2019年12月07日

『ありふれたものへのオード』パブロ・ネルーダ

スプーンへのオード


スプーン

いっとう古い

人間の手の椀

いまも金属の木のおまえの姿の中に

素朴な掌の型が見える

そこでは水がさわやかさを

野生の血が火と狩猟の

動悸を運んでいた


(中略)

そうだスプーンよ

おまえは人間といっしょに

いくつもの山をよじ登り

川に下り舟や 町や

城や 台所をみたしてきた

だが おまえの生涯は

貧乏人の皿とその口と

いっしょになるのが

むつかしい道のりだった


だからこそ闘いながらうたいながら

わたしたちは求めている

新しい世界の時代では

スープ皿や清潔なスプーン

ひとそろいを備えるようにとの

通知がなされるだろう

飢えのない世界では

あらゆる隅を照らしているだろう

テーブルの上におかれたすべての皿

うれしそうな花々

スープの大海の湯気

そしてスプーンのあらゆる動きが


『パプロ・ネルーダ詩集』(思潮社 海外詩文庫より


パブロ・ネルーダは1904712日にチリで生まれた詩人。代表作にチリの自然の美しさをうたった「マチュピチュの高み」や「女のからだ」など。1971年ノーベル文学賞受賞。ガブリエル・ガルシア=マルケスは「どの言語の中でも20世紀の最高の詩人」と称えた。

posted by koinu at 21:00| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする