2020年05月30日

空のかたまりを 砕く

「転身」 蜂飼耳


守ろう としてさしのべたつばさの

目にしみる そらとの界

西のひかりに背中を衝かれ そのはずみで

たら たり たる たれ たれ たれ

なみだに にたものを 腋のしたから

したたる アマ ミズ

したたる ユキ ドケ ミズ


いつまでも変わることのない

しかし ゆっくりと うつりつつある

おびただしい相似形がそらを

空のかたまりを 砕く

まばたきをせずにみている

あのなかに

あたしと


おもいの矛先をひたと揃え

よびかわしたものがいて、

でもな

いまや

見分けることが できない

みらいにつなぐためには記憶を

洗い流さなければならなかったひとよ

腋のした そこへ きつく抱いた

はじめてのたまごの ふたつはかえり

残るひとつは だめで つぎに


わたしはその中にいて、

ひいていく体温を

きょうだいたちのあかいあかい心拍に

捧げ


これで なん度目か

世界から こぼれ落ちるるる

「むすばれること」それさえ知らず

流れるあなたあたしあたしたち

すべての

守ろう としてさしのべられたつばさの

尖端に あつまり

無数の目が

みている

つぎの

巣の中


『蜂飼耳 詩集』(思潮社)より

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posted by koinu at 06:04| 東京 ☀| 観測 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする