2020年05月11日

ビリー・ワイルダーの名言

朝起きるときにわくわくするような夢を持つこと。」 
「真実を他人に伝えるならば面白おかしくすること。 さもないととんでもないことになる。」 
「本能に正直に。

間違ったっていいんですから。」


「人はハッピーな時に

最高の仕事が出来る。


ビリー・ワイルダー

(Billy Wilder/1906622-2002327)

アメリカの映画監督、脚本家、プロデューサー。本名はザムエル・ヴィルダー(Samuel Wilder)。オーストリア=ハンガリー帝国ズーハ出身(国籍はオーストリア/アメリカ)

50年以上に渡って映画界で活躍した映画監督で60本を超える作品に携わった。三谷幸喜が尊敬する人物。

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『七年目の浮気』(The Seven Year Itch) BSプレミアム本日午後放送。

1955年のアメリカ合衆国のコメディ映画。ビリー・ワイルダー監督。20世紀フォックス製作。

ジョージ・アクセルロッドのブロードウェイ舞台劇を脚色(ビリー・ワイルダーとの共同脚本)で映画化。

マリリン・モンローが地下鉄の通気口に立って、白いスカートが浮き上がるシーンは映画史上に残る話題になったシーン。

主演トム・イーウェルは1956年、ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。

https://youtu.be/fJgC549mpRk


<キャスト&スタッフ> 
娘…マリリン・モンロー 
リチャード・シャーマン…トム・イーウェル 
ヘレン・シャーマン…イブリン・キーズ 
トム・マッケンジー…ソニー・タフツ 
クルフリク…ロバート・ストラウス 
L・ブルベイカー博士…オスカー・ホモルカ 

監督・製作・脚色:ビリー・ワイルダー 
製作:チャールズ・K・フェルドマン 
脚色・原作:ジョージ・アクセルロッド 
撮影:ミルトン・クラスナー 
音楽:アルフレッド・ニューマン 


マンハッタン島のマンハッタン族は暑くなると、女や子どもたちが涼しいところに出かけ男は島に残る。

500年後、ニューヨークの三文小説の出版社に勤める中年リチャードは、妻と息子がバカンスに出かけて、一人アパートに戻る。偶然に上階に部屋主カウフマンの避暑旅行の留守期間だけ住みこんだ若いブロンド美女が間借りしてると知る。上から植木鉢が落ちて相手が美女だと知り、家に招待する。

暑すぎて冷蔵庫に下着を冷やしているという。ムード音楽はストラヴィンスキーは前衛的すぎて、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番に決まる。

テレビCM「ピカピカ歯磨きアワー」に出演している女性に浮気心がうずく。恋愛に対する想像力がたくましく、リチャードは彼女との関係を妄想する。

砂糖の入っていないマティーニはダメで、誕生日に一人で買った高級シャンペンとポテトチップスを持ってきて、シャンペンに浸すと美味しい。

USカメラに載った写真も家にあった。クラシックは分からないけど、「チョプスティック」(Chopsticks)を連弾して、キスをしようとして正気に戻る。

翌朝出社したシャーマンに社長は「若い男の欲望と破滅の物語」『ドリアン・グレイの肖像』を25セントで出そうという。ブルベイカー博士の原稿を読むと、結婚7年目の男の浮気心を「7年越しのうずき(itch)」と説明している。自分も結婚7年目なので痛く良心を責められて、ブルベイカー博士の所に行く。本の打合せをして、妄想が加速してるのが指の痙攣から知れる。

妻に電話をかけると、作家マッケンジーとドライヴに出かけたらしい。アパートに戻ったシャーマンは、階上の娘を誘って冷房完備の映画館に『大アマゾンの半魚人』(1954年)を観に行く。

娘の感想は「あの怪物がかわいそう」「愛に飢えているのよ」という。娘は地下鉄の風でスカートがまくれるが、Delicious!と叫んで涼しさを楽しむ。

明日はテレビがあるが、「"彼は気づかないキスしたってオーケーよせよ」と証明するとキスする。

カウフマンの部屋はクーラーがなく、暑くて3日も眠れない。管理人が絨毯を取替えに来たので、誤解されると思い、一緒に追い返す。

だが2階との使ってない階段から娘が降りてくる。娘を寝室に寝かせ、シャーマンは居間で一夜を明かすのだった。

翌朝、再びノイローゼ的妄想に教われたシャーマンに、娘は昨夜の御礼のキスをする。そこへマッケンジーが突然訪ねてきた。妄想が肥大になって殴ってしまい、管理人に運ばせて息子のためにパドルを持って避暑地へ急ぐのである。

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2020年05月09日

『エレンディラ』小説と映画

『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語 』ガルシア マルケス  

 ノーベル文学賞作家 ガルシア マルケスの中編小説で、文庫本に収録されている。


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厳しい祖母と屋敷に住む純粋無垢なエレンディラの寓話。祖母の厳しいしつけと家事に追われる日々のエレンディラ。

立ったまま寝る事が普通にできるくらい疲れて、燭台を倒して住んでいた屋敷は燃え尽くしてしまう。

腹を立てた祖母は、エレンディラへ罪を償わせる。体を売らせて百万ペソ以上の損害を取り返せと、祖母には逆らわないエレンディラは体を毎日の様に売り続ける 。そんなテントには行列ができるまでになってしまう。

若い純朴な少年と出会うい、恋仲になるがエレンディラはテントに人が集まらなくなれば、また土地を移動して歩くので、ウリセス少年とはやがて会えなくなる。

程なくして未成年に体を売らせるとは何事か、と修道僧に目をつけられる。エレンディラは修道僧に連れ去られて、祖母と離れ修道院にかくまわれる。体を売り続ける毎日から離れた生活に、エレンディラは「わたし、しあわせだわ」 と自然と口にする。

だが祖母が色々と手を尽くして、エレンディラに会いに行くと、結局また祖母と一緒に暮らすことを選ぶ。

また体を売る過酷な日々に逆戻り。

いつかの少年ウリセスは、エレンディラを諦めきれず、居場所を探し来る。

エレンディラは祖母を殺す勇気があるかといい、私は家族だから無理だけどと付け加える。

ウリセスは「君のためならなんでもやるよ」と 行動に移した。まずケーキに毒を混ぜるが、祖母には全く効かない。

エレンディラは「あんたは満足に人も殺せないのね」とウリセスに冷たくいう。

次は家の中のピアノに爆弾を仕込んだが、大爆発は起こらず祖母は相変わらずだ。

ついにウリセスは肉包丁を持ち、祖母を切り殺す。その時、祖母から吹き出したのは緑色の血だった。


祖母の着ていた金の延べ棒のチョッキを手にして、エレンディラは走り出す。ウリセスが必死に呼びかけるが、全く聞こえていないようで、返事もせず 延々と走り去っていくのだった。


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https://youtu.be/wpXSlNLw0lo

映画『ERÉNDIRA エレンディラ』

ルイゲラ監督の1983年のドラマ映画。映画の脚本はガブリエルガルシアマルケスによって書かれたコメディ作品。オリジナルの脚本は1972年に出版された彼の小説 『無敵のエレンディラと彼女の無慈悲な祖母の信じられないほどの悲しい物語』の前に執筆されてる。

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ガルシア=マルケス『百年の孤独』鼓直訳(新潮社)

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『百年の孤独』(Cien Años de Soledad)ガルシア=マルケス

ガブリエル・ガルシア=マルケスの代表的な長編小説。初版は1967年に出版、日本語版は1972年に新潮社から刊行。学生の頃の愛読書を外出規制の期間に再読する。


「長い歳月が流れて銃殺隊の前に立つはめになったとき、恐らくアウレリャノ・ブエンディア大佐は、父親のお供をして初めて氷というものを見た、あの遠い日の午後を思い出したにちがいない。」

ガルシア=マルケス『百年の孤独』鼓直訳(新潮社)より


ホセ・アルカディオ・ブエンディアとウルスラ・イグアランを始祖となる、ブエンディア一族が蜃気楼の村マコンドを創設して隆盛を迎えて、滅亡するまでの100年間が舞台となる。


コロンビアのリオアチャにあるコミュニティでは、近い血縁での婚姻が続いて、豚の尻尾が生えた奇形児が生まれてしまう。それを見てウルスラは性行為を拒否するが、それで馬鹿にされてウルスラの又従兄弟で夫のホセ・アルカディオは彼女を馬鹿にした男を殺してしまうのだった。

だが殺された男がホセとウルスラの前に現れ続けて、夫妻は故郷を離れてジャングル放浪の果て、新しい住処「マコンド」を開拓するに至る。

ウルスラは「豚のしっぽ」が生まれないように、婚姻の相手は血の繋がりのない相手に限定する家訓を残した。

様々な人間模様や紆余曲折がありつつも、「マコンド」は繁栄したが、ウルスラの残した家訓は玄孫の代に叔母と甥の恋愛結婚で破られ、「マコンド」は衰退と滅亡へと向かっていくのであった。



各章での構成

【1章】

ジプシーのメルキアデス。錬金術にハマるホセ・アルカディオ・ブエンディア。遠征の結果、マコンドが半島であることを発見するホセ・アルカディオ・ブエンディア。新手のジプシーたち。メルキアデスの死。


【2章】

マコンドの成り立ち(豚のしっぽを持つ子供が生まれることを恐れて、結婚を反対されるホセ・アルカディオ・ブエンディアとウルスラ。ホセ・アルカディオ・ブエンディアに殺され、幽霊となってあらわれるプルデンシオ・アギラル。村を出て、マコンドを建設するホセ・アルカディオ・ブエンディアたち)。ピラル・テルネラを孕ませ、村を出るホセ・アルカディオ。ウルスラが近くの村を発見。


【3章】

ピラル・テルネラからアルカディオを引き取る。発展するマコンド。ウルスラのまたいとこと称されるレベーカが来る。伝染性の不眠症と物忘れ。メルキアデスが戻ってくる(銀版写真術)。アウレリャノの初体験失敗。家の増築。町長モスコテ。


【4章】

自動ピアノ技師ピエトロ・クレスピとレベーカの恋。アウレリャノの、レメディオスへの恋(→婚約)。ピラル・テルネラと寝るアウレリャノ(→妊娠)。

アマランタのピエトロ・クレスピへの片思い。メルキアデスの死。発狂して栗の木に縛りつけられるホセ・アルカディオ・ブエンディア。


【5章】

アウレリャノとレメディオスの結婚。ピエトロ・クレスピとレベーカの結婚式の延期。教会建設のため、チョコレートの力で空中浮遊して、喜捨を求めるニカルノ・レイナ神父。レメディオスの死。ピラル・テルネラとアウレリャノの子、アウレリャノ・ホセが生まれる。

ホセ・アルカディオの帰還、レベーカとの結婚。保守党と自由党の戦争。アウレリャノがテロリストになる(アウレリャノ・ブエンディア大佐となる)。



【6章】

残忍な支配者となるアルカディオ。アマランタに結婚を断られ自殺するピエトロ・クレスピ。自らの意思でやけどを負い、死ぬまで繃帯をほどこうとしなかったアマランタ。サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダと2人の子供(→双子だったので3人の子供)を作るアルカディオ。自由党の敗北。アルカディオの処刑。


【7章】

銃殺をまぬがれるアウレリャノ・ブエンディア大佐。ホセ・アルカディオが不思議な死をとげる。家に閉じこもるレベーカ。ヘリネルド・マルケス大佐に町を任せ、町を出るアウレリャノ・ブエンディア大佐。ホセ・アルカディオ・ブエンディアの死。


【8章】

アウレリャノ・ホセとアマランタの許されぬ情事。アウレリャノ・ブエンディア大佐とともに町を出る、ヘリネルド・マルケス大佐とアウレリャノ・ホセ。

マコンドの町長となり手腕を発揮する、保守党のモンカダ将軍(マコンドが市へと昇格)。アウレリャノ・ブエンディア大佐が戦場で産ませた17人の子供。保守党によって殺されるアウレリャノ・ホセ。マコンドを奪還し、モンカダ将軍を銃殺するアウレリャノ・ブエンディア大佐。


【9章】

アマランタに癒やしを求めるが、求婚を断られるヘリネルド・マルケス大佐。戦争に疲れ、はなはだしい無力感にとりつかれ、マコンドに帰るアウレリャノ・ブエンディア大佐。


【10章】

瓜二つの双子、ホセ・アルカディオ・セグンドとアウレリャノ・セグンド。メルキアデスが遺した本と手書きの草稿(「百年たたないうちは、誰もその意味を知るわけにはいかない」とメルキアデス)。神父のもとで軍鶏の世話をするホセ・アルカディオ・セグンド。アコーディオンの名手となるアウレリャノ・セグンド。アウレリャノ・セグンドの長男をお坊さんに育てる決心をするウルスラ。ペトラ・コテスの不思議な力で家畜がやたらと仔を産む。魚の金細工を作る仕事に没頭するアウレリャノ・ブエンディア大佐。空前の好景気。マコンドの川を整備し、筏を停泊させるホセ・アルカディオ・セグンド。信じがたいほどの美貌の、小町娘のレメディオス。カーニバルで起きたパニック。カーニバルの女王、フェルナンダ・デル=カルピオと結婚するアウレリャノ・セグンド。


【11章】

「いずれ女王になる」といわれて育った、フェルナンダ。フェルナンダとの結婚後もペトラ・コテスとの愛人関係を続けるアウレリャノ・セグンド。表彰を拒否するアウレリャノ・ブエンディア大佐。集まった17人の大佐の息子たち(消えない額の十字)。崩れかけた家で生き続けていたレベーカ。アウレリャノ・トリステがマコンドに鉄道を引く。


【12章】

マコンドにやってきた新発明(電球、活動写真、円筒式蓄音機、電話、鉄道)、新しい人々、バナナ会社。小町娘のレメディオスの信じがたいほどの美貌、シーツに抱かれて空へと姿を消す。

次々と殺される、灰の十字を持つ17人の大佐の息子たち。反乱をあきらめる、年老いたアウレリャノ・ブエンディア大佐。


【13章】

目が見えなくなり老いぼれる気配を見せないウルスラ。神学校へと発つホセ・アルカディオ。クラビコードの学校へ行くメメ。一家の采配を振るようになるフェルナンダ。ペトラ・コテスの家に入り浸るアウレリャノ・セグンド。食べくらべで死にかけるアウレリャノ・セグンド。4人の尼僧と68人の級友を連れて戻るメメ(72個のおまる)。ふたたび姿を見せだすホセ・アルカディオ・セグンド。アウレリャノ・ブエンディア大佐の死。


【14章】

アマランタ・ウルスラが生まれる。クラビコードの勉学を終えるメメ。父アウレリャノ・セグンドと娘メメの愉快な友だち付合い。顔も知らない医者との手紙で、テレパシーによる手術の準備をすすめるフェルナンダ。死神のお告げ通り、自分の経かたびらを織りあげた後に死ぬアマランタ。メメと恋に落ち、撃たれて寝たきりとなるマウリシオ・バビロニア(黄色い蛾)。


【15章】

フェルナンダによって修道院へ入れられるメメ。籠に入れられて川に浮いていたということにされて育てられる、メメとマウリシオ・バビロニアの息子、アウレリャノ。バナナ会社のストライキを計画するホセ・アルカディオ・セグンド。駅前の広場での、軍隊による三千人の死体を乗せた、二百両連結の列車。兵隊たちには姿が見えないホセ・アルカディオ・セグンド。


【16章】

振り続ける雨(4年11ヶ月と2日)。顔も知らない医者との文通に夢中になるフェルナンダ。ヘリネルド・マルケス大佐の死。フェルナンダがぶちまける忿懣と、家中の物をこわすアウレリャノ・セグンド。石膏像に入っていた大金を探して、家を破壊するアウレリャノ・セグンド。雨が止んで、10年間の旱魃が始まる。


【17章】

ウルスラの死。レベーカの死。テレパシーによる検査を受け、ペッサリーを手に入れるフェルナンダ。ブリュッセルに遊学するアマランタ・ウルスラ。同時刻に死ぬ、双子のホセ・アルカディオ・セグンドとアウレリャノ・セグンド。


【18章】

メルキアデスの部屋にこもり、羊皮紙の研究に没頭するアウレリャノ。消滅するメルキアデス。ブエンディア家に食べ物を送り続けるペトラ・コテス。家を出るサンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダ。ひとりでに動き回る、屋敷の物。虫に食われた女王の衣装を着るフェルナンダ。フェルナンダの死。ホセ・アルカディオの帰宅。ウルスラが隠し続けた大金がついに見つかる。アウレリャノ・ブエンディア大佐の17人の子供のうちのひとりアウレリャノ・アマドルが、警官に射殺される。金貨めあての子供たちに殺されるホセ・アルカディオ。


【19章】

夫ガストンを連れて帰宅するアマランタ・ウルスラ。屋敷の修繕に熱中するアマランタ・ウルスラ。退屈のあまりマコンドに航空便を開設しようとするガストン。アマランタ・ウルスラに惹かれつつ、ニグロマンタと恋仲になるアウレリャノ。4人の友人を得るアウレリャノ。4人のうちのひとり、ガブリエル(註:作者がモデルらしい)は、ヘリネルド・マルケス大佐の曾孫だった。ピラル・テルネラの経営する淫売屋を見つけるアウレリャノたち。アウレリャノに身体を許すアマランタ・ウルスラ。


【20章】

ピラル・テルネラの死。故郷へ帰ったカタルニャ生まれの学者のすすめに従い、マコンドを去る4人の友人たち。ブリュッセルへ帰るガストン。情事に夢中になるアウレリャノとアマランタ・ウルスラ。豚のしっぽを持つ赤ん坊アウレリャノを産んだ後に出血で死ぬアマランタ・ウルスラ。蟻の大群によって運ばれる、死んだ赤ん坊アウレリャノ。ついに解読されるメルキアデスの羊皮紙、ブエンディア一族の百年の歴史が書かれたものだった。自らの出生の秘密を知るアウレリャノ。暴風によってなぎ倒されて廃墟となるマコンドであった。


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Marquez,Gabriel Garcia(1927-2014)

コロンビアの小さな町アラカタカに生まれる。ボゴタ大学法学部中退。自由派の新聞「エル・エスペクタドル」の記者となり、1955年初めてヨーロッパを訪れ、ジュネーブ、ローマ、パリと各地を転々とする。

1955年処女作『落葉』を出版。1967年『百年の孤独』を発表、ベストセラーとなる。以後『族長の秋』(1975年)『予告された殺人の記録』(1981年)『コレラの時代の愛』(1985年)『迷宮の将軍』(1989年)『十二の遍歴の物語』(1992年)『愛その他の悪霊について』(1994年)など刊行。1982年度ノーベル文学賞を受賞。


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『疲れない体をつくる免疫力』安保 徹(知的生きかた文庫) より

免疫学の世界的権威が教える「体の中」の掃除法。

「交感神経とは、おもに昼間に働きます。人が活動する時や運動をしている時に活性化し、『元気はつらつ』『やる気まんまん』の状態をつくり出す神経と考えればよいでしょう」

1「体を温める」習慣→「41度のお風呂」に入る 

2「脳を元気にする」習慣→まず、「1日30分歩く」 

3「心を鎮める」習慣→息を「大きく吸い、大きく吐く」 

4「疲れを取る」習慣→普段より「30分早く寝る」


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[目次]1章 まず「免疫力を高めるコツ」を知る;2章 今ある「疲れ」を撃退する法;3章 「免疫力を高める」生き方をしよう;4章 疲れない体をつくる「熟睡法」;5章 週末で「免疫体質」に変わる法;6章 安保式「免疫法」で病気を防ぐ!


安保徹 新潟大学大学院医歯学総合研究科教授(国際感染医学講座・免疫学・医動物学分野)。

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=322590

□体温平熱が36.0℃〜37.0℃なら健康

1、熱心に体を温める。

2、深呼吸する。

3、野菜、キノコ、海藻を食べる。

4、何事も感謝の気持ちを忘れない。

以上の対策で体内のミトコンドリアが活性化される。

■体の冷えは自律神経を乱す大敵で(相互に作用)、運動と共に末梢神経を刺激する「爪もモミ」を推奨する。

■ストレスはホルモンの低下と連結しており、どちらが原因であっても、交感神経過多となって免疫細胞の働きが偏る。

■免疫細胞は顆粒球とリンパ球に分かれて、交感神経と副交感神経に操られて、バランスを取る事が免疫力を維持する。

顆粒球が増えすぎると常在菌まで活性酸素で攻撃して炎症をおこす。リンパ球が過多だと喘息とアレルギー体質になる。

バランスの中庸が取れるのは、体温が36.5~37℃の時である。

■「いびき」は交感神経が緊張しすぎて、体が酸素不足になっている兆候。「鼻水が粘性」になるのは交感神経が緊張して、分泌現象が抑制されて、さらさら鼻水が正解。

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世界で活躍する日本の全自動PCR検査機器 何故か日本では活躍せず

フランス、イタリア、ドイツその他ヨーロッパ各国、アメリカなどで日本の技術を駆使した全自動PCR検査機器が活躍し、フランス政府からは感謝状もおくられた日本のメーカー。が、日本では出番を与えてもらえない、とのこと。


『羽鳥新一モーニングショー』で取り上げられていた記事。

【コロナ対策、複数検体の処理が出来る全自動PCR検査機器 中央動物病院 > BLOG 4/18】

【日本の全自動PCR検査機器メーカーがフランスより感謝状 中央動物病院 > BLOG4/24】

「これさえ使用できれば検査技師の労力と感染リスクを最小限に抑え、コンタミネーションなく多検体を短時間で検査出来るのですが、

世界から大きく後れを取っている日本の検査態勢が、できるだけ早く安心出来る体制となってくれることを願っています。」

http://cyuoh-ah.jp/blog/2067/ 

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2020年05月08日

ダウンロード・フェスティバル(Download Festival)2019深夜放送

英国の野外ロック・フェスティバル英国の野外ロック・フェスティバル<ダウンロード・フェスティバル(Download Festival)>。

2019年6月に行われた公演から8組のパフォーマンスを放送する『洋楽倶楽部 ダウンロード・フェスティバル 2019

NHK BSプレミアムで5月8日深夜24.31より再放送されます。

解説は音楽評論家の伊藤政則。

出演アーティスト:デフ・レパード、ヘイルストーム、

スラッシュfeat. マイルス・ケネディ&ザ・コンスピレイターズ、スレイヤー、

スマッシング・パンプキンズ、ホワイトスネイク、ロブ・ゾンビ、スリップノット

番組ページ: https://www4.nhk.or.jp/P4653/

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2020年05月07日

ポール・ルイス ピアノ・リサイタル NHKFM 放送

 57日木曜 NHKFM 午後730分〜 午後910

案内-田中奈緒子


ポール・ルイス ピアノ・リサイタル 

11のバガテル 作品119 ベートーベン作曲(1505秒)(ピアノ)ポール・ルイス


「ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:49 ハイドン作曲(2345秒)(ピアノ)ポール・ルイス


「ピアノ・ソナタ ロ短調 Hob.XVI:32 ハイドン作曲(1527秒)(ピアノ)ポール・ルイス


4つの小品 作品119 ブラームス作曲(1522秒)(ピアノ)ポール・ルイス


「「7つのバガテル」 から第1 作品331 ベートーベン作曲(358秒)(ピアノ)ポール・ルイス


「アレグレット ハ短調 D.915 シューベルト作曲(342秒)(ピアノ)ポール・ルイス


〜東京・王子ホールで収録〜 

20181120日)


「ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI:40 ハイドン作曲(1200秒)(ピアノ)ポール・ルイス

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ラジオスタジオも閉鎖されて、再放送が多くなる。だけど貴重なライブ音源も聴ける。


57日木曜

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 午後730分〜 午後910

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2020年05月06日

アインシュタインは二回落第

「アインシュタインは二回も落第した。ルーズベルトはクラスの最下位だった(中略)。ロッキーにだってチャンスはあるはずよ」。米ボクシング映画の「ロッキー」。ロッキーの対戦相手は世界王者。勝てる見込みのない試合を前にロッキーの恋人エイドリアンが語る▼偉人や成功者の若き日の失敗や、「だめだった日」。そういう逸話は人を奮い立たせ、励ますものだろう。こどもの日である。こんな話なら、子どもたちも喜んでくれるか▼アップル創業者のジョブズは子どもの時、好奇心から殺虫剤を瓶ごと飲んで病院に担ぎ込まれた。小学生のガンジーは同級生に話し掛けられるのが怖くて、授業が終わると一目散に帰った▼少年時代のエジソンは「人が飛べる薬」を開発したと試しに友人に飲ませた。当然飛べるはずもなく、友人は腹痛を起こし、騒ぎになった。チャーチルの小学校の成績は最下位だった。坂本龍馬はおねしょがなかなか治らなかった。いずれも『失敗図鑑』(いろは出版)から借りた▼あの人たちも普通の子どもだったんだ。子どもたちにはそう安心してもらいたい。もちろんそこから学び、努力し、身を起こした。それでもうまくいかない日もあれば、恥ずかしい思いをした日もあった。誰にだってチャンスはありそうではないか▼<おもしろくふくらむ風や鯉幟(こいのぼり)>正岡子規。大きくふくらんでほしい。
【東京新聞】筆洗より
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混迷は詩的世界から遠い

ミシェル・ウエルベックが現在のパンデミックについて文章を発表。
「もはや以前には戻り得ない」という言説を否定して、変化とされているものは実はコロナ禍前から存在しており、収束後は新世界ではなく「少し悪化したこの世界」だと指摘。
故にこのパンデミックに影響を受けた文学の登場も信じないと。愚かな自称詩人もいる。
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2020年05月05日

美術曲芸しん粉細工 阿部徳蔵

 

 しん粉細工に就いては、今更説明の必要もあるまい。たゞ、しん粉をねつて、それに着色をほどこし、花だの鳥だのゝ形を造るといふまでゞある。
 が、時には奇術師が、これを奇術に応用する場合がある。しかしその眼目とするところは、やはり、如何に手早く三味線に合せてしん粉でものゝ形を造り上げるかといふ点にある。だから、正しい意味では、しん粉細工応用の奇術ではなくて、奇術応用のしん粉細工といふべきであらう。
 さてそのやり方であるが、まづ術者は、十枚あるひは十数枚(この数まつたく任意)の、細長く切つた紙片を一枚づゝ観客に渡し、それへ好みの花の名を一つづゝ書いて貰ふ。書いてしまつたら、受けとる時にそこの文字が見えないために、ぎゆつとしごいて貰ふ。
 そこで術者は、客席へ出て花の名を書いた紙を集める。しかし、客が籤へ書いた全部の花を造るのは容易ではない、といふので、そのうちから一本だけを客に選んで貰ふ。が、もうその時には、全部に同一の花の名を書いた籤とすり替へられてある。
 これで奇術の方の準備がとゝのつたので、術者はしん粉細工にとりかゝる。まづ術者は、白や赤や青や紫やの色々のしん粉を見物に見せ、
『持出しましたるしん粉は、お目の前におきましてこと/″\く験めます。』
 といふ。勿論、しん粉になんの仕掛があるわけではないが一応はかういつて験めて見せる。
『さて只今より、これなるしん粉をもちまして、正面そなへつけの植木鉢に花を咲かせるので御座います。もし造上げましたる鉢の花が、お客様お抜取りの籤の花と相応いたしてをりましたら、お手拍子御唱采の程をお願ひいたします。』
 かういつて、しん粉細工をはじめるのである。普通、植木鉢に数本の枝を差しておき、それへ、楽屋の三味線に合せてしん粉で造つた花や葉をべた/\くつゝけて行くのである。が、これが又、非常な速さで、大概の花は五分以内で仕上げてしまふ。
 かうして花が出来上ると、客の抜いた籤と照合せる。が、勿論前に記したやうな仕組になつてゐるのだから、籤に書かれた花の名と、造上げた舞台の花とが一致することはいふまでもない。これが、奇術応用の『曲芸しん粉細工』である。
 稲荷魔術の発明者として有名な、神道斎狐光師は、このしん粉細工にも非常に妙を得てをり、各所で大唱采を博してゐた。狐光師の、このしん粉細工に就いて愉快な話がある。
 話は、大分昔のことだが、一時狐光老が奇術師をやめて遊んでゐた時代があつた。勿論、何をしなければならないといふ身の上ではなかつたが、ねが働きものゝ彼としては、遊んで暮すといふことの方が辛かつた。その時、ふと思ひついたのはしん粉細工だつた。
『面白い、暇つぶしにひとつ、大道でしん粉細工をはじめてやれ。』
 一度考へると、決断も早いがすぐ右から左へやつてしまふ気性である。で彼は、早速小さい車を註文した。そしてその車の上へ三段、段をつくつてその上へ梅だの桃だの水仙だのゝしん粉細工の花を、鉢植にして並べることにした。
 道楽が半分暇つぶしが半分といふ、至極のんきな商売で、狐光老はぶら/\、雨さへ降らなければ、毎日その車をひいて家を出かけて行つた。
 五月の、よく晴れたある日であつた。
 横浜は野毛通りの、とある橋の袂へ車をおいて、狐光老はしん粉で花を造つてゐた。
 麗かな春の光が、もの優しくしん粉の花壇にそゝいでゐた。
『こりやあきれいだ。』
『うまく出来るもんだねえ。』
 ちよいちよい、通りすがりの人達が立止つては、花壇の花をほめて行つた。もと/\、算盤を弾いてかゝつた仕事でないのだから、かうした讚辞を耳にしただけでも、もう狐光老の気持は充分に報いられてゐた。そして、『何しろこりや、美術しん粉細工なんだから……。』と、ひとり悦に入つてゐたのであつた。
 と、そこへ、学校からの戻りと見える女生徒が三人通りかゝつた。そしてしん粉の花を眺めると、
『まあきれいだ!』
 と立止つた。そして三人共車のそばへ寄つて来た。女生徒達は、しばらくしん粉を造る狐光老の手先に見とれてゐたが、『ねえ小父さん、小父さんにはどんな花でも出来るの?』
 ときいた。
『あゝ出来るとも、小父さんに出来ない花なんてものは、たゞの一つだつてありはしない。』
『さう、ぢやああたしチユウリツプがほしいの。小父さん拵へてくれない?』
 と一人がいつた。
『あたしもチユウリツプよ。』
『あたしも……。』
 と、他の二人もチユウリツプの註文をした。然し此時、俄然よわつたのは狐光老だつた。何を隠さう、彼はチユウリツプの花を知らなかつた。『チユウリツプ、チユウリツプ、きいたやうな名だが……。』と二三度口の中で繰返したが、てんで、どんな花だか見当さえつかなかつた。
 といつて今更、なんでも出来ると豪語した手前、それは知らぬとは到底いへないところである。
『ようし、勇敢にやつちまへ。』
 と決心がつくと、やをらしん粉に手をかけて、またゝく暇に植木鉢に三杯、チユウリツプ ? の花を造り上げた。が、それは、むろん狐光老とつさに創作したところのチユウリツプで、桃の花とも桜の花ともつかない、実にへんてこな花であつた。
『さあ出来上つた。どうみてもほんものゝのチユウリツプそつくりだらう。』
 と、狐光老は、それを女生徒達の前にさし出した。女生徒達は、あつけにとられた顔つきでそれを受けとると、
『うふゝ。』
『うふゝ。』
 と、顔見合せて笑ひながら、おとなしく鉢を手にして帰つて行つた。が、後に残った狐光老はどうにも落付けなかつた。『チユウリツプ……一体どんな花だらう?』と、そのことばかり考へてゐた。
 そのうち夕方になつた。で、店をたゝんで狐光老は、ぶら/\車をひいて野毛通りを歩いて行つた。ふと気がつくと、すぐ目の前に大きな花屋があつた。彼は急いで車を止めると、つか/\店の中へはいつて行つた。そして、
『チユウリツプはあるかい?』
 ときいた。
『ございます。』と、すぐ店の者がチユウリツプを持つて来た。見ると、さつき自分の造つたものとは、似ても似つかぬ花であつた。
『いけねえ、とんでもないものを拵へちまつた。』
 と、狐光老は、その花を買つて家に帰つた。そしてその晩、彼はチユウリツプの花の造り方に就いておそくまで研究した。
 さて翌日、狐光老は、また昨日の場所へ店を出した。そして十杯あまり、大鉢のチユウリツプを造つて、屋台の上段へ、ずらり、人目をひくやうに並べておいた。
 三時頃、また昨日の女生徒が三人並んで通りかゝつた。と、彼女達は、早くも棚のチユウリツプに目をつけて、
『あら、チユウリツプがあるわ。』
 と、急いで店の前へ寄つて来た。
『小父さん、これチユウリツプつていふのよ。』
 と、そのうちの一人が、花を指さしながらいつた。狐光老は、『勿論、勿論!』といふ顔つきで、『あゝチユウリツプといふんだよ。』
 とすましてゐた。女生徒達はけげんさうに、
『でも小父さん、昨日あたし達に拵へてくれたチユウリツプ、とても変な花だつたわ。あたし今日みたいのがほしかつたの。』といつた。
『さうかい、そりやあ気の毒なことをしたね。このチユウリツプでよけりやあ、みんなで沢山持つておいで。』
 狐光老は嬉しさうに微笑してゐた。
『でもわるいわ……。』
『何がお前、遠慮なんかすることがあるものかね。いゝだけ持つて行くがいゝ。が、嬢ちやん方は、昨日みたいなチユウリツプをまだ学校でならはなかつたかね。』ときいた。
『あらいやだ! あんなチユウリツプつて……。』
 女生徒達は一斉に笑ひ出した。が、狐光老は、
『ありやあお前、あつちのチユウリツプなんだよ。』と、けろりとしてゐた。
 その後間もなく、狐光老は奇術師に立戻つた。そして、この『美術曲芸しん粉細工』を演出する場合には、いつもいつもチユウリツプといふ、あのあちら的な花が一輪、二輪、三輪、あまた花々の中にまじつて咲いてゐた。





「奇術随筆」人文書院 1936(昭和11)年5月
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比喩ではない詩

「ノン・レトリック T」新川和江

 

たとえばわたしは 水をのむ

ゴクンゴクンと のどを鳴らす

たとえばわたしは 指を切る

切ったところが 一文字にいたむ

たとえばわたしは 布を縫う

ふくろが出来て ものがはいる

たとえばわたしは へんじを書く

やっぱりわたしもあなたが好き と

それから そうして こどもを生む

ほかほか湯気のたつ赤んぼを!

 

ひときれのレモン

丸のままの林檎

野っ原のなかの槻の大樹

橋をながす奔流

1本のマッチ

光るメス

土間のすみにころがっている泥いも

はだか馬

 

わたしもほしい

それだけで詩となるような

1行の

あざやかな行為もしくは存在が

 

(現代詩文庫「新川和江詩集」より)


比喩でなく詩とは何かと問う、答えを解明する詩である。この詩が普遍的で切実なテーマを追っている。ランプ点灯された詩は、明かりを燈す。また逆のように消灯したままで、堂々巡り解明されないこともある。

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正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。

I was born」吉野弘


確か 英語を習い始めて間もない頃だ。


或る夏の宵。父と一緒に寺の境内を歩いてゆくと 青い夕靄の奥から浮き出るように 白い女がこちらへやってくる。物憂げに ゆっくりと。



 女は身重らしかった。父に気兼ねをしながらも僕は女の腹から眼を離さなかった。頭を下にした胎児の 柔軟なうごめきを 腹のあたりに連想し それがやがて 世に生まれ出ることの不思議に打たれていた。


 女はゆき過ぎた。


 少年の思いは飛躍しやすい。 その時 僕は<生まれる>ということが まさしく<受身>である訳を ふと諒解した。僕は興奮して父に話しかけた。



----やっぱり I was born なんだね----

父は怪訝そうに僕の顔をのぞきこんだ。僕は繰り返した。

---- I was born さ。受身形だよ。正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。自分の意志ではないんだね----

 その時 どんな驚きで 父は息子の言葉を聞いたか。

僕の表情が単に無邪気として父の顔にうつり得たか。それを察するには 僕はまだ余りに幼なかった。僕にとってこの事は文法上の単純な発見に過ぎなかったのだから。


 父は無言で暫く歩いた後 思いがけない話をした。

----蜉蝣という虫はね。生まれてから二、三日で死ぬんだそうだが それなら一体 何の為に世の中へ出てくるのかと そんな事がひどく気になった頃があってね----

 僕は父を見た。父は続けた。

----友人にその話をしたら 或日 これが蜉蝣の雌だといって拡大鏡で見せてくれた。説明によると 口は全く退化して食物を摂るに適しない。胃の腑を開いても 入っているのは空気ばかり。見ると その通りなんだ。ところが 卵だけは腹の中にぎっしり充満していて ほっそりした胸の方にまで及んでいる。それはまるで 目まぐるしく繰り返される生き死にの悲しみが 咽喉もとまで こみあげているように見えるのだ。淋しい 光りの粒々だったね。私が友人の方を振り向いて<卵>というと 彼も肯いて答えた。<せつなげだね>。そんなことがあってから間もなくのことだったんだよ。お母さんがお前を生み落としてすぐに死なれたのは----。


 父の話のそれからあとは もう覚えていない。ただひとつ痛みのように切なく 僕の脳裡に灼きついたものがあった。

----ほっそりした母の 胸の方まで 息苦しくふさいでいた白い僕の肉体----


(作者註:「淋しい 光りの粒々だったね」は詩集「幻・方法」に再録のとき、「つめたい光の粒々だったね」に改めました)


吉野弘『現代詩文庫』思潮社より



今の時期になって、心に染みる言葉です。

詩人からのメッセージは童心に近いものがあります。それは能動的なものなのか、受動的なことになるのか。

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2020年05月04日

『ピノッキオの冒険』カルロ・コッローディ

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『ピノッキオの冒険』カルロ・コッローディ

一本の棒っきれから作られた少年ピノッキオは、誘惑に屈してばかりで騒動に次ぐ騒動を巻き起こす。

父ジェッペットさんをはじめ周囲の大人たちを裏切り続ける悪たれ小僧の運命は? 

19世紀後半イタリア統一の時代、子供に対する切ない願いを込めて書かれた児童文学の傑作。


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Le Avventure di Pinocchio

カルロ・コッローディ [1826-1890]

イタリアの小説家、ジャーナリスト、評論家。フィレンツェに生まれる。ピーエ校で哲学と修辞学を学ぶかたわら書店でアルバイトを始めて、知識人や作家、ジャーナリストらと交わったことで政治への関心が芽生え、その後日刊紙を創刊したり評論、戯曲、小説などを手がけ執筆活動に入る。

1881年、『ピノッキオの冒険』の原型となる作品を週刊「子供新聞」に連載として発表。その後中断を挟むが子供たちの要望で再開され、1883年に完結する。著書はほかに『蒸気機関車のロマンス』『ジャンネッティーノ 子供のための本』『ミヌッツォロ』など。


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2020年05月03日

NHK 100分 de 名著 コッローディ『 ピノッキオの冒険』2020年4月/日本放送協会

NHK 100分 de 名著 コッローディ『 ピノッキオの冒険』2020年4月/日本放送協会

イタリアの作家、カルロ・コッローディ(1826 – 1890)1881年に執筆した児童文学の傑作ですが、ディズニー映画の影響で「嘘をつく悪い子がよい子に生まれ変わる物語」というマイルドなイメージが定着しています。

ところが「ピノッキオは愛らしいキャラクターどころか筋金入りの悪童だった」「鼻が伸びるという逸話は嘘をつくことをそれほど戒めていない」など意外な事実が数多く描かれており、大人が読んでも楽しめる豊かなメタファーの数々が仕込まれています。

「100分de名著」では、瑞々しい人間描写、辛辣な社会風刺を通して、「人間の心のあり方」「社会の矛盾」な見事に描き出したこの作品から、大人をもうならせる奥深いテーマを読み解いていきます。


【指南役】和田忠彦 エーコの翻訳等で知られるイタリア文学者。

【朗読】伊藤沙莉(俳優)

【語り】加藤有生子

https://tver.jp/episode/71382530

Kindleで NHK 100分 de 名著 コッローディ『ピノッキオの冒険』 2020年 4 月 [雑誌] (NHKテキスト) をお読みいただけます。

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『映像研には手を出すな!』アニメ放送

202016日から323日までNHK総合にて放送。624 日に全12話を収録したBlu-ray『映像研には手を出すな!COMPLETE BOX』発売予定。

https://youtu.be/iZrojMDltlg


6話から11話までのエンドカードはAdobe、ワコムとのコラボイラストコンクール入賞者作品が採用。


202018日から公式Twitterで本編を振り返る短編アニメが配信された。演出は奥村元、SDデザインはよしとも、背景は井上涼雅、制作はK&KデザインとAQUA ARIS

NPO法人放送批評懇談会による、放送文化に貢献した番組を表彰するギャラクシー賞の20203月度月間賞に選定。 


『映像研には手を出すな!』公式サイト http://eizouken-anime.com/


「美術手帖」作品分析

https://bijutsutecho.com/magazine/insight/21365

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2020年05月02日

【よるドラ】いいね!光源氏くん

『いいね光源氏くん』NHKテレビ

【放送予定】2020年4月4日(土)スタート[全8回]

総合 毎週土曜 よる11時30分から11時59分

原作は女性コミック誌で連載中の同名人気コミック。「源氏物語」の中で、雅(みやび)の世に生きていた平安貴族・光源氏が、まったく世界観の違う現代に出現。あたりまえに見える現実世界とのギャップに驚いたり、楽しんだり・・・また、光源氏は千年もの間、絶対的美男子として数多くの女性たちをトキめかせてきた登場人物。こんな光源氏をヒモ同然のように住まわせることになる、地味で自分に自信がない今風のこじらせOL・沙織。はじめは違和感を覚えつつも、徐々に光の存在に癒されていく。そんな矢先、ふたりのもとに新たな源氏物語の登場人物、あの中将(ちゅうじょう)まで現れて!?奇想天外ながら、ゆる〜く笑える千年の時を越えた“いけめん”居候コメディ!!

【原作】えすとえむ

【脚本】あべ美佳

【音楽】小畑貴裕

【出演】千葉雄大 伊藤沙莉 桐山漣 入山杏奈 神尾楓珠 小手伸也 ほか

【演出】小中和哉 田中諭

【制作統括】管原浩(NHK)竹内敬明(テイク・ファイブ)

『いいね光源氏くん』NHK ホームページ→ https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/hikarugenji/

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「生きる理由」新川和江


「生きる理由」


  数えつくせない

  この春ひらくつぼみの一りん一りんを

  若いうぐいすの胸毛のいっぽんいっぽんを

     だからわたしは 今日も生きている

     そうして明日も


  歌いつくせない 

  喜びの歌 悲しみの歌 そのひとふしひとふしを

  世界じゅうの子供たち ひとりひとりのための子守歌を

     だからわたしは 今日も生きている

     そうして明日も


  歩きつくせない

  人類未踏の秘境どころか いま住んでいる

  この小さな町のいくつかの路地裏さえも

     だからわたしは 今日も生きている

     そうして明日も


  汲みつくせない

  底のない桶をあてがわれているわけでもないのに

  他人の涙 私の涙 この世にあふれる水のすべてを

     だからわたしは 今日も生きている

     そうして明日も


  愛しつくせない

  昨日も愛した 一昨日も愛した けれどもまだ

  口いっぱいにはしてあげられない あのひとを

     だからわたしは 今日も生きている

     そうして明日も


新川和江詩集「それから光がきた」より

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2020年05月01日

【若山三郎 春陽文庫】

【若山三郎 春陽文庫】
お嬢さんと腕力学生 お嬢さんは意地っぱり お嬢さんは喧嘩好き 
お嬢さんの冒険 お嬢さんはお目が高い
お嬢さんは恋愛主義者 青春会議  大空に乾杯 若社長
ドンと一発!  店求愛作戦 おこりんぼ大将
お嬢さんと等社員  天国は青春にあり 男ならやってみろ
お嬢きんごめんあそばせ お嬢さんは婚約中 お嬢さんは江戸っ子娘 
お嬢さんの恋愛修業 お嬢さんとドラむすこ 青春へまっしぐら 
お嬢さんはガンコ者 青春バンザーイ! おてんばお嬢さん
青春をやりぬこう お嬢さん社長 お嬢さんとちゃめ紳士
お嬢え延線智 お嬢さんに乾杯 青春に賭けろ 恋人おてんば娘 青春大作戦 
けんか青春記者 お嬢さん待ってます 台風お嬢さん ちぢかりお嬢さん
けとばした青春 パーフェクト青春 お嬢さんは適齢期 青春をふっ飛ばせ
結婚への招待状 湯けむり大将 それゆけ青春
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若山三郎 わかやま・さぶろう

1931年、新潟県生まれ。明治大学中退。日本製鋼嘱託通訳、西松建設嘱託通訳を経て、約10年間、在日米軍特殊通訳を務めた。

その体験を元に31歳で書いた本作品は「ユーモア文学新人賞」佳作入選作。

それ以前の1956(昭和31)年には「第九回講談倶楽部賞林房雄奨励賞」を小説『国際仲人』で受賞。

在日米軍の特殊通訳を辞した後は作家活動に専念。著作数は優に200を超える。

春陽堂から文庫化されたお嬢さんシリーズ”“青春シリーズは広く知られ、貸本時代からのファンも多い。


初期の代表作としては『青雲の門』『大望の塔』『開運の橋』の三部作(のちに『ドカンと一発!』と改題され春陽文庫に収録)、吉永小百合主演で映画化された『大空に乾杯!』など。


後期代表作は故郷新潟県新発田出身で大倉財閥の祖、大倉喜八郎の生涯を描いた力作『政商〜大倉財閥を創った男〜』(学研文庫)があるほか、近年は企業の創業者に材を得た創業者列伝等に健筆を振るっている。

(社)日本文芸家協会会員。日本作家クラブ副理事長。 

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『はりきりスピード娘』城戸禮

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雑誌「女学生の友」に連載された物語の単行本化。護身術にたけて、オートバイを乗りまわす鮎子が主役の活発女子もの。爽快なスピード感は、のちに三四郎シリーズに開花される。

〔浪速書房〕昭和34 刊行320

〔春陽文庫〕昭和39刊行240頁二段組


『はりきりスピード娘』

      1

「おはよう、パパ。ジミー号の調子はどうなの?」
 朝日のようやく当たりはじめた縁例から、庭先でバラの手入れをしている、父の藤井庄兵衛に鮎子が声をかけた。
 「ああ、おはよう。そうだな、ジミー号よりひばり号のほうがいいと思うが、松吉に聞いてごらん。掃除してるはずだからね」
 ふり向いて父がいう。この庄兵衛はとても早起きで、午前四時少し過ぎると、さっさと寝床を離れ、工場を見まわって、それから趣味のバラの手入れをはじめるのだった。
 「あら、チビ松がもう起きてるの。危ないもんね。そうじしながら居眠りしてるんじゃないん」
 「おお、そうだっけな、それでオートバイがいるんだね」
 鮎子は1日おきに、鹿島道場に早朝稽古に行く。そこは星道の道場だが、道場主の鹿島先生が護身術の名人で、それを習いに通うのである。
 
「そうよ。パパご自慢の自家用車がないと、学校に間に合わないんですもんね」
 道場には午前六時に着き、それから二時間ほど汗みずくで稽古をして、学校に飛んでいくので、自家用車、つまりオートバイでないと、遅刻してしまうからであった。
 「熱心だね、ずいぶん。だが夢中になると、勉強にさしつかえるから、いいかげんにするんだよ」
 「ダイジョービよ。いくら上手くなっても、パパを投げたりしないわ。ホッホホ」
 「べソを抱えて、さながらリスのようにかかしら」
 鮎子がいたずらっぽく笑った。
 年齢は15で、ここから7、8キロ離れた桜が丘中学の三年生だが、すらりとした背に、かわいい顔だちをしていて、その名のとおり、まるでアユのように元気がよく、学校じゅうの人気者であった。
 「わからんぞ。松吉はまったくよく寝る。黙っていたら、2日ぐらい平気だからね。ハッハッハ」
 鮎子の母は三年まえになくなり、現在は父親と少年工の松吉と、それに家事手伝いのおキンばあさんの四人で、父親の経営するオートバイ製作工場の裏てにある、六部屋ほどの家に住んでいるのだった。

 「冗談じゃないぞ、あの子に投げられたら、わしは壊れてしまう。わしが作るオートバイほど、頑丈じゃないからな。」
 庄兵衛は苦笑した。生まれっき体が弱かったのを心配して、小学校一年のときから、鮎子に一回身術を習わせはじめたら、不思議にメキメキ丈夫になり、背もだんだんと伸び、いまや学校の女生徒たちの中ではいちばん大きい。技のほうも驚くほど上達して、鮎子がやるつもりなら、父親など軽く投げ飛ばされてしまう。いや父親だけでなく、100人近くいる工場の人たちの中の、力自慢の若者たちでも、うっかりすると逆手、逆手ととられて降参するほどであったからだった。
(豪快アルバイト学生より)

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『はりきりスピード娘』 
   目  次
豪快アルバイト学生
すごい離れわざ
悪者のだくらみ
美少女の怒り
たいへん小僧
怪力の用心棒
娘てんぐと小てんぐ
ね ら う 大 男
びっくり早わざ
快男児の逆襲
怪物ゴリラ男の出現
乗りこむオオカミの巣 
電光早わざ娘
あやうし正義のふたり
さっそう! 美少女と快男児

城戸きどれい 1909東京都生まれ。貸本小説のベストセラー作家。昭和30年の「大学三四郎」を皮切りに、快男児三四郎を主人公とした人気シリーズを数々発表。貸本小説の「明朗」ものといわれるジャンルのベースができあがる。

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