2020年09月11日

映画『セノーテ』9月19日から全国公開

映画『セノーテ』919日から全国順次公開。


「鉱 ARAGANE」で長編デビューを飾り、世界に羽ばたく若い才能のために2020年に設立された大島渚賞の第1回受賞者となった小田香監督が、メキシコ・ユカタン半島洞窟内にある泉セノーテの神秘を追ったドキュメンタリー「セノーテ」の予告編。

https://youtu.be/3jyuu6XqrW8


洞窟内をとらえた幻想的な映像と、マヤ文明をルーツにもつ人々の姿が撮影されている。

映画評論家・蓮實重彦は「生け贄として何人もの少女が投げこまれたという神話的な泉の底を、一瞬も動くことをやめぬキャメラが奥深くまで探ってみても、彼岸への通路かもしれない薄ぐらい拡がりが見えてくるばかりだ。 その緩やかなリズムを不意に立ちきる固定キャメラが、えもいわれぬほど素晴らしい何人もの男女の顔を画面に浮きあがらせる。この転調をもっと見てみたい。まぎれもない傑作なのだから」と称える。

大島渚賞・審査委員長の音楽家・坂本龍一は「500年前に葬られたマヤ文明の洞窟湖から、人々の苦難の声が聞こえてくる。前作『鉱 ARAGANE』をしのぐ傑作『セノーテ』、ぜひ多くの人に観てほしい」とコメントをした。


http://aragane-film.info/cenote/


メキシコのユカタン半島北部。その地に点在するセノーテと呼ばれる洞窟内の泉は、マヤ文明の時代唯一の水源で、雨乞いの儀式のために生け贄が捧げられた場所でもあった。この泉の近辺には現在もマヤにルーツを持つ人びとが生活している。マヤの人たちによって伝えられてきた精霊の声やマヤ演劇のセリフテキスト、そして水中と地上を浮遊する映像から、現世と黄泉の世界を結ぶと信じられていたセノーテをめぐる人びとの過去と現在の記憶が紡がれていく。


映画『セノーテ』919日から、新宿K‘s cinemaほか、全国順次公開。

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『虚像のエコー』トーマス・M・ディッシュ (早川文庫)ECHO ROUND HIS BONES

 物質瞬間転移機というバーナード・パノフスキー博士による発明は、輸送や軍事などの様相を一変させてしまう。最初に再現装置を現地に設置すれば、月面も火星も物資や人員を一瞬で送り込めた。

月面開発でソ連に遅れていたアメリカ政府は、この装置によって火星に一大軍事基地を築きいて、核ミサイルを集結させる。軍縮条約によって地球上での核兵器保持が禁止されて、核兵器は貯蔵場所が変更されるだけで、世界平和は危ういバランスの脅威にあった。

戦闘兵器と肉弾の闘いはベトナム戦争を最後に地上から姿を消してたが、もしも次に勃発すれば人類の終焉を告げる。


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 アメリカ陸軍大尉ネーサン・ハンサードは、火星基地のピットマン将軍に機密の命令書を届けるため、火星基地に駐屯する25人の部下と共に、転移機で火星へ向かう。ピットマン将軍に届いたのは、別命がない限り6週間後に火星基地に備蓄された全ての核ミサイルをソ連に向けて発射せよという命令書だった。


 火星に到着した時へ、地球の送り出しした転移機の内部に、もう一人のハンサードが出現する。転移機固有のエコー効果から、反射されたハンサードが実体化したのだ。実体化してもエコーである存在は、人類にとっては存在しない同様でコンタクトはできない。一般人間が飲み食いする水や食物、呼吸する空気すら、エコーにとっては意味はない。エコーが生き延びるには、転移機の作動によって反射されてきたエコーの水や空気を摂取しなければならない。そのためエコーとして出現した人々は長生きできない。

ハンサードと共に火星からエコーとして戻って来た部下たちは、最も入手しにくい食料を手に入れるために、エコー同士で殺し合いを行ってしまう。


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 潔癖なハンサードは他のエコーたちの行動に同調できず、部下のワーソウ曹長に殺されそうになり逃れると、絶望してニューヨークを彷徨う。

そんな状況のなかで、話しかけてきた若い女性はブリジェッタと名乗る。転移機の発明者パノフスキー博士の妻のエコーであった。そしてハンサードはパノフスキー博士のエコーや、その妻のエコーが複数人で共同で暮らしている家へ行くことになる。彼らはエコー効果の存在を理論的に察知した、生身のパノフスキー博士が送り込んでくれるエコーの食料や水、空気を得ながら、哲学的な生活を送っている。

ハンサードが持っていた機密の命令書の内容を知った一同は、世界の破滅を阻止しようと苦慮するが、生身のパノフスキーや有力者にコンタクトする術はなく、運命の日は迫っていた。ふとしたことから生身の人間の精神と同調する手段を思いついたハンサードは、火星に転移して生身のハンサードに夢で連絡を付けて、ピットマンが核ミサイルの発射ボタンを押すのを妨害させた。そして地球ではパノフスキーのエコーたちが、壮大でハッピーな回避策を実行に移そうとしているのだった。

(早川書房)

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トーマス・M・ディッシュ(Disch, Thomas M. )アメリカ合衆国籍、1940/2/2〜アイオワ州デモイン生まれ。SF作家、詩人、評論家。1980年にジョン・W・キャンベル記念賞、1999年にヒューゴー賞関連書籍部門を受賞。星雲賞海外短編部門を二度受賞。

posted by koinu at 10:15| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする