2019年07月18日

H・L・ボルヘス他,『ラテン アメリカ怪談集』鼓直ほか訳 (河出文庫)

『伝奇集』や『幻獣辞典』で有名な二十世紀ラテンアメリカ文学の巨匠ボルヘスをはじめ、コルタサル、パスなど、錚々たる作家たちが贈る恐ろしい十五の短篇小説集。ラテンアメリカ特有の「幻想小説」を底流に、怪奇、魔術、宗教、伝承、驚異などの強烈なテーマがそれぞれ色濃く滲むユニークな作品集。
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【収録作品】

「火の雨」ルゴネス(アルゼンチン)

「彼方で」キローガ(ウルグアイ)

「円環の廃墟」ボルヘス(アルゼンチン)

「リダ・サルの鏡」アストゥリアス(グアテマラ)

「ポルフィリア・ベルナルの日記」オカンポ(アルゼンチン)

「吸血鬼」ライネス(アルゼンチン)

「魔法の書」アンデルソン=インベル(アルゼンチン)

「断頭遊戯」レサマ=リマ(キューバ)

 「奪われた屋敷」コルタサル(アルゼンチン)

「波と暮らして」パス(メキシコ)

「大空の陰謀」ビオイ=カサレス(アルゼンチン)

「ミスター・テイラー」モンテローソ(グアテマラ)

「騎兵大佐」ムレーナ(アルゼンチン)

「トラクトカツィネ」フエンテス(メキシコ)

「ジャカランダ」リベイロ(ペルー)


あとがき  作家たちの冥府対談(鼓直)



「彼方で」付き合いを許されなかった恋人たちが心中を図って、幽霊になってデートを重ねた。彼方で幽霊二人を待ち受けるのは一体何なのだろうか?

「リダ・サルの鏡」咒で好きな人と結婚できる噂が実しやかに流れる街。そこで青年一人を巡って起きた事件が展開される。アストゥリアスは『大統領閣下』を長らく積んだままで、さっさと読もうと決心した。

「ベルナルの日記」ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』にインスパイアされた短編。似通っている導入から、背筋も凍るような展開が待っている。家庭教師と娘が衝突する、天使のように見える娘の綴る日記は恐怖を呼ぶ。

「吸血鬼」映画を撮影に古い城を訪れたスタックを待ち構えていたのは、まるでドラキュラ映画から抜け出してきたような老男爵。愉快なパロディ映画『ポランスキーの吸血鬼』を彷彿させる。

「魔法の書」夏休みに古本屋でとても不思議な書物を見つける。読めない文字で書かれた本は、最初から休まず読む時のみ解読可能になる。「読む」作業にとりかかるのに、食料を買い込んで頭痛に備えてアスピリンと目薬と眠気覚しを購入する。ひたすら読むのに熱中するのだった。

「波と暮らして」波が人間の男に恋をして、家に付いてきてしまう。この波の美しいカーブは人間の娘のように描かれる。蜜月から狂うような場面へ、突然に訪れる別れ。魅惑的なマジックリアリズム作品。

「ジャカランダ」妻を亡くしてしまった大学教授が陥る永遠のぐるぐるループ。何度読んでも様々な解釈を与えられる。

posted by koinu at 15:00| 東京 ☁| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする