2020年04月17日

『木にたずねよ』和合亮一

力強い温度を感じる言葉がある。

福島から配信された詩人のフレーズです。CORONAウィルスは放射能漏れのように、全国的に各地へ拡散感染している。今こそ扉を開けて紐ときたい詩集。


胸のなかで 火が燃えている

何が正しいのか 間違っているのか

それが分かってくるといい

正しさは煙をあげないと見えないものだから


言葉のなかで 火が燃えている

傷をつけてはいけない人に

出来るだけ やさしく話しかけたい

話したいことをあぶりなおしている

「情熱の木」和合亮一より


東日本大震災によって生活の根幹を揺さぶられ今なお呻吟する人々が多くいる。

詩人は福島市の通りにあると言われる74本の街路樹の11本に、これからのたしかな生活のありかとは何なのかとたずねる。

すると言葉が心の中で根を生やし、こぶを作り、幹を太くして枝を張って、葉を繁らせてくるのだった。


『木にたずねよ』和合亮一(明石書店


T たずねる木

  はじまりの木

  凍れる木

  旅する木

  求める木

  ふたりの木

  言葉の木

  よるの木

  どこの木

  音楽の木

  命の木

  黙す木

  はだかの木

  孤独の木

  運命の木

  星空の木


U ゆるがない木

  存在の木

  奇跡の木

  成長の木

  生命の木

  風になる木

  微笑む木

  不屈の木

  頬の木

  想う木

  あたりまえの木

  めぐる木

  きおくの木

  実りの木

  はるかな木

  運ぶ木

  木陰の木

  朝の木

  読む木

  一本の木


V ささやく木

  交感の木

  笑う木

  さえずりの木

  支える木

  涙の木

  祈りの木

  であいの木

  家族の木

  ごほうびの木

  友だちの木

  見上げる木

  時間の木

  待つ木

  無限の木

  眠る木

  永遠の木

  寄り添う木

  対話の木

  記憶の木

  やさしさの木

  光の木


W 立ちあがる木

  まっすぐな木

  予感の木

  大きな木

  息子の木

  空になる木

  目覚めの木

  さえずる木

  深呼吸する木

  生きる木

  まばたく木

  木漏れ日の木

  立ち止まらない木

  草原の木

  つぶやく木

  さよならの木

  燃える木

  情熱の木

  明日の木

 あとがき


和合亮一 1968年福島生まれ。福島市在住。詩人。高校の国語教師。『AFTER』(思潮社)で中原中也賞受賞。『地球頭脳詩篇』(思潮社)で晩翠賞受賞。2011311日、伊達市にある学校で被災。避難所で数日過ごした後、自宅からツイッターで詩を発信し続け大反響を呼ぶ。近著に、『詩の礫』(徳間書店)、『詩の邂逅』(朝日新聞出版)、『詩ノ黙礼』(新潮社)など。

posted by koinu at 13:00| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする