2019年06月26日

●特集『三体』と中国SF

いよいよ7月4日(木)に刊行となった中国の超大型SF、劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン)『三体』。 
中国で社会現象となり、そうそうたる顔ぶれが激賞するこの話題作の刊行にあわせ、 今いちばんの熱気を放つ、中国SFを特集する。 
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SFマガジン 2019年 08 月号 [雑誌]
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014246/
《Short Stories》 
ある日舞い込んできた、ある少年が描いた図面の鑑定依頼。その図が示していたものは…… 
・「天図」王晋康/上原かおり訳 
科学者の父親によって遙か彼方の時空へと飛ばされた娘は、みずからの記憶を反芻する…… 
・「たゆたう生」何夕/及川 茜訳 
・市を分断する珍珠城は、人々の生活を一変させてしまった。娘を思う男が出した答えは 
「南島の星空」趙海虹/立原透耶訳 
多くの視聴者を夢中にさせる唯一無二のチャールズ、かれに魅せられる人はあとを絶たず…… 
・「だれもがチャールズを愛していた」宝樹/稲村文吾訳 

《Essays&Article》 
「『三体』と近代の終焉」千野拓政 
「傷痕文学からワイドスクリーン・バロックへ」陸秋槎 
「特集解説◎『三体』のその後」立原透耶 

中国において最大のヒット作となったSF小説『三体』三部作(『三体』『黒暗森林』『死神永生』)

『三体』映像化報道

『三体』翻訳家・大森望さん記事



劉慈欣『流浪的地球』に収録の短編『流浪地球』(さまよえる地球)。約400年後の未来、太陽が危険な存在になると知った人類は、巨大エンジンを建設して地球の自転にブレーキをかけ、他の恒星を目指して太陽系を脱出し、極端な低温と高温の地上から地下都市に移住する。「この時代の人類は4世紀前の映画や小説を見ても理解できない。太陽と共に生きていた時代、人々は生死に無関係なことになぜあれほどまでに情熱を傾けられたのか」「死の脅威と生への欲求があらゆることを圧倒し……人類の心理状態と精神生活に本質的な変化をもたらし、愛情など一瞥する程度のものでしかない」

息子の小学校時代の女性教師と暮らすために家を出る主人公の父は「たぶんしばらくしたら飽きて戻って来るけど、どう?」と言う。「そうしたければ、どうぞ」と母。2カ月後、当然のように父は戻る。やがて主人公は日本人女性加代子と運命的に出会い、結婚。

だが、人々が先の見えない不安から連合政府に反旗を翻すと、加代子も武器を手に夫と子供の元を躊躇なく去り、命を落とす。絶対的危機の前に薄れゆく人の情がうすら寒くも妙にリアルな中、夫は「太陽と共に生きた時代の人間」のような思いを亡き加代子に抱き続ける。大胆な設定と科学で危機に挑むスケールに目を奪われがちだが、巧みな人間ドラマが光る。(劉慈欣『さまよえる地球』〈SFマガジン〉20089月号「 中国SF特集」日本語訳掲載)

https://globe.asahi.com/article/12248115

――わたしは闇夜を見たことがない。わたしは星を見たことがない。春を、秋も冬も、見たことがない。わたしはブレーキの時代に生まれた。当時地球は自転を停止したばかりだった。地球が自転を止めるには、連合政府の初期計画より三年長い、四十二年を要した。

posted by koinu at 09:50| 東京 ☁| 観測 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする