2019年10月13日
FM 能楽堂「俊寛」〜観世流〜
「謡曲「俊寛」〜観世流〜」
(シテ(俊寛))上野 朝義、(ワキ(赦免使)と地謡)上野 雄三、(ツレ(康頼)と地謡)長山 耕三、(ツレ(成経)と地謡)上野 朝彦、(地頭)上田 貴弘
(44分45秒)〜NHK大阪局Rー1スタジオ〜
平家打倒のクーデター計画が露見して、鬼界島に流罪となった俊寛(シテ)・成経(ツレ)・康頼(ツレ)の三人は、最果ての地で遠き故郷を思い出しては、現在の境遇を嘆いていた。
そこへ赦免を知らせる使者(ワキ)が到着して、赦免状には成経・康頼の罪をゆるすとあるけど、俊寛の名がない。俊寛ひとりだけ島に遺して来いというのが、赦免使が受けた命令であった。
絶望する俊寛を尻目に二人は迎えの船に乗り込む。船に乗ろうとすがりつく俊寛、力に任せて追い払われる。船は出発して、俊寛は絶海の孤島にただひとり遺されて、去りゆく船を見送るのであった。
FM 能楽堂
10月20日日曜NHKFM 午前6時00分〜 午前6時55分放送
史実では迎えに来た時点で、既に俊寛は死んでいる。クーデターを起こした主犯でもない俊寛を、ことさら悪人に仕立てて「平家物語」に書き残す必要があったのだろうか?
能楽では生霊のように、朝廷の偽り行いを問いつめる、無念で狂おしい舞のようにも想える謡曲。
宇宙港を舞台にした復讐鬼を描いた、アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』の怨念を思い出すエピソード。あかあかと燃える (Tyger, Tyger, burning bright) リベンジの詩は、イギリスのブレイクが書いた、Songs of Innocence and of Experience からの引用。これらは非道なる嘘突きに向けた、因果と妄執エネルギーの連鎖宇宙かも試練。
「能」では省略デザインされて、魂の浄化を様式美によって舞う。日曜日の早朝にふさわしい演芸鑑賞。