2019年07月24日

井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 (新潮文庫)

本書は平成8年11月に岩手県一関市で開催された井上ひさし氏の「作文教室」の記録である。
「わたしも書く時間が残り少なくなってきました。あと十年も書ければと考えたり、できたら、十三年、あと十四年は、と考えたりしますが、十五年は持たないと思っています。」
この偉大な作家に触発されて紡がれた珠玉の「作文」が並んでいる。朱筆を介した作家と受講者との交感は、圧巻。至福の交流。作家が素晴らしい教育者でもあったことが熱を伴って伝わってくる。

一時間目・・・作文の基礎基本
二時間目・・・日本語の急所をざっくりと講義
三時間目・・・良い書き手、良い読み手への架け橋
四時間目・・・代表生徒二十六人の四百字作文を発表と添削

・作文の秘訣は自分にしか書けないことを、分かりやすく書くこと。
・文章を曖昧にするのが「〜か」
・題名を付けることで1/3以上終わっている。いい題名とは情報が豊かである。
・なるべく短くする。
・いきなり核心にはいることが大切。
・日本語は主語を削ると良くなる。
・日本語には関係代名詞がないので、文をちょっと複雑にすると短期記憶に入らない。
・外国語では丁寧さを表すのに人称を変える。
・先触れの副詞を使うと効果的(さぞ、かならずしも、けっして、ちっとも)
・長期記憶の中からとんでもない物が、ひゅっと出てくる。
・わたしたちは民族として長期記憶が少ない。
・全体のテーマからそう外れずに脱線する。
・子供には観察文とか報告文を書かせる。感想文では駄目。
・人に伝えるには言葉が必要。

何かと目立つ、リアルな脱線。
学生時代に先生が担当科目とは違う話題を引っ張り出して、それが妙に面白くて記憶に残ってる、そんな経験が何方にもあると思います。
「わたしたちは民族としての長期記憶が少ないんです。貧しいんです。」という。
アメリカと比べると、日本では身体の部位についての名詞と成句が曖昧、言語と国民性の相関。

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井上ひさし 
1934(昭和9)年、山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後に放送作家としてスタートする。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『東京セブンローズ』など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍している。’84年に劇団「こまつ座」を結成し、座付き作者として自作の上演活動を行っている。
posted by koinu at 13:00| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする