2021年01月21日
ポストコロナ期を生きるきみたちへ (犀の教室)
『ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)の理論』
世に蔓延る「ブルシット・ジョブ」の存在を明らかにすると共に、人類学的見地から「仕事」そのものを捉えなおした刺激的な書物である。
「本人でさえ正当化できないくらい完全に無意味・不必要で有害でもある有償の雇用の形態であるが、本人はそうではないと取り繕わなければならないように感じている仕事」
・ブルシット・ジョブの種類
1 フランキー(取り巻き)の仕事
だれかを偉そうに見せるだけの仕事。ドアマンやお飾りのアシスタントなど。
2 グーン(脅し屋)の仕事
他人を操ろうとしたり脅しをかけたりする仕事。ロビイストや企業の顧問弁護士、コールセンターの従業員や、他人を不安にさせた後に商品を売り込むようなマーケターなど。
3 ダクト・テーパー(尻ぬぐい)の仕事
組織に欠陥が存在するために、その欠陥を解決するためだけにある仕事。一部のソフトウェア開発者など、その気になれば簡単なシステムの見直しで解決できる問題を場当たり的に解決するためだけに雇われた人。
4 ボックス・ティッカー(書類穴埋め人)の仕事
ある組織が実際にはやってないことをやってると主張するための書類を作るだけの仕事。誰も読まないプレゼン資料や報告書などの書類を作ることに業務の大半を割かれるオフィスワーカーなど。
5 タスクマスター(ブルシット・ジョブ量産人)の仕事
もっぱら他人へ仕事を振り分けるだけの仕事。また、ブルシットな業務をつくったり、ブルシット・ジョブを監督する仕事。一部の中間管理職など。
『ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)の理論』David Graeber(岩波書店)より
意味のない仕事は其れに従事する人を惨めな気持ちにさせるだけでなく、時には脳に損傷を起こすほどのダメージを与える。
自分の行動が何かに影響を与えて結果が得られる広い意味での「仕事」に根源的な悦びを感じるように出来ている。ブルシット・ジョブは人からその喜びを取り上げる精神的暴力となる。
社会的価値の低いブルシット・ジョブが高給であったりする一方で、社会的価値の高いエッセンシャルワーカーの給料が低い問題もある。奇妙なことに、労働の社会的価値が高まるほどその仕事の経済的価値が下がっている現象がある。
「資本主義は想像力の飛躍を封じ込める。しかもそれはネオリベラリズムの段階に至ってからそうなったのではなく、資本主義がもともと持つ性格に想像力やイノベーションに対し阻害的に作用する性格がある」
「本人でさえ正当化できないくらい完全に無意味・不必要で有害でもある有償の雇用の形態であるが、本人はそうではないと取り繕わなければならないように感じている仕事」が増え続けている社会を考えよう。