2020年09月22日

「りんご」久坂葉子

「りんご」久坂葉子


りんごをかじりながらさむいみちをあるいた。

ゆうひがまっかになってしずむ。

きょうもいちにち、

のぞみももたず、ちからもわかず、

ただ、さみしさでいっぱいになって、

なにがそんなにさみしいのかわからぬままに。

まちかどにひがついた。

あたらしいとしがもうやってくるというのに。

あすさえもおそろしい。

-さみしさはますだろう-

-くるしさにたえることができよう-

わたしのこころに、

「あすこそは」というかんじょうがわいてくれたら、

-わたしはうれしいが-

りんごのたねはくろくひかっていた。

はあとのついたしんを、

おもいっきりとおくへなげた。


久坂葉子(くさかようこ)19311952 神戸市生まれ。本名川崎澄子。山手高女を経て相愛女専中退。16歳から詩を書き始め「文章倶楽部」に投稿。島尾敏雄の紹介で富士正晴の雑誌「ヴァイキング」の同人となり、詩と小説を発表。八木岡英治に認められ「作品」(1950)に『ドミノのお告げ』を発表。19歳で第23回芥川賞の候補。その後シナリオライターとして活躍。1952年、恋愛感情のもつれから九州を放浪 2度目の自殺を計るが未遂に終わる。この年 4篇の小説を発表、未発表作品を残して六甲駅にて自殺。21歳であった。

posted by koinu at 10:00| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする