2020年04月19日

林あまり「夜桜お七」

『夜桜お七』歌:坂本冬美  

作詞:林あまり 作曲:三木たかし

赤い鼻緒がぷつりと切れた

すげてくれる手ありゃしない

置いてけ堀をけとばして

駆けだす指に血がにじむ

さくらさくらいつまで待っても来ぬ人と

死んだひととはおなじこと

さくらさくらはな吹雪

燃えて燃やした肌より白い花

浴びてわたしは夜桜お七

さくらさくら弥生の空に

さくらさくらはな吹雪

「夜桜お七」は199497日に発売、坂本冬美のシングル。

林あまり『MARS☆ANGEL』から短歌連作「夜桜お七」より再構成された。


林あまり「夜桜お七」 四首

赤い鼻緒きれた夢など紡ぎつつ

 お七いつまで春をうとうと


緋のじゅばん備えつけたるホテルにて

 マッチ擦りたし今宵のお七


唇を幹にはわせて息ひそめかんざし打ちこむ

 夜桜お七


ざりざりと桜のぼれば脚に傷しろく浮き出し

 月夜が舐める


歌集「MARSANGEL」(1986)より


直角に見下ろすかたち

うっとりとしている男をあわれむような


舌でなぞる形も味もあなたは知らない

わたしにはこんなになつかしいのに


目を閉じなければすこしもよくない

   視界は「答えろ、答えろ」と迫る


文脈は無視して犬のように仕える

 振るべき尻尾などないままに


死に至る罪を今夜も犯しつつ

クローディアスの祈り呟く


意識にのりこえたらしい悲しみが

つながるたびに押し寄せてくる


とびだしてくる声の不思議は水鳥の類か

あとからおもうひとつに


 林あまり『ベッドサイド』(新潮社)より



「水底の時間」

電話が鳴る青い音ならあなたから      

部屋いっぱいに流れこむ水


さあ波に乗らなくてはさざ波を二つ見送る  

大きい波、来た

   

気がつけば岸に打ち寄せられていて

横にはあなたも倒れている


おもりそれぞれの足の錘のやさしさよ

抱き合って揺れる湖の底

林あまり 1963110日東京・渋谷生まれ。’78年、日本基督教団頒栄教会で洗礼を受ける。’81年、恵泉女学園高等学校卒業。故・前田透主宰「詩歌」に入会、解散まで所属。’85年、成蹊大学文学部日本文学科卒業、「鳩よ!(マガジンハウス)でデビュー。

posted by koinu at 20:00| 東京 ☀| 音楽時間 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする