2021年08月23日

しばらくは 花の上なる 月夜かな

しばらくは 花の上なる 月夜かな 

芭蕉:今は盛りと咲き誇る花の上へ月が照っている。しばらく月下の花見ができるだろ。

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【芭蕉の句とともに旅する】

古池や蛙飛びこむ水の音
旅に病で夢は枯野をかけ廻る
海くれて鴨のこゑほのかに白し
雲の峰いくつ崩れて月の山
姥桜さくや老後の思ひ出
年は人にとらせていつも若夷
花の顔に晴うてしてや朧月
盛なる梅にす手引風も哉
あち東風や面々さばき柳髪
餅雪をしら糸となす柳哉
花にあかぬ嘆やこちのうたぶくろ
なつちかし其口たばへ花の風
うかれける人や初瀬の山桜
糸桜こやかへるさの足もつれ
風吹けば尾ぼそうなるや犬櫻
春立とわらはも知やかざり縄
きてもみよ甚べが羽織花ごろも
花にいやよ世間口より風のくち
植る事子のごとくせよ児櫻
目の星や花をねがひの糸櫻
天びんや京江戸かけて千代の春
此梅に牛も初音と鳴つべし
我も神のひさうやあふぐ梅の花
門松やおもへば一夜三十年
大比叡やしの字を引て一 霞
猫の妻へついの崩れより通ひけり
竜宮もけふの塩路や土用干
先しるや宜竹が竹に花の雪
庭訓の往来誰が文庫より今朝の春
かぴたんもつくばはせけり君が春
大裏雛人形天皇の御宇とかや
初花に命七十五年ほど
発句也松尾桃青宿の春
阿蘭陀も花に来にけり馬に鞍
草履の尻折てかへらん山櫻
於春々大哉春と云々
花にやどり瓢箪斎と自いへり
餅を夢に折むすぶ歯朶の草枕
藻にすだく白魚やとらば消ぬべき
盛じや花に坐浮法師ぬめり妻
山吹の露菜の花のかこち顔なるや
摘けんや 茶を凩の秋ともしらで
ばせを植てまづにくむ荻の二ば哉
餅花やかざしにさせるよめが君
待花や藤三郎がよしの山
花に酔り羽織着てかたな指女
二日酔ものかは花のあるあいだ
梅柳さぞ若衆哉女かな
袖よごすらん田螺の蜑の隙をなみ
艶奴今やう花にらうさいす
うぐひすを魂にねむるか嬌柳
花にうき世我酒白く食黒し
はる立や新年ふるき米五升
元日やおもへば淋し秋の暮
おきよおきよわが友にせむぬるこてふ
蝶よてふよ唐土のはいかい問む
山は猫ねぶりていくや雪のひま
我ためか鶴はみのこす芹の飯
誰が聟ぞ歯朶に餅おふうしの年  野ざらし
子の日しに都へ行ん友もがな
旅がらす古巣はむめに成にけり
春なれや名もなき山の薄霞  野ざらし
初春先酒に梅売にほひかな
世ににほへ梅花一枝のみそさざい
水とりや氷の僧の沓の音
梅白し昨日や鶴を盗れし
樫の木の花にかまはぬ姿かな
我がきぬにふしみの桃の雫せよ
山路来て何やらゆかしすみれ草
辛崎の松は花より朧にて
つつじいけて其陰に干鱈さく女
菜畠に花見がほなる雀哉
命二つの中に生たる櫻哉
船足も休む時あり濱の桃
蝶の飛ばかり野中の日かげ哉
幾霜に心ばせをの松かざり
古畑や薺摘行男ども
よくみれば薺花さく垣ねかな
まふくだがはかまよそふかつくづくし
煩へば餅をも喰はず桃の花
観音のいらかみやりつ花の雲
やまざくら瓦ふくもの先ふたつ
古巣只あはれなるべき隣かな
地にたふれ根により花のわかれかな
花咲て七日鶴見る麓かな
古池や蛙飛こむ水のおと
誰やらが形に似たりけさの春
忘るなよ藪の中なるむめの花
さとのこよ梅おりのこせうしのむち
蠣よりは海苔をば老の売もせで
花にあそぶ虻なくらひそ友雀
鸛の巣もみらるる花の葉越かな
鸛の巣に嵐の外のさくら哉
花の雲鐘は上野か浅草歟
永き日も囀たらぬひばり哉
原中や物にもつかず鳴雲雀
笠寺やもらぬ崖も春の雨
二日にもぬかりはせじな花の春
春たちてまだ九日の野山かな
あこくその心もしらず梅の花
枯芝やややかげろふの一二寸
手鼻かむ音さへ梅のさかり哉
梅の木に猶やどり木や梅の花
紙ぎぬのぬるともをらん雨の花
此屋のかなしさ告げよ野老堀
盃に泥な落しそむら燕
物の名を先とふ蘆のわか葉哉
いも植て門は葎のわか葉哉
のうれんの奥物ぶかし北の梅
神垣やおもひもかけず涅槃像
御子良子の一もと床し梅の花
何の木の花とはしらず匂哉
はだかにはまだ衣更着のあらし哉
初桜折しもけふは能日なり
丈六にかげろふ高し石の上
香ににほへうにほる岡の梅のはな
さまざまの事おもひ出す櫻かな
花をやどにはじめをはりやはつかほど
このほどを花に礼いふわかれ哉
よし野にて櫻見せふぞ檜の木笠
春の夜や籠り人ゆかし堂の隅
雲雀より空にやすらふ峠哉
竜門の花や上戸の土産にせん
酒のみに語らんかかる滝の花
はなのかげうたひに似たるたび寝哉
ほろほろと山吹ちるか滝の音
桜がりきどくや日々に五里六里
日は花に暮てさびしやあすならふ
扇にて酒くむかげやちる櫻
声よくはうたはふものをさくら散
春雨のこしたにつたふ清水哉
花ざかり山は日ごろのあさぼらけ
ちちははのしきりにこひし雉の声
行春にわかの浦にて追付たり
猶見たし花に明行神の顔
草臥て宿かる比や藤の花
叡慮にて賑ふ民の庭竈
よもに打つ薺もしどろもどろ哉
物好や匂はぬ草にとまる蝶
鐘消て花の香は撞く夕哉
元日は田ごとの日こそこひしけれ
かげろふの我肩に立かみこかな
紅梅や見ぬ恋作る玉すだれ
むぐらさへ若葉はやさし破れ家
うたがふな潮の花も浦の春
草の戸も住替る代ぞひなの家
鮎の子のしら魚送る別哉
行春や鳥啼魚の目は泪
糸遊に結つきたる煙哉
入かかる日も程 々に春のくれ
鐘つかぬ里は何をか春の暮
入あひのかねもきこへずはるのくれ
薦を着て誰人います花のはる
くさまくらまことの華見しても来よ
獺の祭見て来よ瀬田のおく
うぐひすの笠おとしたる椿哉
木のもとに汁も鱠も櫻かな
畑打音やあらしのさくら麻
かげろふや柴胡の糸の薄曇
土手の松花や木深き殿造り
似あはしや豆の粉めしにさくら狩り
春雨やふた葉にもゆる茄子種
此たねとおもひなこさじとうがらし
種芋や花のさかりに売ありく
一里はみな花守の子孫かや
蛇くふと聞けばおそろし雉の声
ひばりなく中の拍子や雉子の声
てふの羽の幾度越ゆる塀のやね
君やてふ我や荘子が夢心
四方より花吹入てにほの波
行春を近江の人とおしみける
ひとり尼わら家すげなし白つつじ
大津絵の筆のはじめは何仏
木曾の情雪や生ぬく春の草
梅若菜まりこの宿のとろろ汁
やまざとはまんざい遅し梅花
月待や梅かたげ行小山伏
不精さやかき起されし春の雨
山吹や笠に指すべき枝の形り
のみあけて花生にせん二升樽
としどしや櫻をこやす花のちり
暫は花の上なる月夜かな
麦めしにやつるる恋か猫の妻
闇の夜や巣をまどはしてなく鵆
山吹や宇治の焙炉の匂ふ時
衰や歯に喰あてし海苔の砂
梅が香やしららおちくぼ京太郎
人も見ぬ春や鏡のうらの梅
うらやましうき世の北の山櫻
鶯や餅に糞する縁のさき
此こころ推せよ花に五器一具
猫の恋やむとき閨の朧月
かぞへ来ぬ屋敷屋敷の梅やなぎ
花にねぬ此もたづひか鼠の巣
両の手に桃とさくらや草の餅
年々や猿に着せたる猿の面
蒟蒻にけふは売かつ若菜哉
春もややけしきととのふ月と梅
はつむまに狐のそりし頭哉
白魚や黒き目を明く法の網
蒟蒻のさしみもすこし梅の花
当皈よりあはれは塚の菫草
鶴の毛の黒き衣や花の雲
蓬莱に聞かばや伊勢の初便
一とせに一度つまるる菜づなかな
むめがかにのつと日の出る山路かな
はれ物にさはる柳のしなへ哉
梅が香に昔の一字あはれ也
からかさに押しわけみたる柳かな
八九間空で雨ふる柳哉
春雨や蓬をのばす艸の道
四つごきのそろはぬ花見心哉
花見にとさす船遅し柳原
青柳の泥にしだるる塩干かな
春雨や蜂の巣つたふ屋ねの漏
顔に似ぬ発句も出よ初ざくら
雪間より薄紫の芽独活哉
梅がかや見ぬ世の人に御意を得る
春の夜は桜に明てしまひけり
蝙蝠も出よ浮世の華に鳥
春雨や蓑吹かえす川柳
雀子と声鳴かはす鼠の巣
古川にこびて目を張柳かな
子に飽くと申す人には花もなし
鶯や柳のうしろ藪のまへ
むめが香に追もどさるる寒さかな
前髪もまだ若艸の匂ひかな
此槌のむかし椿歟梅の木歟
苔汁の手ぎは見せけり浅黄椀
まとふどな犬ふみつけて猫の恋
葉にそむく椿や花のよそ心
咲乱す桃の中より初桜
奈良七重七堂伽藍八重ざくら
西行の菴もあらん花の庭
かげきよも花見のざには七兵衛
蝶鳥のうはつきたつや花の雲
世にさかる花にも念仏申けり
ちるはなや鳥も驚く琴の塵
五月雨に御物遠や月の皃
降音や耳もすふ成梅の雨
杜若にたりやにたり水の影
夕皃にみとるるや身もうかりひよん
夕皃の花に心やうかりひよん
岩躑躅染むる涙やほととぎ朱
しばしもまつやほととぎす千年
五月雨も瀬ぶみ尋ぬ見馴河
なつ木立はくやみ山のこしふさげ
うつくしき其ひめ瓜や后ざね
たかうなや雫もよゝの篠の露
山のすがた蚤が茶臼の覆かな
富士の山蚤が茶臼の覆かな
雲を根に富士は杉なりの 茂かな
命なりわづかの笠の下涼み
夏の月ごゆより出て赤坂や
富士の風や 扇をのせて江戸土産
百里来たりほどは雲井の下涼
またぬのに菜売に来たか時鳥
あすは 粽難波の枯葉夢なれや
五月雨や竜灯揚る番太郎
近江蚊屋汗やさざ波夜の床
梢よりあだに落けり蝉のから
水むけて跡とひたまへ道明寺
あやめ生り軒の鰯のされかうべ
菖蒲生けり去年の鰯の髑髏
五月の雨岩ひばの緑いつ迄ぞ
郭公まねくか麦のむら尾花
五月雨に鶴の足みじかくなれり
愚にくらく棘をつかむ蛍哉
闇夜きつね下ばふ玉真桑
夕皃の白く夜の後架に帋燭とりて
ほととぎす正月は梅の花咲けり
清く聞ん耳に香焼て郭公
椹や花なき蝶の世すて酒
青ざしや草餅の穂に出つらん
馬ぼくぼく我をゑに見る夏野哉
忘れずは佐夜の中山にて涼め
時鳥鰹を染にけりけらし
雪の中は昼顔かれぬ日影哉
昼顔に米つき涼むあはれ也
戸の口に宿札なのれほととぎす
杜若われに発句のおもひあり
いざともに穂麦喰はん草枕
梅こひて卯花拝むなみだ哉
団扇もてあふがん人のうしろむき
白げしにはねもぐ蝶の形見哉
おもひ立木曾や四月のさくら狩
牡丹蘂ふかく分出る蜂の名残哉
鳥さしも竿や捨けんほととぎす
行駒の麦に慰むやどり哉
山賎のおとがい閉るむぐらかな
夏衣いまだ虱をとりつくさず
ほととぎすなくなくとぶぞいそがはし
卯花も母なき宿ぞ冷じき
五月雨や桶の輪きるる夜の声
髪はえて容顔蒼し五月雨
五月雨に鳰の浮巣を見に行む
鰹売いかなる人を酔すらん
いでや我よきぬのきたりせみごろも
酔て寝むなでしこ咲る石の上
瓜作る君があれなと夕すずみ
さざれ蠏足はひのぼる清水哉
一つぬひで後に負ひぬ衣がへ
灌仏の日に生れあふ鹿の子哉
若葉して御めの雫ぬぐはばや
鹿の角先一節のわかれかな
二俣にわかれ初けり鹿の角
杜若語るも旅のひとつ哉
蛸壺やはかなき夢を夏の月
月はあれど留主のやう也須磨の夏
月見ても物たらはずや須磨の夏
須磨のあま矢先に鳴くか郭公
ほととぎす消行方や嶋一つ
かたつぶり角ふりわけよ須磨明石
須磨寺やふかぬ笛きく木下やみ
海士の顔先見らるるやけしの花
足洗てつゐ明安き丸寐かな
有難きすがた拝まんかきつばた
花あやめ一夜にかれし求馬哉
此ほたる田ごとの月にくらべみん
世の夏や湖水にうかぶ波の上
五月雨にかくれぬものや瀬田の橋
めに残るよしのをせたの 蛍哉
艸の葉を落るより飛蛍哉
海ははれてひえふりのこす五月哉
皷子花の短夜ねぶる昼間哉
夕がほや秋はいろいろの瓢かな
ひるがほに昼寐せうもの床の山
無き人の小袖も今や土用干
やどりせむあかざの杖になる日まで
夏来てもただひとつ葉の一葉哉
城あとや古井の清水先問む
撞鐘もひびくやうなり蝉の声
山陰や身を養はん瓜畑
もろき人にたとへむ花も夏野哉
此あたり目に見ゆるものは皆涼し
又やたぐひ長良の川の鮎なます
おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉
南もほとけ艸のうてなも涼しかれ
瓜の花雫いかなる忘れ艸
ふくかぜの中をうを飛御祓かな
結ぶより早歯にひびく泉かな
あらたうと青葉若葉の日の光
暫時は滝にこもるや夏の初
ほととぎすうらみの滝のうらおもて
秣負ふひとを枝折の夏野哉
山も庭にうごきいるるや夏ざしき
木啄も庵はやぶらず夏木立
田や麦や中にも夏のほととぎす
汗の香に衣ふるはん行者堂
夏山に足駄をおがむ首途哉
野をよこに馬牽むけよ郭公
落くるやたかくの宿の郭公
湯をむすぶ誓も同じ石清水
石の香や夏草赤く露あつし
田一枚植て立去る柳かな
西か東か先早苗にも風の音
早苗にも我色黒き日数哉
風流の初やおくの田植うた
関守の宿を水鶏にとはふもの
世の人の見付ぬ花や軒の栗
かくれ家や目だたぬ花を軒の栗
五月雨は滝降うづむみかさ哉
早苗とる手もとやむかししのぶ摺
笈も太刀も五月にかざれ帋幟
弁慶が笈をもかざれ帋幟
桜より松は二木を三月越し
笠嶋はいづこ五月のぬかり道
あやめ草足に結ん草鞋の緒
嶋じまやちぢにくだきて夏の海
夏草や兵共がゆめの跡
五月雨の降残してや光堂
蛍火の昼は消つつ柱かな
蚤虱馬の尿する枕もと
涼しさを我宿にしてねまる也
這出よかひやが下のひきの声
まゆはきを俤にして紅粉の花
閑さや岩にしみ入る蝉の声
さみだれをあつめて早し最上川
水の奥氷室尋る柳哉
風の香も南に近し最上川
有難や雪をかほらす南谷
涼しさやほの三か月の羽黒山
雲の峰幾つ崩て月の山
語られぬ湯殿にぬらす袂哉
めづらしや山をいで羽の初茄子
暑き日を海に入れたり最上川
象潟や雨に西施がねぶの花
ゆふばれや桜に涼む波の花
汐越や鶴はぎぬれて海涼し
あつみ山や吹浦かけて夕すずみ
初真桑四にや断ん輪に切ん
小鯛さす柳涼しや海士がつま
風かほるこしの白根を国の花
夏艸に富貴を餝れ蛇の衣
夏艸や我先達て蛇からむ
先たのむ椎の木も有夏木立
夕にも朝にもつかず瓜の花
日の道や葵傾くさ月あめ
曙はまだむらさきにほととぎす
橘やいつの野中の郭公
ほたる見や船頭酔ておぼつかな
己が火を木々の蛍や花の宿
わが宿は蚊のちひさきを馳走也
頓て死ぬけしきは見えず蝉の声
京にても京なつかしやほととぎす
川かぜや薄がききたる夕すずみ
我に似るなふたつにわれし真桑瓜
うきふしや竹の子となる人の果
嵐山藪の茂りや風の筋
柚の花や昔しのばん料理の間
ほととぎす大竹藪をもる月夜
たけのこや稚き時の絵のすさび
うき我をさびしがらせよかんこどり
手をうてば木魂に明る夏の月
一日一日 麦あからみて啼雲雀
能なしの寝たし我をぎやうぎやうし
五月雨や色帋へぎたる壁の跡
粽結ふかた手にはさむ額髪
みな月はふくべうやみの暑かな
風かほる羽織は襟もつくろはず
杜鵑鳴音や古き硯ばこ
鎌倉を生て出けむ初鰹
ほととぎす啼や五尺の菖草
水無月や鯛はあれども塩くじら
唐破風の入日や薄き夕涼
破風口に日影やよはる夕涼み
篠の露袴にかけししげり哉
郭公声横たふや水の上
風月の財も離よ深見艸
雨折々思ふ事なき早苗哉
旅人のこころにも似よ椎の花
椎の花心にも似よ木曾の旅
うき人の旅にも習へ木曾の蝿
夕顔や酔てかほ出す窓の穴
子ども等よ昼皃咲きぬ瓜むかん
窓形に昼寐の台や簟
寒からぬ露や牡丹の花の蜜
木がくれて茶摘も聞やほととぎす
卯の花やくらき柳の及ごし
紫陽花や藪を小庭の別座敷
麦の穂を便りにつかむ別かな
目にかかる時やことさら五月富士
どむみりとあふちや雨の花曇
鶯や竹の子藪に老を鳴
するが地や花橘も茶の匂ひ
さみだれや蚕煩ふ桑の畑
ちさはまだ青ばながらになすび汁
さみだれの空吹おとせ大井川
世を旅に代かく小田の行もどり
涼しさを飛騨の工が指図かな
水鶏啼くと人のいへばや佐屋泊
涼しさや直に野松の枝の形
柴附し馬のもどりや田植樽
柳小折片荷は涼し初真瓜
六月や峯に雲置くあらし山
清滝や波に散込青松葉
清滝の水くませてやところてん
すずしさを絵にうつしけり嵯峨の竹
夕顔に干瓢むいて遊けり
朝露によごれて涼し瓜の土
瓜の皮むいたところや蓮台野
松すぎをほめてや風のかほる音
飯あふぐかかが馳走や夕涼
夏の夜や崩て明し冷し物
秋ちかき心の寄や四畳半
さざ波や風の薫の相拍子
湖やあつさをおしむ雲のみね
皿鉢もほのかに闇の宵涼み
ひらひらと挙る扇や雲の峯
蓮のかを目にかよはすや面の鼻
灌仏や皺手合する珠数の音
烏賊売の声まぎらはし杜宇
別ればや笠手に提て夏羽織
降ずとも竹植る日は蓑と笠
此宿は水鶏もしらぬ扉かな
紫陽草や帷巾時の薄浅黄
花と実と一度に瓜のさかりかな
ほととぎす今は俳諧師なき世哉
松風の落葉か水の音涼し
白芥子や時雨の花の咲つらん
月ぞしるべこなたへ入せ旅の宿
秋風の鑓戸の口やとがりごゑ
七夕のあはぬこころや雨中天
たんだすめ住めば都ぞけふの月
影は天の下てる姫か月のかほ
荻の声こや秋風の口うつし
寝たる萩や容顔無礼花の顔
かつら男すまずなりけり雨の月
女をと鹿や毛に毛がそろふて毛むつかし
見るに我もおれる計ぞ女郎花
見る影やまだ片なりも宵月夜
けふの今宵寝る時もなき月見哉
命こそ芋種よ又今日の月
文ならぬいろはもかきて火中哉
人毎の口に有也したもみぢ
町医師や屋敷がたより駒迎
針立や肩に槌うつから衣
武蔵野や一寸ほどな鹿の声
盃の下ゆく菊や朽木盆
詠るや江戸にはまれな山の月
秋来にけり耳をたづねて枕の風
唐秬や軒端の荻の取ちがへ
枝もろし緋唐紙やぶる秋の風
今宵の月麿出せ人見出雲守
木をきりて本口みるやけふの月
色付くや豆腐に落て薄紅葉
水学も乗物かさんあまの川
秋来ぬと妻こふ星や鹿の革
実や月間口千金の通り町
雨の日や世間の秋を堺町
はりぬきの猫もしる也今朝の秋
蒼海の浪酒臭しけふの月
盃や山路の菊と是を干す
見渡せば詠れば見れば須磨の秋
蜘何と音をなにと鳴秋の風
よるべをいつ一葉に虫の旅ねして
花むくげはだか童のかざし哉
夜密に虫は月下の栗を穿つ
かれ朶に烏とまりけり秋の暮
愚案ずるに冥途もかくや秋の暮
侘てすめ月侘斎がなら茶哥
芭蕉野分して盥に雨を聞夜哉
嘸な星ひじき物には鹿の革
武蔵野の月の若ばへや松嶌種
松なれや霧ゑいさゑいと引ほどに
あさがほに我は食くふおとこ哉
三日月や朝皃の夕べつぼむらん
月十四日今宵三十九の童部
髭風ヲ吹て暮秋歎ズルハ誰ガ子ゾ
野ざらしを心に風のしむ身哉
秋十とせ却て江戸を指故郷
霧しぐれ富士をみぬ日ぞ面白き
雲霧の暫時百景をつくしけり
猿を聞人捨子に秋の風いかに
道のべの木槿は馬にくはれけり
馬に寐て残夢月遠し茶のけぶり
みそか月なし千とせの杉を抱あらし
芋洗ふ女西行ならば哥よまむ
蘭の香やてふの翅にたき物す
蔦植て竹四五本のあらし哉
手にとらば消んなみだぞあつき秋の霜
わた弓や琵琶になぐさむ竹のおく
僧朝顔幾死かへる法の松
碪打て我にきかせよや坊が妻
露とくとく心みに浮世すすがばや
御廟年経て忍は何をしのぶ草
冬しらぬ宿やもみする音あられ
木の葉散桜は軽し檜き笠
義朝の心に似たり秋の風
秋風や藪も畠も不破の関
苔埋む蔦のうつつの念仏哉
しにもせぬ旅寝の果よ秋の暮
白菊よ白菊よ耻長髪よ長髪よ
ひれふりてめじかもよるや男鹿嶋
雲折をり人をやすむる月見哉
盃に三つの名をのむこよひかな
東にしあはれさひとつ秋の風
名月や池をめぐりて夜もすがら
もの一我がよはかろきひさご哉
あけゆくや二十七夜も三かの月
いなづまを手にとる闇の紙燭哉
蕣は下手のかくさへ哀也
月はやしこずゑはあめを持ながら
寺に寝て誠がほなる月見哉
此松のみばへせし代や神の秋
かりかけしたづらのつるやさとの秋
賤のこやいね摺かけて月をみる
いものはや月待つさとの焼ばたけ
萩原や一よはやどせ山のいぬ
蓑虫のおとを聞に来よ艸の庵
起あがる菊ほのか也水のあと
痩ながらわりなき菊のつぼみ哉
たびにあきてけふ幾日やら秋の風
あの雲は稲妻を待たより哉
何事の見たてにも似ず三かの月
よき家や雀よろこぶ背戸の粟
はつ穐や海も青田の一みどり
蓮池や折らで其まま玉まつり
刈あとや早稲かたがたの鴫の声
粟稗にとぼしくもあらず草の庵
かくさぬぞ宿は菜汁に唐がらし
見送りのうしろや寂びし秋の風
おくられつおくりつはては木曾の秋
送られつ別つ果は木曾の秋
草いろいろおのおの花の手柄かな
朝皃は酒盛しらぬさかりかな
ひよろひよろと猶露けしや女郎花
蔦の葉はむかしめきたる紅葉哉
棧やいのちをからむつたかづら
棧や先おもひいづ馬むかへ
あの中に蒔絵書たし宿の月
俤や姨ひとりなく月の友
いざよひもまださらしなの郡哉
身にしみて大根からし秋の風
木曾のとち浮世のひとのみやげ哉
よにおりし人にとらせん木曾のとち
月影や四門四宗も只一つ
吹とばす石はあさまの野分哉
吹落す石はあさまの野分哉
吹落すあさまは石の野分哉
吹颪あさまは石の野分哉
秋風や石吹颪すあさま山
いざよひのいづれか今朝に残る菊
十六夜の月を見はやせ残る菊
木曾の痩まだ直らぬに後の月
名月の出るや五十一ケ条
たびねして我句をしれや秋の風
よの中は稲かる頃か草の庵
手向けり芋ははちすに似たるとて
声すみて北斗にひびく砧哉
何ごともまねき果たるすすき哉
鶴鳴くや其声に芭蕉やれぬべし
其玉や羽黒にかへす法の月
一家に遊女も寐たり萩と月
文月や六日も常の夜には似ず
荒海や佐渡によこたふ天河
薬欄にいづれの花をくさ枕
わせの香や分入右は有ぞ海
あかあかと日は難面も秋の風
熊坂がゆかりやいつの玉まつり
秋すずし手毎にむけや瓜茄子
塚もうごけ我泣声は秋の風
しほらしき名や小松吹萩薄
ぬれて行や人もおかしきあめの萩
むざんやな甲の下のきりぎりす
山中や菊はたおらぬ湯の匂
桃の木の其葉ちらすな秋の風
いさり火にかじかや波の下むせび
湯の名残今宵は肌の寒からむ
けふよりや書付消さん笠の露
石山の石より白し秋の風
庭掃て出ばや寺にちる柳
物書て扇引さく名残哉
名月の見所問ん旅寐せむ
月見せよ玉江の蘆を刈ぬ先
あさむつや月見の旅の明ばなれ
あすの月雨占なはんひなの岳
月に名を包みかねてやいもの神
義仲に寝覚の山か月悲し
中山や越路も月はまた命
国ぐにの八景更に気比の月
月清し遊行のもてる砂の上
名月や北国日和定なき
月のみか雨に相撲もなかりけり
月いづく鐘は沈る海のそこ
ふるき名の角鹿や恋し秋の月
さびしさや須磨にかちたる浜の秋
波の間や小貝にまじる萩の塵
小萩ちれますほの小貝小盃
衣着て小貝拾はんいろの月
鳩の声身に入わたる岩戸哉
かくれ家や月と菊とに田三反
胡蝶にもならで秋ふる菜虫哉
其ままよ月もたのまじ伊吹山
こもり居て木の実艸のみひろはばや
はやくさけ九日も近し菊の花
藤の実は俳諧にせん花の跡
西行の草鞋もかかれ松の露
蛤のふたみに別行秋ぞ
月さびよ明智が妻の咄しせん
尊さに皆おしあひぬ御遷宮
秋の風伊勢の墓原猶すごし
硯かと拾ふやくぼき石の 露
門に入ればそてつに 蘭のにほひ哉
きくの露落て拾へばぬかごかな
枝ぶりの日ごとに替る芙蓉かな
茸狩やあぶなきことにゆふしぐれ
猪もともに吹るる野分かな
こちらむけ我もさびしき秋の暮
合歓の木の葉ごしもいとへ星のかげ
玉祭りけふも焼場のけぶり哉
蜻蜒やとりつきかねし草の上
白髪ぬく枕の下やきりぎりす
明月や座にうつくしき皃もなし
月しろや膝に手を置宵の宿
桐の木にうづら鳴なる塀の内
稲妻にさとらぬ人の貴さよ
草の戸をしれや穂蓼に唐がらし
病む鳫の夜さむに落て旅ね哉
海士の屋は小海老にまじるいとど哉
鴈聞に京の秋におもむかむ
朝茶のむ僧静也菊の花
折々は酢になるきくのさかなかな
てふも来て酢をすふ菊の鱠哉
初秋や畳ながらの蚊屋の夜着
秋海棠西瓜の色に咲にけり
乳麪の下たきたつる夜寒哉
荻の穂や頭をつかむ羅生門
牛部やに蚊の声闇き残暑哉
淋しさや釘にかけたるきりぎりす
三井寺の門たたかばやけふの月
秋のいろぬかみそつぼもなかりけり
米くるる友を今宵の月の客
やすやすと出ていざよふ月の雲
十六夜や海老煎る程の宵の闇
鎖あけて月さし入よ浮み堂
祖父親まごの栄や柿みかむ
名月はふたつ過ても瀬田の月
稲すずめ茶木畠や迯処
鷹の目も今や暮ぬと鳴うづら
草の戸や日暮てくれし菊の酒
蕎麦もみてけなりがらせよ野良の萩
橋桁のしのぶは月の名残哉
九たび起ても月の七つ哉
秋風のふけども青し栗のいが
秋風や桐に動てつたの霜
稲こきの姥もめでたし菊の花
七株の萩の千本や星の秋
三日月に地はおぼろ也蕎麦の花
芭蕉葉を柱にかけん庵の月
名月や門に指くる潮頭
なでしこの暑さわするる野菊かな
きりさめの空をふようの天気かな
青くても有べき物を唐辛子
秋に添て行ばや末は小枩川
行穐のなをたのもしや青蜜柑
初霜や菊冷初る腰の綿
高水に星も旅寝や岩の上
しら露もこぼさぬ萩のうねり哉
初茸やまだ日数へぬ秋の露
蕣や昼は錠おろす門の垣
蕣や是も又我が友ならず
なまぐさし小なぎが上の鮠の膓
夏かけて名月あつきすずみ哉
十六夜はわづかに闇の初哉
秋風に折て悲しき桑の杖
みしやその七日は墓の三日の月
入月の跡は机の四隅哉
老の名の有共しらで四十から
影待や菊の香のする豆腐串
菊の花咲や石屋の石の間
琴箱や古物店の背戸の菊
行秋のけしにせまりてかくれけり
いなづまやかほのところが薄の穂
ひやひやと壁をふまへて昼寐哉
道ほそし相撲とり草の花の露
たなばたや穐をさだむる夜のはじめ
家はみな杖にしら髪の墓参
数ならぬ身となおもひそ玉祭り
いなづまや闇の方行五位の声
風色やしどろに植し庭の萩
里ふりて柿の木もたぬ家もなし
名月に麓の霧や田のくもり
名月の花かと見へて棉畠
今宵誰よし野の月も十六里
まつ茸やしらぬ木の葉のへばりつく
蕎麦はまだ花でもてなす山路かな
新藁の出初てはやき時雨哉
行あきや手をひろげたる栗のいが
冬瓜やたがいにかはる顔の形
びいと啼く尻声悲し夜の鹿
菊の香やならには古き仏達
菊の香やならは幾代の男ぶり
菊の香にくらがり登る節句かな
菊に出て奈良と難波の宵月夜
猪の床にも入るやきりぎりす
升買て分別かはる月見かな
秋もはやばらつく雨に月の形
秋の夜を打崩したる咄かな
おもしろき秋の朝寐や亭主ぶり
此道や行人なしに秋の暮
松風や軒をめぐつて秋暮ぬ
此秋は何で年よる雲に鳥
しら菊の目に立てて見る塵もなし
月澄むや狐こはがる児の供
秋深き隣は何をする人ぞ
しばのとの月やそのままあみだ坊
むかしきけちちぶ殿さへすまふとり
猿引は猿の小袖をきぬた哉
み所のあれや野分の後の菊
鶏頭や鳫の来る時なをあかし
鬼灯は実も葉もからも紅葉哉
榎の実ちるむくの羽音や朝あらし
松茸やかぶれた程は松の形
月の鏡小春にみるや目正月
時雨をやもどかしがりて松の雪
しほれふすや世はさかさまの雪の竹
霜枯に咲は辛気の花野哉
霰まじる帷子雪はこもんかな
波の花と雪もや水にかえり花
成にけりなりにけり迄年の暮
行雲や犬の欠尿むらしぐれ
一時雨礫や降て小石川
霜を着て風を敷寝の捨子哉
富士の雪蘆生が夢をつかせたり
白炭やかの浦嶋が老の箱
あらなんともなやきのふは過てふくと汁
塩にしてもいざことづてん都鳥
わすれ草菜飯につまん年の暮
今朝の雪根深を薗の枝折哉
かなしまむや墨子芹焼を見ても猶
小野炭や手習ふ人の灰ぜせり
けし炭に薪わる音かをののおく
いづく霽傘を手にさげて帰る僧
草の戸に茶をこの葉かくあらし哉
櫓の声波ヲうつて腸氷ル夜やなみだ
雪の朝独り干鮭を噛得タリ
石枯て水しぼめるや冬もなし
貧山の釜霜に啼声寒し
氷苦く偃鼠が咽をうるほせり
くれくれて餅を木魂のわびね哉
世にふるもさらに宗祇のやどり哉
夜着は重し呉天に雪を見るあらん
あられきくやこの身はもとのふる柏
琵琶行の夜や三味線の音霰
宮守よわが名をちらせ木葉川
いかめしき音や霰の檜木笠
冬牡丹千鳥よ雪のほととぎす
明ぼのやしら魚しろきこと一寸
あそび来ぬふく釣かねて七里迄
鰒釣らん李陵七里の浪の雪
此海に草鞋すてん笠しぐれ
馬をさへながむる 雪の朝哉
しのぶさへ枯て餅かふやどり哉
かさもなき我をしぐるるかこは何と
狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉
草枕犬も時雨るかよるのこゑ
市人よ此笠うらふ雪の傘
雪と雪今宵師走の名月歟
海くれて 鴨のこゑほのかに白し
年暮ぬ笠きて草鞋はきながら
黒森をなにといふともけさの 雪
火を焚て今宵は屋根の霜消さん
めでたき人のかずにも入む老のくれ
水寒く寝入りかねたるかもめかな
瓶破るるよるの氷の寐覚哉
はつゆきや幸庵にまかりある
初雪や水仙のはのたはむまで
花皆枯て哀をこぼす草の種
月白き師走は子路が寝覚哉
酒のめばいとど寐られぬ夜の雪
きみ火をたけよき物見せん雪まろげ
年の市線香買に出ばやな
月雪とのさばりけらしとしの昏
旅人と我名よばれん初しぐれ
一尾根はしぐるる雲かふじのゆき
京まではまだ半空や雪の雲
星崎の闇を見よとや啼千鳥
寒けれど二人寐る夜ぞ頼もしき
ごを焼て手拭あぶる寒さ哉
冬の日や馬上に氷る影法師
ゆきや砂むまより落よ酒の酔
鷹一つ見付てうれしいらご崎
夢よりも現の鷹ぞ頼母しき
さればこそあれたきままの霜の宿
麦はえてよき隠家や畠村
梅つばき早咲ほめむ保美の里
先祝へ梅を心の冬籠り
面白し雪にやならん冬の雨
薬のむさらでも 霜の枕かな
磨なをす鏡も清し雪の花
ためつけて雪見にまかるかみこ哉
いざさらば雪見にころぶ所迄
箱根こす人も有らし今朝の雪
たび寐よし宿は師走の夕月夜
香を探る梅に蔵見る軒端哉
露凍て筆に汲干ス清水哉
旅寐してみしやうき世の煤はらひ
旧里や臍の緒に泣くとしの暮
其かたち見ばや枯木の杖の長
菊鶏頭きり尽しけり御命講
冬籠りまたよりそはん此はしら
五つむつ茶の子にならぶ囲炉裏哉
被き伏蒲団や寒き夜やすごき
埋火もきゆやなみだの烹る音
二人見し雪は今年も降けるか
米買に雪の袋や投頭巾
さしこもる葎の友かふゆなうり
皆拝め二見の七五三をとしの暮
初しぐれ猿も小蓑をほしげ也
人々をしぐれよやどは寒くとも
冬庭や月もいとなるむしの吟
雪の中に兎の皮の髭作れ
いざ子ども走ありかむ玉霰
初雪やいつ大仏の柱立
山城へ井出の駕籠かるしぐれ哉
長嘯の墓もめぐるかはち敲
少将のあまの咄や志賀の雪
これや世の煤にそまらぬ古合子
あられせば網代の氷魚を煮て出さん
何に此師走の市にゆくからす
しぐるるや田の新株の黒むほど
きりぎりすわすれ音になくこたつ哉
はつ雪や聖小僧の笈の色
霜の後撫子さける火桶哉
雪ちるや穂屋の薄の刈残し
節季候の来れば風雅も師走哉
住つかぬ旅のこころや置火燵
煤掃は杉の木の間の嵐哉
干鮭も空也の痩せも寒の内
千鳥立更行初夜の日枝おろし
半日は神を友にや年忘れ
三尺の山も嵐の木の葉哉
石山の石にたばしるあられ哉
比良みかみ雪指シわたせ鷺の橋
ひごろにくき烏も 雪の朝哉
かくれけり師走の海のかいつぶり
こがらしや頬腫痛む人の顔
貴さや雪降ぬ日も蓑と笠
納豆きる音しばしまて鉢叩
人に家をかはせて我は年忘れ
たふとがる涙やそめてちる紅葉
百歳の気色を庭の落葉哉
作りなす庭をいさむるしぐれかな
葱白く洗ひたてたるさむさ哉
折々に伊吹をみては冬ごもり
凩に匂ひやつけし帰花
水仙や白き障子のとも移り
其にほひ桃より白し水仙花
京にあきて此木がらしや冬住ゐ
雪をまつ上戸の皃やいなびかり
木枯に岩吹とがる杉間かな
夜着ひとつ祈出して旅寝かな
宿かりて名を名乗らするしぐれ哉
馬かたはしらじしぐれの大井川
都いでて神も旅の日数哉
ともかくもならでや雪のかれお花
留主のまに荒れたる神の落葉哉
葛の葉の面見せけり今朝の霜
鴈さはぐ鳥羽の田づらや寒の雨
魚鳥の心はしらず年わすれ
けふばかり人も年よれ初時雨
口切に境の庭ぞなつかしき
炉開きや左官老行鬢の霜
塩鯛の歯ぐきも寒し魚の店
御命講や油のやうな酒五升
庭にきて雪を忘るる箒哉
埋火や壁には客の影ぼうし
月花の愚に針たてん寒の入
打よりて花入探れんめつばき
中々に心おかしき臘月哉
はまぐりのいけるかひあれとしのくれ
節季候を雀のわらふ出立かな
金屏の松の古さよ冬籠
難波津や田螺の蓋も冬ごもり
月やその鉢木の日のした面
寒菊や醴造る窓の前
寒菊や粉糠のかかる臼の端
一露もこぼさぬ菊の氷かな
けごろもにつつみてぬくし鴨の足
もののふの大根苦きはなし哉
鞍壺に小坊主乗るや大根引
振売の鳫あはれ也ゑびす講
ゑびす講酢売りに袴着せにけり
芹焼やすそわの田井の初氷
初雪やかけかかりたる橋の上
いきながら一つに冰る海鼠哉
みな出て橋をいただく霜路哉
煤はきは己が棚つる大工かな
ありあけも三十日にちかし餅の音
盗人に逢ふたよも有年のくれ
初時雨初の字を我時雨哉
袖の色よごれて寒しこいねづみ
分別の底たたきけり年の昏
古法眼出どころあはれ年の暮
かりて寐む案山子の袖や夜半の霜
夜すがらや竹こほらするけさのしも
おさな名やしらぬ翁の丸頭巾
須磨の浦の年取ものや柴一把
雑水に琵琶きく軒の 霰哉
うとまるる身は梶原か厄払
木枯やたけにかくれてしづまりぬ
せつかれて年忘するきげんかな
明ぼのやしら魚白きこと一寸
衰や歯に喰ひあてし海苔の砂
紅梅や見ぬ恋つくる玉すだれ
鶯や茶袋かゝる庵の垣
草の戸も住替る代ぞ雛の家
涅槃会や皺手合する珠数の音
雲と隔つ友にや雁の生きわかれ
父母のしきりに恋し雉子の声
雲雀より上にやすらふ峠かな
春雨や蜂の巣つたふ屋根の漏
物の名を先とふ荻の若葉かな
種芋や花のさかりを売りありく
落ざまに水こぼしけり椿かな
雪間より薄紫の芽独活かな
春なれや名もなき山の朝がすみ
かれ芝やややかげろふの一二寸
よく見れば薺花さく垣ねかな
入あひのかねもきこえずはるのくれ
傘に押分見たるやなぎかな
さまざまの事おもひ出す桜かな
青柳の泥にしだるゝ潮干かな
灌仏の日に生れあふ鹿の子かな
古巣ただあはれなるべき隣かな
ほろほろと山吹ちるか瀧の音
古池や蛙飛こむ水の音
行春や鳥啼き魚の目は泪
行春を近江の人とをしみける
この山のかなしさ告げよ野老掘
うらやましうき世の北の山桜
一里はみな花守りの子孫かな
峯入や一里をくるゝ小山伏
奈良七重七堂伽藍八重桜
世の夏や湖水にうかむ浪の上
ひとつ脱で後におひぬ衣がへ
あやめ草足にむすばん草履の緒
笈も太刀も五月にかざれ紙幟
二股にわかれ初けり鹿の角
若葉して御目の雫ぬぐはゞや
清瀧や波に散込む青松葉
やどりせむ藜の杖になる日まで
いざ共に穂麦食らはん草枕
六月や峰に雲置くあらし山
笠しまはいづこ五月のぬかり道
かきつばた似たりや似たり水の影
短夜や駅路の鈴の耳につく
又越む佐夜の中山はつ松魚
駿河路や花橘も茶の匂ひ
柚の花やむかししのばん料理の間
きのふけふ樗に曇る山路かな
行末は誰肌ふれむ紅の花
五月雨をあつめて早し最上川
這出よかひ屋が下の蟾の声
ふらずとも竹植る日は蓑と笠
早苗とる手もとや昔忍ぶずり
昼見れば首筋赤きほたるかな
蛍見や船頭酔ておぼつかな
五月雨に鳰の浮巣を見に行かむ
おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな
うき人の旅にも習へ木曽の蠅
蚤虱馬の尿するまくらもと
鶯や竹の子藪に老を鳴く
京に居て京なつかしや時鳥
うき我をさびしがらせよかんこ鳥
先たのむ椎の木もあり夏木立
あらたおうと青葉若葉の日の光
此宿は水鶏も知らぬ扉かな
蛤の口しめてゐる暑さかな
象潟や雨に西施が合歓花
山も庭もうごき入るゝや夏座敷
夏来てもたゞ一ツ葉のひとつかな
此あたり目に見ゆるものみなすゞし
夏の夜や崩れて明けし冷し物
夏の月御油より出て赤坂や
初真桑四ツにやわらん輪にやせむ
水の奥氷室尋ぬる柳かな
しづかさや岩にしみ入る蝉の声
なき人の小袖も今や土用干
水無月や鯛はあれども塩鯨
語られぬ湯殿にぬらす袂かな
刈かけし田面ラの鶴や里の秋
我宿の淋しさ思へ桐一葉
荒海や佐渡に横たふ天の川
家は皆杖に白髪の墓参り
道のべの木槿は馬に喰はれけり
朝顔は酒盛しらぬさかりかな
芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな
吹飛ばす石は浅間の野分かな
ひよろ/\と猶露けしや女郎花
一つ家に遊女も寝たり萩と月
海士の屋は小海老にまじるいとどかな
尊さに皆押あひぬ御遷宮
馬に寝て残夢月遠し茶の煙
名月や門へさしくる潮頭
賤の子や稲摺りかけて月を見る
やす/\と出ていさよふ月の雲
早稲の香や分入る右は有磯海
かれ枝に烏のとまりけり秋の暮
初茸やまだ日数経ぬ秋の露
稲雀茶の木畠や逃どころ
桐の木に鶉鳴なる塀の内
里古りて柿の木持たぬ家もなし
冬瓜やたがひにかはる顔の形
草の戸に日暮てくれし菊の酒
菊の香や奈良には古き仏達
蝶も来て酢を吸ふ菊の酢和へかな
きぬたうちて我にきかせよ坊がつま
野ざらしを心に風のしむ身かな
籠り居て木の実草の実拾はゞや
椎拾ふ横河の児の暇かな
庭掃て出るや寺に散る柳
秋の色糠味噌壺も無かりけり
老の名のありともしらで四十雀
御廟年経てしのぶは何をしのぶ草
江鮭ありもやすらん富士の湖
なまぐさし水葱が上の鮠の腸
桃弓や琵琶に慰さむ竹の奥
留守のまにあれたる神の落葉かな
旅人と我名よばれん初霎
刈あとやものに紛れぬ蕎麦の茎
鷹一つ見つけてうれし伊良古崎
海くれて鴨の声ほのかに白し
初雪や水仙の葉の撓むまで
葱白くあらひたてたるさむさかな
あら何ともなやきのふは過ぎてふぐと汁
冬ごもり又よりそはむ此はしら
埋火や壁には客の影法師
硯このむ奈良の法師が炬燵かな
住つかぬ旅のこゝろや置炬燵
夜着ひとつ折り出だして旅寝かな
たび寝よし宿は師走の夕月夜
うか/\と年よる人やふる暦
年の市線香買に出ばやかな
人に家をかはせて我は年忘
ふる里や臍の緒になくとしの暮
乾鮭も空也の痩も寒の内
箱根こす人もあるらし今朝の雪
いざゆかん雪見にころぶ所まで
君火をたけよきもの見せむ雪まろげ
瓶わるゝ夜の氷のねざめかな
しのぶさへ枯れて餅買ふ宿りかな
冬の庭月もいとなる虫の吟
振売の雁あはれ也えびす講
節季候の来れば風雅も師走から
春や来し年や行きけん小晦日
春やこし年や行けん小晦日
しのぶさへ枯れて餅かふやどり哉
元日に田ごとの日こそこひしけれ
蓬莱に聞ばや伊勢の初便
此山のかなしさ告よ野老掘
野畠や雁追いのけて摘若菜
正月も美濃と近江や閏月
誰やらが形に似たり今朝の春
posted by koinu at 10:00| 東京 ☀| 観測 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする