2020年05月05日

比喩ではない詩

「ノン・レトリック T」新川和江

 

たとえばわたしは 水をのむ

ゴクンゴクンと のどを鳴らす

たとえばわたしは 指を切る

切ったところが 一文字にいたむ

たとえばわたしは 布を縫う

ふくろが出来て ものがはいる

たとえばわたしは へんじを書く

やっぱりわたしもあなたが好き と

それから そうして こどもを生む

ほかほか湯気のたつ赤んぼを!

 

ひときれのレモン

丸のままの林檎

野っ原のなかの槻の大樹

橋をながす奔流

1本のマッチ

光るメス

土間のすみにころがっている泥いも

はだか馬

 

わたしもほしい

それだけで詩となるような

1行の

あざやかな行為もしくは存在が

 

(現代詩文庫「新川和江詩集」より)


比喩でなく詩とは何かと問う、答えを解明する詩である。この詩が普遍的で切実なテーマを追っている。ランプ点灯された詩は、明かりを燈す。また逆のように消灯したままで、堂々巡り解明されないこともある。

posted by koinu at 11:00| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする