2019年12月11日

MONKEY vol.19 サリンジャー ニューヨーク

今年生誕100周年を迎えて、関連書籍の出版や映画の公開が相次いでいる作家JD・サリンジャー特集。 


『キャッチャー・イン・ザ・ライ』以前"の初期短篇に焦点をあてて、1940年に『STORY』誌に掲載されたデビュー作「いまどきの若者」と、一人のブルース・シンガーをめぐる哀切な物語が綴られる1948年に『COSMOPOLITAN』誌に掲載された「針音だらけのレコード盤」の2篇を、柴田元幸訳にて掲載。また、作家サリンジャーの誕生を後押ししたコロンビア大学時代の恩師の存在と『STORY』誌をめぐるエピソードを、柴田元幸が解説する。 


特集のもう一つの核として、『STORY』誌や『The New Yorker』誌に長年寄稿を続けてきた御歳89歳の名イラストレーター、RO・ブレックマンをフィーチャー。柴田元幸がニューヨーク州にあるアトリエを訪れ、インタビューを敢行。いまなお第一線で描き続けているブレックマンの仕事と哲学を、豊富なビジュアルとともに紹介する。そして今号の表紙はそのブレックマンによる描き下ろし。どうぞご期待ください。 


【主な内容】 

●JD・サリンジャー 訳―柴田元幸 

「いまどきの若者」「針音だらけのレコード盤」 

●RO・ブレックマン インタビュー 聞き手・柴田元幸 

●F・スコット・フィッツジェラルド「真珠と毛皮」 訳―柴田元幸 

連載:イッセー尾形「オセロー救済委員会」30ページ 

古川日出男川上弘美岸本佐知子 

...and more!!

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山尾悠子の歌集『角砂糖の日』

「小鳥のやうに愕き易く、すぐに同様する性質の〈水の城館〉の侍女たち、すなはち華奢な編み上げ靴の少女たちは行儀よく列をなして行動し、庭園名物の驚愕噴水にうかうか踏み込みたび激しく衝突しあふのだった。」(『小鳥たち』冒頭) 

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短歌『角砂糖の日』より

昏れゆく市街に鷹を放てば紅玉の夜の果てまで水脈たちのぼれ

角砂糖角ほろほろに悲しき日窓硝子唾もて濡らせしはいつ

鏡のすみに野獣よぎれる昼さがり曼陀羅華にも美女は棲みにき

百合喇叭そを枕として放蕩と懶惰の意味をとりちがへ春

幾何学の町に麺麭買ふ髭をとこπの算術今日咲き継がせてよ

小花小花零る日を重ね天文と地理のことなど見分けがたきよ

絵骨牌の秋あかあかと午後に焚く烟れば前の世なる紫色

◉ カルタを火にくべると、赤い炎が紫の煙へと変わってゆく。「前世」の先は「紫色」の先となり、その燃える音に誘われて、生まれる前の遠い記憶が煙の中に浮かぶのだった。

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「<世界は言葉でできている> というのが山尾悠子を象徴する言葉ではないか」そこに描かれた世界は<虚構> であり、<観念>である。山尾短歌も「言葉でできている」から、歌のなかに散りばめられた煌めく言葉が、視神経を辿って脳細胞に刺激する感覚を味わう。

散文詩のような素人でも手が出せる代物ではなくて、「俳句を作るとき、そこには外的世界に求められるモチーフというものはなく、言葉がすべてである。上質の言葉を発見しそれを研磨しおえた時点で作品は完成する」(小林恭二)

この結晶させる純粋化学反応は、吐露のような排泄に近い表現からは生まれてこないだろう。

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山尾悠子『角砂糖の日』A5判変型上製 104pages 函入り

挿画は合田佐和子、まりの・るうにい、山下陽子。函と表紙に銀箔押しをした美しい製本。2017年刊行後に即絶版となる。

http://tacoche.com/?p=14138


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