2020年05月13日

世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。

 この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。

 世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。

 きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。


 でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。

 大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。

 たとえば、星を見るとかして。


 二つの世界の呼応と調和がうまくいっていると、毎日を過ごすのはずっと楽になる。心の力をよけいなことに使う必要がなくなる。

 水の味がわかり、人を怒らせることが少なくなる。

 星を正しく見るのはむずかしいが、上手になればそれだけの効果があがるだろう。

 星ではなく、せせらぎや、セミ時雨でもいいのだけれども。


「スティル・ライフ」池澤夏樹(中公文庫・他)冒頭より


ジブリ機関誌『熱風』今月号に《池澤夏樹、「旅を語る」。》特集が組まれている。そこで「スティル・ライフ」TBSドラマなどがDVD発売企画として、原作者が冒頭を読み上げている。芥川賞の選考会議で要不要が問題になった部分転載。

異邦人のような不思議な男と同居した数ヶ月の記録が続いていく。

一時間テレビドラマは筒井ともみ脚色で、原作内容を寸分変えずに、女性二人が不思議な関係をする物語となっている。

原作を象徴する二本の木が並んでる景色は、現実にはなかなかなくてスタッフが探して見つけたというエピソードが記事で写真紹介されている。

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池澤夏樹原作「スティル・ライフ」DVD

<キャスト>

田中裕子 南果歩

黒田アーサー 岸谷五朗 橋爪功

河原崎長一郎

ほか 


<スタッフ>

原作/池澤夏樹『スティル・ライフ』(中公文庫)

脚本/筒井ともみ

プロデューサー・演出/堀川とんこう

製作著作/TBS 
posted by koinu at 07:10| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする