
『ファウスト博士』(Doktor Faustus)トーマス・マン1947年小説。
架空の音楽家アドリアン・レーヴァーキューン(Adrian Leverkühn)のをファウスト伝説を、元にして描いたマン晩年の長編作品。
「一友人によって語られるドイツの作曲家アドリアン・レーヴァーキューンの生涯」という副題のとおり、古典語学者ゼレヌス・ツァイトブローム(Serenus Zeitblom)が年下の友人であるレーヴァーキューンの生涯を語り記す。作者が1901年に短編の素材として着想して、1943年になって長編に書き直した。
ドイツが大戦末期がツァイトブロームの語りに重ねて、創作に必要な霊感を得るために意図的に梅毒にかかって、悪魔に魂を売り破滅に向かうレーヴァーキューン。ニーチェとシェーンベルクをモデルにして、滅びゆくドイツを象徴する人物で、物語全体はドイツへの批判であり作者の自己批判ともなっている。
『ファウストゥス博士』の成立には、レオンハルト・フランクからの問いかけに対して、主人公には特定のモデルはないと作者が答えて、ハノー・ブッデンブロークを除いて、これほど愛したキャラクターは他にいないと述べたという。