2021年01月22日

『コスモポリタンズ』サマセット・モーム(ちくま文庫)

舞台はヨーロッパ、アジアの両大陸から南島、横浜、神戸まで―。故国を去って異郷に住む国際人の日常にひそむ事件のかずかず。

コスモポリタン誌に1924〜29年に連載された珠玉の小品30篇。


【収録作品】

素材

弁護士メイヒュー

隠者ハリー

幸福者

異国の土

ランチ

漁夫の子サルヴァトーレ

生家

物識先生

家探し

困ったときの友

ある紳士の自画像

落ち行くさき

審判の座

蟻とキリギリス

フランス人ジョウ

傷痕のある男

詩人

ルイーズ

店じまい

約束

真珠の首飾り

物もらい

ストレート・フラッシュ

会堂守り

洗濯盥

社交意識

四人のオランダ人

(コスモポリタンズ モーム・コレクション原題. Cosmopolitans. 発表年. 1935


「弁護士メイヒュー」

アメリカの弁護士として成功をおさめていた彼は、ある日友人との酒の席で、イタリアのナポリ湾を見おろすカプリ島に素晴らしい別荘が売りに出ていると話題になった。

島について知識もないまま、衝動的にそこを買ってしまった。酔いが覚めても彼は後悔せず、仕事からきっぱり足を洗うと初めての海外に出てそこに移り住んでしまった。

財産をためこんでいた彼は「人生にはもっとほかにやりたいことがあるはずだ」と考えて、まだ見ぬその島にやって来たのだった。

島に来てしばらくリゾート生活を楽しんだ。島には遺跡が数多く残って、その風景を眺めて暮らしているうち、古代ローマの歴史書を書こうと思い立った。かつての仕事柄から世界中より、膨大な資料を蒐集して精力的かつ綿密に調べた。努力家だった彼は作業に打ち込んで、毎日起きると翌明け方まで、今まで眺めていた明媚な風光には目もくれず、10数年間、刻苦勉励し続ける。いつしか膨大なメモをとりまとめ、準備がすべて整い、著述に取りかかろうとしたとき、彼はそれまでの無理がたたって、あっけなく死んでしまった。蓄積された膨大な知識は永遠に失われてしまった。(FIN


フランス映画になりそうなイタリア地中海の景色と展開が思い浮かびあがる。想像する力と文庫の放つ燃料がめらめらとなる短編集。アメリカ雑誌に連載されていたショートショートだと、作者自身が事情を前書に書いて当時を想うと面白い。


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サマセット・モーム(1874‐1965

イギリスの小説家・劇作家。フランスのパリに生れるが、幼くして両親を亡くし、南イングランドの叔父のもとで育つ。ドイツのハイデルベルク大学、ロンドンの聖トマス病院付属医学校で学ぶ。医療助手の経験を描いた小説『ランベスのライザ』(1897)が注目され、作家生活に入る。1919年に発表した『月と六ペンス』は空前のベストセラーとなった代表作となる。

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posted by koinu at 21:00| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする