2020年02月21日

『前世』ボードレール

  余は長らく大いなる柱廊のもとに暮らしていた

  海上の太陽が千々の色合いに染め上げ

  厳かに聳え立つ列中は

  夕べの影を落とし 洞窟の如くにみえた


  波は空を映して渦巻き

  厳粛と神秘のうちに 打ち寄せる音は

  豊かな音楽となって 夕日と溶け合い

  我が瞳のうちに反射しあった


  かの静寂な逸楽のうちに 余は暮らした

  青い海 高巻く波 光に包まれ

  よき香を放つ裸の召使にかしずかれつつ


  召使らは椰子の葉で余の額を飾り

  余が追い求める苦き秘密の

  如何ばかりに深いかを測り続けた

  《悪の華》より

posted by koinu at 11:00| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする