2019年10月06日

関山和夫「落語風俗帳」概要

古く天台宗で行われた説教の型に「三周説法(法説・譬喩ひゆ・因縁)」というものがあったが、これを応用した「説教の五段法」という型が江戸時代初期に真宗で創造された。これは日本人の話し方(雄弁術)の奥義として貴重な遺産と言うべきである。

1 讃題
これから話そうとする一席のテーマとして、経典や法語の一節を節をつけて感銘深く、ありがたく読み上げる。
2 法説
讃題の意味を今少し分かりやすく解説する。
3 譬喩(ひゆ)
讃題、法説をいっそうわかりやすくするために、例え話を出来るだけ興味深く話す。
4 因縁
讃題、法説を証明するための事例をあげる因縁談をする。
5 結勧(結弁)
結び。聴衆に「安心(あんじん)」を与え、この一席の話を、要旨をまとめてひきしめる。

の五段構成である。要するに讃題(テーマ)が切り出しとなり、法説を導入部としてマクラを振り、譬喩・因縁を中身とし、結勧をもって結ぶという三部に分ける。これを「はじめシンミリ(讃題・法説)、なかオカシク(譬喩・因縁)、おわりトウトク(尊く=結勧)」とも伝承した。
説教の型については、二つの大まかな分類もあった。一つは「呼ぼり説教」であり、今一つは「因縁譬喩説教」である。前者は、大勢の聴衆に対して呼びかけるように語尾を長く引っ張って、諄々と話して感銘を与える方法だ。後者は、譬喩因縁談を中心にした通俗説教で、すこぶる楽しく、面白いものであった。説教から落語が派生する最大の要素は、この譬喩因縁談にあった。
普通の説教者は、三十か五十程度の話材をもっていたが、大説教者といわれる人は数百もの持ちネタがあった。円熟した説教者たちは、いかにも話芸の名人であった。笑いと涙を織りまぜながら、巧みな高座を展開した。
関山和夫「落語風俗帳」より

posted by koinu at 13:00| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする