2021年06月06日

「五輪中止、それしか道はない」作家 赤川次郎(東京都・73才)

 想像してみよう。恋人たちが身を寄せ合って夜の川辺を歩く姿を。孫の誕生日に集まった3世代の家族が互いに抱き合う光景を。今、私たちが求めているのは、そんな「日常」が戻った世界であるはずだ。 


 しかし今、日本はそれに逆行する「とんでもない国」になろうとしている。新型コロナの感染拡大が続く緊急事態宣言下で五輪パラリンピックを開催? 他の国のことなら「何てひどい国だ!」と呆(あき)れるだろう。 


 国の指導者の第一の任務は「人々の命を守ること」。いまだウイルスの正体が分からないのに、9万人もの人間が出入国するとしたら、どうやって感染拡大を防ぐことができるのだろうか。むしろ、ここを起点にさらに新たなパンデミックが世界を襲うかもしれない。一日も早く、五輪中止を決断するしか道はない。賠償金を払わねばならないのなら払えばいい。経済は取り戻せても、人の命は取り戻せないのだ。 


 医療も報道も、それぞれ良識と良心をかけて、五輪開催に反対の声を上げるときである。利権に目のくらんだ人々には、これも「馬の耳に念仏」だろうか。そう言っては馬に失礼かもしれないが。

【朝日新聞】202166日(日曜日)朝刊「声」Voiceより

https://www.asahi.com/articles/DA3S14930065.html

posted by koinu at 20:01| 東京 ☀| 報道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする