事件は科学者スタンガルソン教授と令嬢が住む城の離れの一室で起きた。内側から施錠された完全な密室《黄色い部屋》で令嬢マティルドが襲われ、血の海に倒れていたのだ。襲撃者はどこに消えたのか? そして再び起きた怪事件。謎に挑むのは18歳の新聞記者ルルタビーユとパリ警視庁警部ラルサンの二人。
密室ミステリ必読書中の必読書にジャン・コクトーの序文を付した新訳決定版。訳者あとがき=平岡敦/解説=戸川安宣
《創元推理文庫 370ページ初版2020年6月30日》
『黄色い部屋の秘密』ガストン・ルルー
【カーを、クリスティーを、そして乱歩を瞠目させた密室ミステリの最高傑作! 】
真夜中、令嬢の寝室から助けを求める悲鳴と銃声が響いた。居合わせた父親らがただ一つの扉を打ち破って部屋に入ると、令嬢は昏倒し、部屋は荒らされ、黄色の壁紙には大きな血染めの手形が残されている! だが部屋は完全な密室で、犯人の姿はどこにもなかったのだ!
18歳の少年記者ルールタビーユが、この怪事件に挑む! 密室ものの嚆矢として、常にオールタイムベストの上位に名を連ねる名作中の名作ミステリが、最新訳でここに登場。
【早川書房; 新訳版(2015/10/22)】
『黒衣婦人の香り』ガストン・ルルー
忌まわしき『黄色い部屋の謎』の事件から2年ほどあと、青年記者ルールタビーユは再び悪夢のような事件に巻きこまれる。こたびの舞台は、南仏海岸に偉容を誇る古城〈ヘラクレス砦〉。相次いで事件を起こし、美しきマチルドをはじめ、砦の滞在客をおびやかすのは、神出鬼没のバルメイエなのか。前作で明かされなかった〈黒衣婦人の香り〉の秘密がヴェールを脱ぐ、ファン必読の書。
「そうだ、そうだ、それはメランコリーに満ちた匂い、ひそかな悲しみのための香りなのだ。打ちすてられ、ただひとり自分だけのために花咲くように運命づけられた植物の、孤独で、ひそかで、まったく独特な香りのような何物かだ。この香りこそは、わたしに以上のことを考えさせたのであり、また、あとになって、わたしはそう解釈しようとしたのだ。」(192ページ)
《ガストン・ルルー》1868年パリ生まれ。パリ大学卒。『ル・マタン』紙の海外特派員となりヨーロッパや中東を飛び回っていたが、1904年にデビュー長編La Double Vie de Théophraste Longuetを発表し、職業作家に転じる。古風で波瀾万丈な物語を紡ぎだして大変な評判をとり、1907年に発表された『黄色い部屋の謎』は密室ミステリの歴史的名作として名高い。他の著作に『オペラ座の怪人』『黒衣婦人の香り』『ガストン・ルルーの恐怖夜話』などがある。1927年没。