最果タヒ「商業主義」
暗闇の中で流れていく川の水は掌のよう。
怒りがすべて声に昇華されていく乾燥した冬の、私たちが履いているブーツが春の代わりに足音を立てている。
こきまま誰もいないまま、この街が廃れてくれたなら私たちは永遠にここに暮らすつもりだったんだ。
約束できないまま、笑っている、持ってきた商品はどれも売れやしなかったけれど、あなたはどうして幸福なのかって、精神論を持ち出さないで答えてほしい。私の心に、銀細工の湧く泉を見つけたからって、答えてほしかった。
美しく磨かれた美術品、貧乏になった美術館から火事になる。
潔癖な人が言ったおとぎ話を信じて早死にしたあの子は、天国などないのに天国で笑っていて、要するに迷子になってしまった。
あなたが見ている美しい夕焼けは、241円の価値があるの。わあ、値段が素数だね!美しいって言えよ。
(「 現代詩手帖」2020年02月号)
NHKノーナレ「謎の詩人 最果タヒ」が2020年2月3日(月)22時50分から放送される。
2/10、22時からのNHK「グレーテルのかまど」は、「最果タヒのチョコレートパフェ」です。チョコレートパフェ、昨日食べたばっかだわ……。吉岡里帆さんが詩を朗読してくださるそうなのです、うれしいな……。
「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」
2020年6月17日(水)〜7月5日(日) 京都文化博物館 別館ホール
最果 タヒ(さいはて たひ、1986年 - )
日本の詩人、小説家。女性。兵庫県神戸市生まれ。