2019年09月05日

【愛】と冷酷な現実と落差

【愛】という漢字は後ろを振り返って、たたずむ人の形に心を加えてできているそうだ(白川静さんの『常用字解』)。立ち去ろうとしても残した人のことが気になって立ち去りがたい。そんな気持ちの形がもともとの【愛】だという
▼当時五歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃん。当時十歳の栗原心愛(みあ)さん。二人の名を覚えている人も多いだろう。少し前の虐待事件の犠牲者である。二人の名にある【愛】と冷酷な現実とのあまりの落差が悲しい▼もう一人、その漢字の入った名前を加えなければならないのがつらい。大塚璃愛来(りあら)ちゃん。鹿児島県出水(いずみ)市での虐待事件で亡くなった四歳の女の子である。母親の交際相手だった男が暴行容疑で逮捕されている。愛(いと)しいと頬ずりされるべき幼い命がまた失われた▼母親が夜、仕事で出かけた後、璃愛来ちゃん一人で外出し保護されることが四度あったという。気になって立ち去りがたい気持ち。あの漢字の成り立ちでいえば、残した子どもを気にしなかったのは母親だけではないかもしれない▼出水市は璃愛来ちゃんにあざがあるという情報を県警に伝えていなかった。児相は県警から保護の必要があると指摘されながら、動かなかった
▼どんな事情があったかは分からない。が、かかわった大人たちはその子の日々をどこまで気にし、大丈夫だろうかと本気で後ろを振り返っていたか。【愛】を疑う。
《東京新聞》洗筆より
posted by koinu at 09:00| 東京 ☁| 報道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする