
リズムは必ずしも文明の中にはない。世界への回帰は原始主義への回帰ではない。人間が自分のために創りだした世界もまた[自然]なのである。
精神の崇高な表現の数々、主導的と称される概念や観念の数々、そんなものより千倍も重要な理解や表現があるのだ。例えば人という種族が始まって以来、十万年間に為したことだ。彼の精神を一体に保っている理由の数々、本質的で深く、腺の分泌物にも似ているに違いない。
われわれの危うさは抽象的なものだ。だがわれわれの台座ときたら、なんと見事な巌(いわお)だろう!
われわれの精神のはじめての身震いのうちにはなんという不透明な厚み、なんという力強さ、なんという秩序があることか、そこでは思考はいまだ器官に混じり合っている。まるで遠くから読みとられることになるしるし、手で触られるしるしのように。
(ル・クレジオ『戦争』より)

