2019年06月23日

木山捷平ユーモア詩篇

『白いシヤツ』木山捷平
旅でよごれた私のシヤツを
朝早く あのひとは洗つてくれて
あのひとの家の軒につるした。
山から朝日がさして来て
「何かうれしい。」
あのひとは一言さう言つた。
木山捷平
2904年、岡山県笠岡市に生まれ。地主の実家農業を継がずに文学を志して二十代で上京。平明な言葉遣い、独特のユーモアとエロスで郷里の風物を描いた詩集『野』(1929)、『メクラとチンバ』(1931)で詩人デビュー。やがて散文へと進み、文学の夢に破れて家業を継がざるをえなかった父親との軋轢、太平洋戦争時に満州で嘗めた辛酸、戦後の貧窮生活を糧に、急がず騒がず、時流に乗らないのではなく、乗りたくても乗れない生理を苦々しく楽しく、持てあましながら忘れがたい佳品を残す。

「濡縁におき忘れた下駄に雨がふつてゐるやうな/どうせ濡れだしたものならもつと濡らしておいてやれと言ふやうな/そんな具合にして僕の五十年も暮れようとしてゐた。」
posted by koinu at 09:06| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする