2019年06月30日

種村季弘 編『放浪旅読本』(光文社)

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1989「〔光る話〕の花束」というシリーズの第2巻は絶品である。アンソロジーは書物をたくさん読みこなさないと不可能な編集作業。対談でも次々と繰り出される文学作品の数々に、選者としての眼差しが感じられる。ともすれば「放浪旅」という凡庸なテーマに、次のように六段階での旅への構成と好奇心を齎らす内容は流石ですね。



【収録内容】

T    旅への誘い

旅上(萩原朔太郎)/放浪への誘い(森敦)/港の感傷(結城昌治)/仙台屋台誌(村上善男)/リュックの中味(高田宏)/旅枕(向田邦子)/勉強記(坂口安吾)/

U   芸能道中

浅草花屋敷(武田百合子)/夕焼けと山師(辻まこと)/売り絵師の話(池内紀)/たのしいドサまわり(駒田信二)/学校といふ浮浪者(長谷川伸)/ニューヨークは今日も大変だ!-抜粋(篠原有司男)/

V   逃避行

陽は西へ-抜粋(色川武大)/摩天楼(島尾敏雄)/百人斬りの守神健次(森川哲郎)/日光円蔵の墓(子母沢寛)/追剥団(野尻抱影)/

W   無銭道中

世界放浪記-マレーの巻(金子光晴)/宗不旱の白骨(高木護)/いろは長屋(添田唖蝉坊)/突貫紀行(幸田露伴)/なめとこ(高橋新吉)/

X   冒険

海ゆかば(宮本常一)/チベット滞在記-抜粋(多田等観)/森(土方久功)/木曽より五箇山へ(柳田国男)/

Y   コスモポリタン

大連ふたたび(清岡卓行)/異沢とダダ大泉黒石・辻潤(大谷利彦)/ブラジル生活の早取写真(堀口九万一)/遅れてはきたけれど(細川周平)/履歴書-抜粋(南方熊楠)


アンソロジーとして抜群な内容で、これは文庫本にならないのだろうか。種村季弘さんは『東京百話』(ちくま文庫)などに代表される稀代アンソロジストで、多岐に渡るジャンルの広さが特徴である。


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ヘボな詩集や音楽を聴いているより、豊かな魂を感じる憩い。
posted by koinu at 11:09| 東京 ☔| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする