アイヌ民族を題材にした釧路市の阿寒湖アイヌコタンなどで撮影された「AINU MOSIR」が、メキシコの映画祭「グアナフアト国際映画祭」の国際長編作品部門で最優秀作品賞を受賞した。
映画『AINU MOSIR』公式サイト
監督・脚本をつとめた福永壮志
「“イオマンテ”を描くかどうかは凄く悩みました。色んな方々の話を聞いて、デボさんをはじめまだ復活させたいと思っている方がいるし、反対の人もいる。それぞれ色々な理由があるわけです。勿論、繊細なことではあるのですが、“イオマンテ”はアイヌの文化や精神世界の集大成であり、そこまで色んなものを含んだものは他にはなかったので、映画の中で描くことによって、それを通して現代を生きるアイヌの皆さんの様々な考え方や想いを描くことが出来ると思いました。会議のシーンで賛成派は本当に賛成している方、反対派は本当に反対派の方です」
14歳のカントは、アイヌ民芸品店を営む母親のエミと北海道阿寒湖畔のアイヌコタンで暮らしていた。アイヌ文化に触れながら育ってきたカントだったが、一年前の父親の死をきっかけにアイヌの活動に参加しなくなる。アイヌ文化と距離を置く一方で、カントは友人達と始めたバンドの練習に没頭し、翌年の中学校卒業後は高校進学のため故郷を離れることを予定していた。亡き父親の友人で、アイヌコタンの中心的存在であるデボは、カントを自給自足のキャンプに連れて行き、自然の中で育まれたアイヌの精神や文化について教えこもうとする。少しずつ理解を示すカントを見て喜ぶデボは、密かに育てていた子熊の世話をカントに任せる。世話をするうちに子熊への愛着を深めていくカント。しかしデボは長年行われていない熊送りの儀式、イオマンテの復活のために子熊を飼育していた。