2020年04月17日

『フェアウェルタThe Farewell』

2月に発表された米アカデミー賞で、ポンージュノ監督の『パラサイト半地下の家族』が作品賞を含む最多4部門受賞というアジア映画初の快挙を成し遂げ、日本でも賞賛の声が溢れました。今月ご紹介する『フェアウェル』も、主演のオークワフィナが、米ゴールデングローブ賞でアジア系女優史上初の主演女優賞(ミュージカルーコメディ部門)に輝き、大きな注目を浴びた作品。
離れて暮らす祖母や、幼くして離れた祖国への思い、さらに東洋と西洋の死生観の違いも浮かび上がる3世代家族のヒューマンドラマ。

『フェアウェルタThe Farewell』2019年 アメリカ 100分
[監督・脚本]ルル・ワン
[出演]オークワフィナ、ツィ・マー、ダイアナ・リン、チャオ・シュウチェン他
[劇場]TOHOシネマズ日比谷他 全国順次公開
[配給]ショウゲート ○2019 BIG BEACH. LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


愛する祖母のためにつく”嘘″が教えてくれたごと
家族に心配をさせないための嘘や、何かと言えば心配する祖父母に言えないことなど、中国出身のルルーワン監督が家族の嘘を基に作り上げた本作深刻なテーマを内在させながらも、オークワフィナ扮する主人公の目線で、久々に故郷で再会した家族が祖母と心の中で別れを告げるまでの日々をよく綴る。
 ニューヨーク育ちのビリーは、両親から中国の祖母が癌で余命3か月であることを知らされる。親族たちは、本人に病気のことは知らせないと決め、日本在住のビリーのいとこが急速中国で結婚式をあげるという名目で祖母のもとに集まる計画を立てていた。両親は、祖母と仲の良いビリーが真実を打ち明けるのを恐れ、残るように説得して旅立つが、いてもたってもいられないビリーは後を追い、久しぶりに中国・長春に降り立つ。既に集まっていた親族たちが驚きの目を向ける中、ビワーは祖母との再会を果たすのだったが……。

 いつもビリーのことを心配し電話をかけてくる祖母は大家族の中でも中心的存在。早くに夫を亡くし、居候の同居人や大叔母の助けを借りながら暮らしている息子家族が帰ってくると俄然張り切り、孫の結婚式も中国式の豪勢なものを段取り奔走する。
病院での検査結果も良好と告げられた祖母は、ビワーの結婚相手の心配や太極拳までする。だがビリーはそんな祖母のが心配でた圭らない。アメリカに移住し、孤独に苛まれた子ども時代に祖母と過ごした時間は数少ない良き思い出。
 祖母や地元の親族の前でアメリカと日本で暮らす息子夫婦たち価値観や思いが交差する中、中国ならではの死生観も色濃く浮かび上がる。死との向き合い方は国よって違うのは当然だが、痛感する様々なエピソードがユーモアを交えながら描かれていく。真実を告げるべきだと主張していたビリーも、死を迎える祖母の心の痛みを家族が背負う考え方に触れ、家族や親族たちとの距離を縮めていく。

posted by koinu at 13:55| 東京 ☁| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『木にたずねよ』和合亮一

力強い温度を感じる言葉がある。

福島から配信された詩人のフレーズです。CORONAウィルスは放射能漏れのように、全国的に各地へ拡散感染している。今こそ扉を開けて紐ときたい詩集。


胸のなかで 火が燃えている

何が正しいのか 間違っているのか

それが分かってくるといい

正しさは煙をあげないと見えないものだから


言葉のなかで 火が燃えている

傷をつけてはいけない人に

出来るだけ やさしく話しかけたい

話したいことをあぶりなおしている

「情熱の木」和合亮一より


東日本大震災によって生活の根幹を揺さぶられ今なお呻吟する人々が多くいる。

詩人は福島市の通りにあると言われる74本の街路樹の11本に、これからのたしかな生活のありかとは何なのかとたずねる。

すると言葉が心の中で根を生やし、こぶを作り、幹を太くして枝を張って、葉を繁らせてくるのだった。


『木にたずねよ』和合亮一(明石書店


T たずねる木

  はじまりの木

  凍れる木

  旅する木

  求める木

  ふたりの木

  言葉の木

  よるの木

  どこの木

  音楽の木

  命の木

  黙す木

  はだかの木

  孤独の木

  運命の木

  星空の木


U ゆるがない木

  存在の木

  奇跡の木

  成長の木

  生命の木

  風になる木

  微笑む木

  不屈の木

  頬の木

  想う木

  あたりまえの木

  めぐる木

  きおくの木

  実りの木

  はるかな木

  運ぶ木

  木陰の木

  朝の木

  読む木

  一本の木


V ささやく木

  交感の木

  笑う木

  さえずりの木

  支える木

  涙の木

  祈りの木

  であいの木

  家族の木

  ごほうびの木

  友だちの木

  見上げる木

  時間の木

  待つ木

  無限の木

  眠る木

  永遠の木

  寄り添う木

  対話の木

  記憶の木

  やさしさの木

  光の木


W 立ちあがる木

  まっすぐな木

  予感の木

  大きな木

  息子の木

  空になる木

  目覚めの木

  さえずる木

  深呼吸する木

  生きる木

  まばたく木

  木漏れ日の木

  立ち止まらない木

  草原の木

  つぶやく木

  さよならの木

  燃える木

  情熱の木

  明日の木

 あとがき


和合亮一 1968年福島生まれ。福島市在住。詩人。高校の国語教師。『AFTER』(思潮社)で中原中也賞受賞。『地球頭脳詩篇』(思潮社)で晩翠賞受賞。2011311日、伊達市にある学校で被災。避難所で数日過ごした後、自宅からツイッターで詩を発信し続け大反響を呼ぶ。近著に、『詩の礫』(徳間書店)、『詩の邂逅』(朝日新聞出版)、『詩ノ黙礼』(新潮社)など。

posted by koinu at 13:00| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする