2019年06月16日

『塩の像』レオポルド・ルゴーネス 牛島信明 訳(国書刊行会)

衝撃的に創造性ある面白い短篇集だが絶版となっている。作者L・ルゴーネスは、1874-1938のアルゼンチンの作家。ボルヘスの先駆者である。

巻頭の短編「イスール」は飼い猿に言葉を教えるのにとり憑かれた科学者の物語。猿に並々ならぬ関心で「説明し難い現象』と人間嫌いの紳士が人格分裂を起こしたとき、もう一人の「自分」は猿の形を示した。

イスール Yzur

火の雨 La Lluvia de Fuego

塩の像 La Estatua de Sal

アブデラの馬 Los Caballos de Abdera

説明し難い現象 Un Fenomeno Inexplicable

フランチェスカ Francesca

ジュリエット祖母さん Abuela Julieta


「アブデラの馬」は挙って馬の飼育に熱中する国で、甘やかされた馬が人間並みの知性を持ってしまい反乱を起こす。かなり寓話的・比喩的な内容で、最後の結末に驚く。

「火の雨」はゴモラの街に火の雨が降り始まり、住民が死に絶えた街で最後まで生きていた男の目から描いた終末の話。

「塩の像」はソドムの町で隠遁生活をしていた修道僧が、塩の像になったロトの妻と会う話。対となって描かれるゴモラは栄耀栄華を謳歌していた人類の滅亡の儚さを叙情的に語られ、ソドムのほうは神と人間の対立する焦点を濃厚に展開される。


J・L・ボルヘス編纂 バベルの図書館 18 レオポルド・ルゴーネス『塩の像』 1989年国書刊行会

ルゴーネス

1874-1938。アルゼンチンの詩人、小説家。ボルヘスの師。

詩集

『黄金の山々』 (Las montañas del oro) 1897年

『庭園の黄昏』(Los crepúsculos del jardín) 1905年

『感傷的な暦』 (Lunario sentimantal) 1909年

『世俗的な頌歌』 (Odas seculares) 1910年

『風景の書』 (El libro de los paisajes) 1917年

『昔からの詩』 (Poemas solariegos) 1927年

『リオ・セコのロマンセ』(Romances del Río Seco) 1938年

短編集

『ガウチョの戦い』 (La guerra gaucha) 1905年

『奇妙な力』 (Las fuerzas extrañas) 1906年 収録作に「イスール」(Yzur)など。


牛島信明

1940年生れ。東京外国語大学教授。主要著訳書--『反=ドン・キホーテ論』(弘文堂)、パス『弓と竪琴』(国書刊行会)、ガルシア・ロルカ『血の婚礼 他二篇』(岩波文庫)、セルバンテス『ドン・キホーテ』(岩波少年文庫)ほか。

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ボルヘスが編纂しイタリアのフランコ・マリーア・リッチ社から刊行された文学全集『バベルの図書館』全30巻。本の形は縦長で箱入り、瀟洒という言葉が当てはまる装丁。一冊は本棚に置きたい、書物メディアの魅力をいかんなく発揮しているシリーズだった。


絶版になっている本書の亡き訳者を敬いつつ「塩の像」訳文をWB公開されていた。

http://www.k-hosaka.com/nonbook/shionozo.html

短編「塩の像」レオポルド・ルゴーネス 
posted by koinu at 15:37| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする