2020年01月07日

斉藤茂吉の短歌

・かりがねも既にわたらずあまの原かぎりも知らに雪ふりみだる

・最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも

・人皆のなげく時代に生きのこりわが眉の毛も白くなりにき

・オリーヴのあぶらの如き悲しみを彼の使徒もつねに持ちてゐたりや

・歌ひとつ作りて涙ぐむことあり世の現身よ面をな見そ

・道のべにヒマの花咲きたりしこと何か罪ふかき感じのごとく

・くらがりの中におちいる罪ふかき世紀にゐたる吾もひとりぞ


・朝あけて 船より鳴れるふとぶえの

・こだまは長し なみよろう山

・遠田のかわず 天に聞こゆる

・空海の まだ若かりし像を見て

・われ去りかねき 今のうつつに

・のど赤き 玄鳥ふたつ屋梁にゐて

・最上川の 上空にして残れるは

・いまだうつくしき 虹の断片

・ふぶくゆふべと なりにけるかも



斉藤茂吉(1882‐1953)

近代短歌の第一人者で、日本の近代精神を体現した文学者。40年にわたる作歌活動から生まれた全短歌。初期の生命感の躍動するなまの表現から、次第に複雑な人生の味わいをたたえる沈静へと移ってゆく。

posted by koinu at 10:50| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする