ると、

《曇、それから晴、いよいよ秋が深い。朝、厠にしゃがんでいると、ぽとぽと、ぽとぽとという音、しぐれだ、草屋根をしたたるしぐれの音だ。

  おとはしぐれか 

という一句が突発した。》


私もしばしば庵を訪ねてその厠にしゃがんだことがあるが窓のない暗いところ。秋深む天地のささやきが、孤独な山頭火の体を竪に通って地に落ちる、そうしたしぐれではあるまいか。」

(『別冊新評』山頭火の世界「俳僧山頭火の句」大山澄太)より


山頭火は確立した型を意識してたか、季語もリズムも無く、「心のおもむくまま、魂の底に眠る静かなる声」を俳句に込める。 


まっすぐな道でさみしい

笠へぽっとり椿だった

なんとなく歩いて墓と墓の間


曼珠沙華咲いてここがわたしの寝るところ

月がのぼって何をまつまでもなく

posted by koinu at 09:50| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする