2019年08月17日

『日本近代短編小説選』昭和編(岩波文庫)紅野敏郎・紅野謙介・千葉俊二・宗像和重・山田俊治編

物語のことばには、時には歴史叙述を読み換える強度や磁場があります。虚構だから語れること・虚構でなければ現前化させることのできない種の真実が確かにあります。虚構はしばしば書き手のいる現実と浸潤しあい、そのあわいを危うくさせ、読み手の生きる時間に深く忍び込んでもきます。

長らく文庫本などの読みやすい形で読めなかった作品も多数収録しますが、そのなかに、初めて出会った読み手に「こんな小説があったのか!」という衝撃をあたえる一篇が、きっと潜んでいるはずです。作品ごとに、編者による作者・作品についての1ページ解題を付し、読書の手引きとしました。(編集部)


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昭和編1収録作品

平林たい子「施療室にて」(昭2「文芸戦線」)31
井伏鱒二「鯉」(昭3「三田文学」)8
佐多稲子「キャラメル工場から」(昭3「プロレタリア芸術」)21
堀辰雄「死の素描」(昭5「新潮」)11
横光利一「機械」(昭5「改造」)38
梶井基次郎「闇の絵巻」(昭5「詩・現実」)8
牧野信一「ぜーロン」(昭6「改造」)29
小林多喜二「母たち」(昭6「改造」)19
伊藤整「生物祭」(昭7「新文芸時代」)16
室生犀星「あにいもうと」(昭9「文藝春秋」)31
北条民雄「いのちの初夜」(昭11「文学界」)51
宮本百合子「築地河岸」(昭12「新女苑」)18
高見順「虚実」(昭11「改造」)33
岡本かの子「家霊」(昭14「新潮」)20
太宰治「待つ」(昭17『女性』収録)4
中島敦「文字禍」(昭17「文学界」)12
(千葉俊二による解説:16頁)


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昭和編2 収録作品

中里恒子「墓地の春」(昭21「人間」)38
石川淳「焼け跡のイエス」(昭21「新潮」)21
原民喜「夏の花」(昭22「三田文学」)26
坂口安吾「桜の森の満開の下」(昭22「肉体」)37
野間宏「顔の中の赤い月」(昭22「綜合文化」)47
梅崎春生「蜆」(昭22「文学会議」)26
尾崎一雄「虫のいろいろ」(昭23「新潮」)18
武田泰淳「もの喰う女」(昭23「玄想」)15
永井龍男「胡桃割り」(昭23「学生」)17
林芙美子「水仙」(昭24「小説新潮」)24
大岡昇平「出征」(昭25「新潮」)40
長谷川四郎「小さな礼拝堂」(昭26「近代文学」)26
安部公房「プルートーのわな」(昭27「現在」)8


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昭和編3収録作品

小島信夫「小銃」(昭27「新潮」)20
吉行淳之介「驟雨」(昭29「文学界」)36
幸田文「黒い裾」(昭29「新潮」)33
庄野潤三「結婚」(昭29「文学界」)25
中野重治「萩のもんかきや」(昭31「群像」)17
円地文子「二世の縁 拾遺」(昭32「文学界」)30
花田清輝「群猿図」(昭35「群像」)47
富士正晴「帝国軍隊に於ける学習・序」(昭36「新日本文学」)34
山川方夫「夏の葬列」(昭37「ヒッチコックマガジン」)11
島尾敏雄「出発は遂に訪れず」(昭37「群像」)55
埴谷雄高「闇の中の黒い馬」(昭38「文芸」)9
深沢七郎「無妙記」(昭44「文芸」)22
三島由紀夫「蘭陵王」(昭44「群像」)11
(紅野謙介による解説:21頁)

★末尾の数字は文庫での頁数。


日本文学全集では個別作家の好き嫌いによって、読破セレクションのようにならず断念しそうだ。今も優れている作品は上手く並べられると、面白く読むことができる。さすがに昭和生まれの自分でさえ、既読は発表年代の若い順が多いですね。

posted by koinu at 14:54| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする