2020年04月06日

楽天といわれた詩人・白居易 (772〜846)

「對琴酒」白居易

西窓明且暖 晚坐卷書帷 琴匣

拂開後 酒瓶添滿時

角尊白螺盞 玉軫黃金徽 未及彈與酌 相對已依依

泠泠秋泉韻 貯在龍鳳池 油油春雲心 一杯可致之

自古有琴酒 得此味者稀 秖應康與籍 及我三心知


琴と酒の前で

西の窓は明るくて暖かい

日暮れに座り書斎の幕を巻きあげる

琴の匣を塵を払って開けて瓶に酒をなみなみ満たした時

角で出来た樽に白い螺鈿の杯

玉で出来たつまみに黄金でできたしるし

まだ琴を弾かずとも酒を酌まずとも、目の前にあるだけでも魅了される

秋の泉水の冷ややかな調べは龍池、鳳沼の穴のなかにかくまわれ、

春の雲のふんわりとした心は、この一つの杯にて呼び寄せられる

琴と酒は、古来より伝えられてきたものではあるけれど、

このような思いを感じた人は、本当に少ないと思われる

おそらく、嵆康、阮籍、そして私の三人の心が知るだけ


冬至夜懐湘霊

艶質無由見 寒衾不可親

何堪最長夜 俱作獨眠人


その艶やかにして麗しい姿はもはや見ることはできない

冷え冷えとした褥に肌を寄せるのもできない

なんと侘しく寂しいことだろうか

一年でも一番長いこの夜に

お互いに独り寝をするとは


《老境に極める》

五十年来思慮熟  五十年来の思慮熟す

忙人應未勝閑人  忙人まさに未だ閑人に勝らざるべし

林園傲逸真成貴  林園に傲逸なるは真に貴となし

衣食単疏不是貧  衣食の単疏なるはこれ貧ならず

専掌図書無過地  専ら図書をつかさどる無過の地

遍尋山水自由身  あまねく山水を尋ねる自由の身

儻年七十猶強健  もし年七十にしてなお強健ならば

尚徳閑行十五春  なお閑行すること十五春を得ん


長年の考えがまとまり、忙しくしているよりも、 閑に生きるのが至高の人生であるという漢詩。


臥風北窓下  風に臥す北窓の下

坐月南池頭  月に坐す南地のほとり

脳涼脱烏帽  脳涼しくして烏帽を脱ぎ

足熱濯清流  足熱して清流に洗う

慵発昼高枕  慵発して昼枕を高くし

興来夜浮舟  興来たりて夜舟を浮かぶ

何乃有余適  何ぞすなわち余適あらん

祇縁無過求  ただ過求無きによる


北風に喜びを感じて、南側に座って月を仰ぐ。 寝たいときに寝て、起きたいときに起きる。 過分な欲を持たなければ、楽しみはいくらでもあるだろう。


白居易 772846)

中国,中唐の詩人。太原 (山西省の人。字は楽天。号は香山居士。貞元 16 (800) 年進士に及第。翰林学士,左拾遺などを歴任,元和 10 (815) 年太子賛善大夫のとき罪を得て江州司馬に左遷され,その後地方の刺史や刑部侍郎など中央の官を経て,会昌2 (842) 年刑部尚書として辞任,のち没して尚書右僕射を贈られた。

 現存する詩は三千余首で唐代詩人中最も多く,若い頃の作には社会の矛盾をつく諷諭詩が,晩年には閑寂な境地をうたう詩が多い。玄宗と楊貴妃の愛をうたった『長恨歌』はよく知られる。韓愈とともに「韓白」,李白,杜甫を加えて「李杜韓白」と並称された。

全集『白氏文集』は日本でも平安時代以来広く愛読され,日本文学に大きな影響を与えた。

posted by koinu at 14:09| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする