2019年04月30日

『偏愛文学館』倉橋由美子

夢十夜−夏目漱石

灰燼・かのように−森鴎外

半七捕物帳−岡本綺堂

鍵・瘋癲老人日記−谷崎潤一郎

冥途・旅順入城式−内田

雨月物語・春雨物語−上田秋成

山月記・李陵−中島敦

火車−宮部みゆき

百物語−杉浦日向子

聊斎志異−蒲松齢

蘇東坡詩選−蘇東坡

魔の山−トーマス・マン

カフカ短篇集−フランツ・カフカ

アルゴールの城にて−ジュリアン・グラック

シルトの岸辺−ジュリアン・グラック

異邦人−カミュ

恐るべき子供たち−ジャン・コクトー

アドリエンヌ・ムジュラ−ジュリアン・グリーン

架空の伝記−マルセル・シュオブ

名士小伝−ジョン・オーブリー

コスモポリタンズ−サマセット・モーム

偽のデュー警部−ラヴゼイ

高慢と偏見−ジェーン・オースティン

サキ短編集−サキ

太陽がいっぱい−パトリシア・ハイスミス

ピンフォールドの試練−イーヴリン・ウォー

めざせダウニング街10番地−ジェフリー・アーチャー

リオノーラの肖像−ロバード・ゴダード

ブライヅヘッドふたたび−イーヴリン・ウォー

二十四の瞳−壷井栄

山の音−川端康成

ヴィヨンの妻−太宰治

怪奇な話−吉田健一

海市−福永武彦

真夏の死−三島由紀夫

楡家の人びと−北杜夫

高丘親王航海記−澁澤龍彦

金沢−吉田健一


■講談社 2005.7.7

装幀 坂川栄治+田中久子(坂川事務所)

オビコピー「急逝した作家、倉橋由美子が残した至高の言葉。創作、その根源をたどり、著者が愛した作品だけを集めた、37篇、39冊の偏愛書評集。」

「夏目漱石、吉田健一、宮部みゆき、ジュリアン・グラック、ラヴゼイ……。古今東西39冊の「本」を取り上げた、倉橋由美子の手による私的書評集。最高のブックガイドとしてだけでなく、著者の作品世界、その背景までをも垣間見ることのできる究極の読書案内。」

■講談社文庫 2008.7.15

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2019年04月29日

Amyl and The Sniffers / Got You (2019)

オーストラリア・メルボルンのガレージパンク・バンド Amyl and The Sniffers が
 FLIGHTLESS (King Gizzard & The Lizard Wizard 主宰レーベル) から配信リリース

40年近い歴史を持つUKを代表する老舗レーベル〈Rough Trade Records〉から 5/24 リリース!
ニューシングル「Got You」のミュージックビデオを公開しました。アルバムには先行シングル「Monsoon Rock」を含む全11曲を収録。


「Got You」は、誰かと付き合いたての時に感じる気持ちについての曲よ。その人にどんな問題があっても、その人と会うだけでワクワクしてしまう。パブでその人を見るだけで、それが世界一エキサイティングなことだと思い、その人がそこにいるだけで、自分は何てラッキーなんだと思う。
 − Amyl and The Sniffers
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ホージアが初登場1位ビルボード・アルバム・チャート

ホージアが初登場1位にカッコ内は前週。


 1( -) ホージア「Wasteland, Baby」 89,000枚
 2( 2) アリアナ・グランデ「Thank U, Next」 86,000枚
 3( 1) サウンドトラック盤「スター誕生」 74,000枚
 4( -) 2チェインズ「Rap or Go to the League」 65,000枚
 5( -) リル・スカイズ「Shelby」 54,000枚
 6( 5) サウンドトラック盤「ボヘミアン・ラプソディ」 44,000枚
 7( -) ソランジュ「When I Get Home」 43,000枚
 8( 3) ガンナ「Drip or Drown 2」 42,000枚
 9( 4) オフセット「Father of 4」 39,000枚
10( 8) ア・ブギー・ウィット・ダ・フーディ「Hoodie SZN」 35,000枚
ビルボード・アルバム・チャート(2019年3月16日付)
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2019年04月28日

BACKYARD BABIES通算8作『Sliver And Gold』


スウェーデンが生んだ、BACKYARD BABIESのニュー・アルバムは、初期のイメージが蘇ったサウンドから、キャリア30年を感じさせる成熟した楽曲まで、ロックの真髄純粋なと魂が刻まれている。


BACKYARD BABIES『Sliver And Gold』
https://www.youtube.com/watch?v=Ur0m5aH2L2s
posted by koinu at 17:00| 東京 ☀| 音楽時間 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

unkle - ar.mour (feat. miink & elliott power)

ジェームス・ラヴェル(James Lavelle)のプロジェクト、UNKLEが「Ar.Mour (Feat. Elliott Power & Miink)」のミュージックビデオ公開。
この曲は新アルバム『The Road: Part II / Lost Highway』に収録




90年代を代表する伝説のレーベル〈Mo' Wax〉不定形の音楽プロジェクトUNKLE者としてオリジナル・アルバム、映画音楽、エキシビジョンや大型フェスのキュレーターとして25年もの間シーンの一線で活躍してきたジェームス・ラヴェル(James Lavelle)
posted by koinu at 13:00| 東京 ☀| 音楽時間 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『飢餓同盟』安部公房(新潮文庫)

1954年発表の長編小説。地方都市の未発に終わった反乱を、濃密な筆力でカルカチュア劇にした。
他の安部公房作品と『飢餓同盟』が異色なのは逃走する側ではなく、逃走を阻止する側のドラマとなっている。

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  舞台となるのは花園という田舎町で、三十年前ほどまでは温泉で賑わっていたが、大地震を境に湯が出なくなって寂れ菓子工場くらいしか産業がない。

主人公の花井太助はキャラメル工場に、主任という曖昧な地位についている。表向きは社長で、町長の多良根に忠誠を誓い、何でも屋を務めていたが、裏では秘密結社を組織していた。

 その飢餓同盟は花園へと町に流れてきた他所者から、「ひもじい野郎」といい蔑すさまれていた。虐げられたひもじい野郎を糾合して結社をつくった花井は、「金は毒、権力は悪、労働は罪」のスローガンで、革命を起こすのだと称していたのだ。しかし具体的な方策は何もなく、精々は町長の多良根の一派と、元町長で医師の藤野の一派を歪み合わせるのが関の山である。

  しかし二十年前に町を離れた織木が、鉱山技師となって戻って、情況が一変するのだった。彼の両親も他所者だったが、バス会社を開業するが失敗して憤死する。孤児となった織木は花井の母親の伝手で東京へと逃げて、鉱山技師の資格を取る。だが気狂い科学者ごとき所長によって、機械よりも感度の高い人間メーターに仕立てられる。健康を害して花園に逃げかえり、遂に自殺を計り遺書を綴る。作中に織木順一の書いた一人称の文体での遺書が、死にたくない立場から死なねばならない不条理の気持ちを1カ月にも渡って書いて、劇中劇として23頁にも掲載されている。

 人間メーターとしての異能を利用すれば、温泉を復活させて、更には地熱発電ができるほどの蒸気を噴出させられる。織木の性能を認めた花井が助けた。地熱発電所を作れば、町の権力構造を根底からひっくり返すのも夢ではないからだ。こうして結社の目標を見つけた花井は、飢餓同盟と改称して地熱発電所建設のために暗躍を始めるのである。


  花井の生家は町境のひもじい峠で、代々茶屋をしてる旧家で、本来は土着側にいた。他所者と付き合っているのは、ひもじい様を祭る家系のポジションにあるからだ。山道を歩いてきた旅人は峠に達すると気が弛み、急にか空腹感に襲われたり、一歩も歩けないほどの疲労感、虚脱感にみまわれるのがある。昔の人はそんな現象を妖怪のせいだと考えた。地方によって「餓鬼憑き」「ひだる餓鬼」「ひだる神」といわれて広く分布している民間信仰である。

「ひもじい様という飢餓神が、いつも町境をうろついていて、外来者をみつけると、すぐにとっついて餓死させてしまう……ね、いかにも農村共同体的な、いやらしい迷信じゃないですか。他所者なら、飢え死にしてもかまわないっていう、陰険な排外主義の合理化なんですよ」ここで農村共同体のように閉じてはいない。花園はかつては温泉で栄えた町であり、外部との交通で成り立っていた。他所者が白眼視されるのは、他所者がそれだけ内部に入り込んでいたからである。他所者の力なくしては、花園は立ち行かない。

 峠でひもじい様を祭る花井家は、茸の干物を梅酢に漬けた「満腹」「ひもじい除け」という土地の名物を一手販売する権利を与えられていた。特権が許されたのは、同家が他所者との交渉において媒介者の役割を果たしてきたと思われる。

 人形芝居屋の矢根のような流れ者を新たに町に引っぱり込む一方、ひもじい野郎たちに革命という希望を与えて、町に引き留める役割をはたしている。

 そしてキャラメル工場社長の多良根との特別な関係である。今では花園町のエスタブリッシュメントの一員だが、もともと多良根は澱粉の一手買附業者として町に乗りこんできた他所者だった。町に貢献しているのをアピールする必要に迫られて、奨学金の提供を申しでる。花園小学校を一年から六年まで主席で通した者がいれば中学の学費を出して、中学でも主席で通せば専門学校まで面倒をみるという。

 多良根は高を括っていたが、小学六年生だった花井は奨学金を貰う条件を満たして慌てる。一銭も出したくないから、花井には尻尾が生えている噂を種に難癖をつけるが、彼が寒暖計の水銀服毒で自殺する時点から奨学金を出さざるをえなくなる。意地になって中学でも一番を通して、多良根の金で農業専門学校に進学する。花井が学業を終えるまでの期間、毎年の学期末になると、地元紙の一面に優等賞をとった花井と、奨学金を出す多良根がにこやかに並ぶ写真が掲載された。

 裏では多良根は癇癪をおこし、花井は悔し涙に歯噛みするという修羅場が演じられていた。二人とも気がついていないが、多良根が町の一員として受けいれられる上で、年中行事となった奨学金報道が大きな役割を果たした。花井は子供の頃から外部の力を町に呼びこむ、媒介者の役割をしていた。媒介者という役割が花井の意識を超えるのは、織木との関係からもわかる。

 人間メーターにされるのが嫌で、織木は東京から逃げてきたが、花井に説得されて温泉を探査することを承知する。決め手になったのは花井の姉、里子の思い出だった。織木は同級生だった里子に思いを寄せていたが、彼が東京に逃げた後、里子は土地の有力者の藤野の弟に手籠にされ、その後チフスで死んでしまう。呪うべき故郷花園に戻ってきたのは、里子の思い出に導かれてだった。薄幸に死んだ里子に殉ずるように、死を覚悟で人間メーターに戻る。

 飢餓同盟の温泉探査は成功して、花園には再び湯が戻ってくるが、成功の果実は多良根や藤野ら町の権力者に横取りされてしまう。織木は死んで、花井はカーニバルの道化王になれずに発狂する。

 この共同体は食虫植物のように、外部の力を必要としていた。花井と姉は意識していないが、共同体の奸知に操られ捕虫器のように、「ひもじい野郎」たちを絡め取っては土地の養分にしていたのだった。

「正気も、狂気も、いずれ魂の属性にしかすぎないのである。」(安部公房『飢餓同盟』講談社)


安部公房・原作

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2019年04月27日

「鼻水を止める方法」

「ほんの少しの水を口に含んでそのままにする」

鼻の粘膜を潤すためにいつも出ている。通常は鼻から鼻水が出てこない、喉に流れていけば、当然鼻からは出てこない。


「鼻づまり」を20秒で解消する方法。
http://lifehacker.com/5944971/

舌で口内の上の部分を押して、眉間に指を押し当てる。その状態を20秒間保つと、鼻づまりが解消されていく。


【香辛料の香り】

唐辛子に含まれるカプサイシンは「鼻漏」という、鼻腔から粘液が分泌される状態と発汗の原因になる。

身体から刺激物を出そうとする反応。

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2019年04月26日

キャンディとラーメンの映画

お菓子作りのキャンディー工場があって、隣の空き地にラーメン屋がある。

どちらかファンタジー映画の舞台に相応しいか?

多くの人々が期待するのどちらか?
しかし敢えて夢少ない選択肢を選んで、制作する皮肉なる場合もあるのであった。

「ラーメン修業をやってみたいという気持ちが湧いてきた」(20代・男性)、「ラーメン愛に溢れてて良かった。ラーメン食いてぇ」(20代・女性)、「とんこつでもなく塩でも味噌でもなくシンプルな醤油、中華そばってのが良いね」(40代・男性)
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2019年04月25日

【マコモの効果】


ガーネッシュ効果
記憶力アップ
心を落ち着かせる
集中力を高める
印象を残す
脳の働きを活性化させる

It's A Beautiful Day のジャケット
マコモの茎の部分に黒穂菌が寄生して、茎の根元を肥大させる。このマコモダケは優れた体内浄化作用もあり、アトピーや切り傷などに最適。
中国の古書「本草綱目」にマコモ(真菰)が肺・心臓・肝臓・脾臓・腎臓の五臓を利し、毒を消すとあり、日本の有名な薬学書「和漢薬」には婦人病に効くと記される。


【マコモの効果】
・高血圧の抑制
・副腎皮質ホルモンの分泌促進
・免疫力の向上
・毒素排出(デトックス効果)
・大腸の大腸菌を減らす
・ガンの増殖を抑制
・糖代謝を促進して血糖値を下げる
・性ホルモンの働きを高める

東海大学農学部ではマコモのの《煮出し液》に、すぐれた抗酸化作用がを確認した。マコモの薬効根本は、大腸で発生した腐敗毒を、マコモ菌が分解して無毒化する。
古来からマコモタケに生殖する微生物は、高熱にも耐えられる生命力を持っている。
「マコモの研究は地球上に初めて生命が誕生した時の神秘を解明できるのではないか」
「地球上に初めて誕生した植物はイネ科の植物だったのではないか」と研究されている。
posted by koinu at 10:18| 東京 ☁| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月24日

荘子『占い師が逃げ去る』

鄭有神巫曰季咸、知人之生死存亡、禍福壽夭、期以歳月旬日、若神。鄭人見之、皆棄而走。列子見之而心醉、歸以告壺子。曰「始吾以夫子之道為至矣、則又有至焉者矣。」壺子曰「吾與汝既其文、未既其實、而固得道與?衆雌而無雄、而又奚卵焉。而以道與世亢必信、夫故使人得而相女。嘗試與來、以予示之。」明日、列子與之見壺子。(『荘子』応帝王 第七)

人の生き死に幸運不運や寿命を、何年何月何日まで言い当てる、神のような占い師がいた。鄭の人はそんな占い師の前では、何でも見透かされると裸足で逃げ出すという。列子は占い師に心酔してしまい、師匠の壷子に告げた。「先生に道について学んできましたが、その先の教えに占い師を見て知りました。」


師匠は語る「お前に道(TAO)について教えたが、そこから会得したつもりか? どれだけ雌鶏がいても雄鶏がいなければ、卵は孵らない。道を学ぶのが分かってないから、占い師ごときに心を見破られている。試しにその占い師を呼んで来い。」


明日、又與之見壺子。立未定、自失而走。壺子曰「追之!」列子追之不及、反以報壺子「已滅矣、已失矣、吾弗及也。」壺子曰「郷吾示之以未始出吾宗。吾與之虚而委蛇,不知其誰何、因以為弟靡、因以為波流、故逃也。」然後列子自以為未始學而歸、三年不出。為其妻爨、食豚如食人。於事無與親、彫琢復朴、塊然獨以其形立。紛而封哉、一以是終。


人の禍福や寿命を見抜いて、年月日もいいあてる占い師・季咸に心酔した列子を、翌日、師匠の壺子のもとに連れくることとなる。


季咸は「貴方の先生は間もなく死ぬ。生気のない湿った灰の相がある。」と告げる。涙ながらに語る列子に、壺子は「大地のかたちの相を見せてやった。もう一度連れてこい。」という。


再び壺子を見た季咸は「貴方の先生は私に会って回復した。十分に生気が漲っている。」と告げた。列子が壺子に伝えると「天地開闢の相をみせてやったのだ。もう一度連れてこい。」という。


翌日に季咸は「先生は人相が一定しない。私にはとても占うことができない」と語った。この事を伝えると「虚無の相を見せてやったんだ。試しにもう一度連れてこい。」と壺子と答えた。


季咸は壺子に会うと、訳が分からなくなって逃げた。壺子は「あいつにわしの本質そのものの相を見せた。自分を虚しくして周囲のままに従い、相手が何者かも考えず、ただそのままに漂った。だからあれは逃げ出したのだ。」と内情を明かす。


未熟さを悟った列子は、三年間家に引き篭もって妻のために炊事をしたり、豚を人と同じように養ったりして過ごした。物事に区別や愛憎を抱かなくなり、無心の土塊ごとく素朴さに帰って、混沌とした有様で生涯を終えたという。



【参考文献】岸 陽子『中国の思想・荘子』(徳間書店)


莊子曰「以魯國而儒者一人耳、可謂多乎?」(「荘子」田子方第二十一)

TAOと占い師の教えは違うと、荘子は思想を示した。この世に絶対者もなく、「易経」世界観から、未来を予知する愚かさを解いた。どの時点で運命に左右されなくなるのか、何も意識しない状態から学ぶ。『荘子』は「完成と破壊があるのは、昭氏が琴を弾いた場合で、完成と破壊がないのは、昭氏が琴を弾かない場合である」という。



岸陽子「中国の思想・荘子」改題
「荘子は、自然を損なうものとして、人為を否定した。人為の観点からすれば無用なものほど、実は貴いのであるという価値の転換が、ここに成立する。
無用であればあるほど、人為とのかかわりが薄れる。つまりその自然が保たれる。人間が何者の道具にもならず、自己のために生きてこそ、天寿を全うできると説くのである。『無用の用』という逆説でしか表現しえない価値こそ真の価値なのだ」


「生きるために心身を労して外物と争い、それによって心身をすりへらし滅ぼしてゆく、この動かしがたい矛盾は、なんら解明されていないのである。
その人生の不可解さを、人々はどう解釈するのであろうか」


「太古の人こそ、最高の知の所有者だったといえるのではなかろうか。
なぜならば、かれらは自然そのままの存在であり、かれらの意識は、主客未分化の、いわば混沌状態だったと考えられるからである。この混沌こそ、もっと望ましいありかたなのである」


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2019年04月22日

タロットの三界分類

1.奇術師から戦車は生まれてから成長する「物質界」での過程。
2.正義から節制は精神的に成長して、老いて転生する「霊界」までの過程。
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運命の輪は物質界から幽界へ至る分岐点となっている。
3.悪魔から世界は天上で「神界」を完成させるまでの過程が描かれる。
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「タロット」原画図鑑

http://zerogahou.cocolog-nifty.com/photos/peintora22/index.html


ペンギンタロットの世界へ

http://koinu.cside.com/


21+0の物語☆序   http://penguintarot.seesaa.net


ペンギンタロット[製品]

http://pentacle.jp/?pid=108373164

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2019年04月21日

「豚;PigLib」吉村益信

作品名. 豚;PigLib. 素材・技法. 剥製、 プラスチック他. 制作年. 1994年. サイズ. 高104.0×幅144.0×奥行59.0p。
サヴィニャックを本歌取りした’71年作のセルフリメイク 作品。
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吉村益信
昭和後期に活動した美術家。大分県大分市出身。昭和7年5月22日生まれ。昭和30年から読売アンデパンダン展に出品。35年篠原有司男らとネオ・ダダイズム・オルガナイザーズを結成。37年渡米して、帰国後ネオン管をもちいるライトアートを発表。50年アーチスト・ユニオンを結成。従来の型にはまらない多彩な活動をつづけた。平成23年3月15日死去。78歳。大分県出身。1932−2011
posted by koinu at 13:00| 東京 ☀| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『夢の遠近法 初期作品選 増補』 山尾 悠子(ちくま文庫)

「誰かが私に言ったのだ/世界は言葉でできていると」―未完に終わった“かれ”の草稿の舞台となるのは、基底と頂上が存在しない円筒形の塔の内部である“腸詰宇宙”。偽の天体が運行する異様な世界の成立と崩壊を描く「遠近法」ほか、初期主要作品を著者自身が精選。 「パラス・アテネ」「遠近法・補遺」を加えて、創作の秘密がかいま見える「自作解説」を付した増補決定版。

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「パラス・アテネ」本文冒頭より

月が西の空に仄白くなりつつある時刻、長い旅の途上にあったその隊商は、まだ夜の残る森の奥で大虐殺のあとに行き当たった。野面には血に飽いた豺狼の群がわくわくと背を波うたせて駆け去っていくのが遠望され、振り返れば、辺境の野の果てには落日に似たすさまじい朝焼けがあった。不眠の要塞都市のあげ続ける狼煙が地平に薄くたなびいて、その時森の奥処に立ちすくむ人間たちの眼には、それはこの世の果ての遠い朝火事かと映ったのだ。

小暗い森の底を縫ってうねうねと続く道沿いに、屍体の群はほぼ一町に渡って散乱し、その数は百数十まで数えられた。荷を略奪された跡があり、また屍には矢傷と獣の爪跡との両方がある。おおよそは、遠い内乱を避けてこの地の都市へと逃げこもうとしていた難民の一行が、昨日辺境に多く出没する野党の類に襲われて全滅し、その後夜のうちに群狼に踏みにじられたものと思われた。――ほとんど日の斑も漏れこまない葉ごもりの影へと、人々は松明の焔を走らせながら蹌踉と歩いた。

狼除けの鋳物の鐘が鳴り、人間たちの足は再び動き始めた。遠音に吠えかわす豺狼の声を耳に、森を抜け平原を行く隊商の先頭で、幼児はひとり仄かに微笑していた。この微笑は、人間たちの眼にはとまらなかったし、その意味を知る者も一人もいなかったに違いない。幼児の姿は、生まれおちて以来この輿の上に暮らしてきた者のように見えた。幼児自身、何故自分の顔に微笑が宿って消えないのか知らなかった。理由のない笑みのためにますます細められた幼児の眼は、ただ行く手の野の果てに湧く雲だけを鏡のように映していたのだったが、しかしこの時、背後の森の真上に残った半欠けの白い月球が、半眼の狼神の片目のように地表を行く人間たちの背をはるかに見送っていたのだ。

それから、十年たつ。

(以上プロローグでは映像くっきりと浮かび上がるくらい、優れた言語感覚である。続いてセレモニーの場面では、熱狂や色彩が感じられる描写が連なる。)

足留めの不安な一日が不安なままに暮れるまで、人々はその不安の源を確かめようとするかのように、顔を合わせると額を翳らせて不穏な噂ばかりを囁きあっていた。十数年来燻りつづけている内乱の噂、大陸を大きく横切ってこの山間の小王国いも侵入し始めているという天刑病の噂、冬に入ってからますます頻発するようになっている狼の害について。その名のとおり元々は夏の避暑用に前世紀の始め建てられたという夏の離宮では、いくら炉の薪をかきたてても、絶えず隙間風が忍び入ってくる。その中で、人々は昔ここに幽閉されていたはるか先代の狂王の伝説を囁きあい、さらに声を低めて二位について語りあっていた。

夕方から吹雪が始まり、日没より早く都には夜が降りていた。日中、吹きすさぶ強風の絶え間には王宮の外から遠く切れぎれに祭儀の鐘の音が聞かれたが、吹雪になった頃からそれも途絶えた。ただ、高い窓から遠く見渡すと、四つ辻ごとに年送りの篝火が高く火の粉を飛ばすのが見え、今夜全都が一夜を徹して眼ざめているだろうことが窺われた。何度かは、その火の粉が飛んだのか屋根屋根の稜線の一劃から小さく火の手が上がるのが見え、強風の中にたちまち燃えひろがって半鐘が長く尾を曵いた。

――狼領の血筋につらなる者は、多くは成年に達する年齢で繭籠もるものです。たいていは、春に。短くて三日、長ければ数年かかって繭から新生して現われる……しかし、これほど定まった法則を持たない現象というものはこの世にまたとありますまい。

港を望む丘陵からは、夜の海峡を絶えず押し渡っていく船群の、おびただしい檣頭の燈が見渡された。その遠い海面に満ちているであろう帆柱の軋り音や櫂漕ぐ男たちの叫喚、蓋を打ち割られてゆたかに滾り溢れる酒の繁吹、船腹を打つ潮の音を、丘の上に立つ者たちは幻のように聞いたと思った。海峡の両岸に谺する砕ける波の咆哮のなか、やがて帆に海風を孕んで、船団は大洋をめぐる古代潮流に乗って次々に行き過ぎてゆく。そして季節風の渡る丘を下って、燈火と雑踏の影に満ちた街衢に降りたった者たちは、そこにも数知れぬ潮流の幻を見たのだった。四つ辻ごとに足を止めて道の両端を埋める群衆の中、高い輿に乗って煌々しい帽子の先端や旗先ばかり覗かせてゆったりと過ぎ行く貴人の行列は、暗い潮を渡っていく帆柱の列に似たのだ。数限りなく街に立てられた松明や篝の焔は、人の面ばかりを烈々と照らして、その背後には奥の知れない闇を曵く。時にわけもなく入り乱れて、口々に叫びかわしながら街の一端から一端へと駈けすぎていく群衆の頭上に、月は赤く染まってはるかに海峡を照らしていた。

「パラス・アテネ」より

祭りの音響や照明の色彩が、鮮やかに描かれた短編小説が際立つ世界となっていく。硬質なイメージから浮かび上がる赤々とした情景。絵や音楽を想起させる文章のつづきを是非ともお楽しみいただきたい。


『夢の遠近法 初期作品選 増補』目次

夢の棲む街

月蝕

ムーンゲイト

遠近法

パラス・アテネ

童話・支那風小夜曲集

透明族に関するエスキス

私はその男にハンザ街で出会った

傳説

遠近法・補遺

月齢

眠れる美女

天使論


◇ 一人称の吐露音楽を聴く時間より、心から高揚するイメージは精神を羽ばたかせる。 

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山尾悠子『角砂糖の日』

1982年に深夜叢書社より刊行され、長らく品切れとなっていた山尾悠子の唯一の歌集『角砂糖の日』がLIBRAIRIE6から新装復刊。特典として書き下し掌編小説『小鳥たち』を収録。

「小鳥のやうに愕き易く、すぐに同様する性質の〈水の城館〉の侍女たち、すなはち華奢な編み上げ靴の少女たちは行儀よく列をなして行動し、庭園名物の驚愕噴水にうかうか踏み込みたび激しく衝突しあふのだった。」(『小鳥たち』冒頭) 

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短歌『角砂糖の日』より

春眠の少年跨ぎこすと月昏らむ いづこの森やいま花ざかり

昏れゆく市街に鷹を放てば紅玉の夜の果てまで水脈たちのぼれ

角砂糖角ほろほろに悲しき日窓硝子唾もて濡らせしはいつ

金魚の屍 彩色のまま支那服の母狂ひたまふ日のまぼろしに

腐食のことも慈雨に数へてあけぼのの寺院かほれる春の弱酸

鏡のすみに野獣よぎれる昼さがり曼陀羅華にも美女は棲みにき

夢醒めの葛湯ほろろに病熱の抱きごころ午後うす甘かりき

春を疲れ父眠りたまふあかときはひとの音せぬ魂もたつかな

百合喇叭そを枕として放蕩と懶惰の意味をとりちがへ春

幾何学の町に麺麭買ふ髭をとこπの算術今日咲き継がせてよ

狼少年と呼ばれて育ち森を駈けかけぬけて今日罌粟の原に出ぬ

小花小花零る日を重ね天文と地理のことなど見分けがたきよ

韃靼の犬歯するどき兄ありき娶らずば昨日風の野に立ちしよ

曠野の地平をさびしき巨人のゆくを視つ影うすきかな夕星透かし

独逸語の少年あえかに銀紙を食める日にして飲食のこと憂し

絵骨牌の秋あかあかと午後に焚く烟れば前の世なる紫色

◉ カルタを火にくべると、赤い炎が紫の煙へと変わってゆく。「前世」の先は「紫色」の先となり、その燃える音に誘われて、生まれる前の遠い記憶が煙の中に浮かぶのだった。

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「<世界は言葉でできている> というのが山尾悠子を象徴する言葉ではないか」そこに描かれた世界は<虚構> であり、<観念>である。山尾短歌も「言葉でできている」から、歌のなかに散りばめられた煌めく言葉が、視神経を辿って脳細胞に刺激する感覚を味わう。

散文詩のような素人でも手が出せる代物ではなくて、「俳句を作るとき、そこには外的世界に求められるモチーフというものはなく、言葉がすべてである。上質の言葉を発見しそれを研磨しおえた時点で作品は完成する」(小林恭二)のだ。この結晶させる純粋化学反応は、吐露のような排泄に近い表現からは生まれてこないだろう。

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山尾悠子『角砂糖の日』A5判変型上製 104pages 函入り

挿画は合田佐和子、まりの・るうにい、山下陽子。函と表紙に銀箔押しをした美しい製本。2017年刊行後に即絶版となる。


●山尾悠子 1955年岡山県生まれ。幼少期にナルニア国物語、学生時代に澁澤龍彦の著作を介して様々な異端文学に影響を受け、在学中に「仮面舞踏会」を『SFマガジン』のSF三大コンテスト小説部門に応募、75年同誌に掲載されデビュー。日本SF作家クラブのメンバーとして小松左京、星新一、筒井康隆、手塚治虫、永井豪らに刺激を受け創作を続ける一方で、その幻想的な作風と熱狂的な愛好者がいながら作品が単行本されないまま、休筆状態であったことから、孤高の作家、伝説的作家と見なされるようになる。99年に「幻想文学」誌に「アンヌンツィアツィオーネ」を発表して復活。2000年には単行本未収録作も含むそれまでの作品を集めた『山尾悠子作品集成』が国書刊行会より発行され、2003年9月には2作目の書き下ろし長編『ラピスラズリ』を発表。

http://tacoche.com/?p=14138


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2019年04月20日

ケミカル・ブラザーズの新作『No Geography』

ケミカル・ブラザーズは新作より“We’ve Got To Try”のミュージック・ビデオの舞台裏を追った映像が公開されている。

https://nme-jp.com/news/71827/

「直感的で本能的に聞こえるサウンドも実は時間をかけて作っているんだ。長年かけて培ったスキルを駆使して僕らは時間をかけながらあの直感的でミュージシャンになりたての頃のフィーリングを伝えられるよう努力した。

何時間もジャミングしてレコーディングし、色んな演奏を試してぴったり合うパートを探し求めた。ここまで生々しくフレッシュなサウンドを作り上げるにはそれ相当な努力が必要なんだ。」トム・ローランズ

ケミカル・ブラザーズ公式サイト https://www.universal-music.co.jp/the-chemical-brothers/


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THE DRUMSのニューアルバム『Brutalism』

「Let's Go Surfing」で鮮烈なデビューした、Jonny Pierceのソロ・プロジェクト THE DRUMS。

いくつもの苦難を乗り越えたバンドが10年のキャリアで、偽りなくポップでモダンなサウンド内容。
626 Bedford Avenueアルバム視聴
子供の頃にサマーキャンプで知り合ったジョナサン(Vo)、ジェイコブ(Gt)を中心に、2008年に結成されたニューヨーク・ブルックリン出身グループ。 
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The Raconteurs、11年ぶりアルバム『ヘルプ・アス・ストレンジャー』6月21日リリース

ジャック・ホワイトブレンダン・ベンソンによる新曲のほか、ドノヴァンが1965年に発表した「Hey Gyp(Dig The Slowness)」のカヴァーを収録。

「Hey Gyp(Dig The Slowness)」

 ジャック・ホワイト(vo, g)、ブレンダン・ベンソン(vo, g, key)、ジャック・ローレンス(b)、パトリック・キーラー(ds)

デッド・ウェザーのバンドメイトのディーン・フェルティタ、ジャックのプロデュースでソロ・デビューしたリリー・メイ・リシュ、ブルーグラス・バンドThe Rischesでリリーと活躍するスカーレット・リシュが参加。
短期間でノリノリの曲を編み出す、音楽の錬金術ですね。
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2019年04月19日

「高丘親王航海記」の見事なコミック化

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澁澤龍彦さんの遺作漫画化「高丘親王航海記」、幼少の頃に薬子から預言として教えられた天竺への旅立ち、圧倒的な異国世界を、近藤ようこ氏の華麗なレイアウトで連載二回目に突入。『月刊コミックビーム』期待を超える素晴らしさです。
https://www.kondoyoko.net/
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『高丘親王航海記』は薬子の変により皇太子の地位を失い出家して唐に渡る。親王の天竺をめざす海路において、南海の国々を巡り様々な生物や精霊と邂逅する。大蟻食い。貘。犬頭人。儒艮。迦陵頻伽。この仮想的な親王の旅は、澁澤さんの病床と同期して結ぶ、琴線に触れる物語となっている。

「親王、先に震旦過ぎて、流沙を渡らんとす。風聞、羅越国より到る。逆旅に遷化すと。」

同じ物語の本を単行本、文庫本、新装版と何冊も揃えて、電車、公園、書斎、寝枕用とする『高丘親王航海記』。これは別格なる陶酔する書物となっている。



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M.デ・セルバンテスの短編小説を読む

セルバンテス短篇集 (岩波文庫)

長編小説『ドン・キホーテ』の作者(1547‐1616)が短篇作家であるのを如実にあかす傑作集。

『やきもちやきのエストレマドゥーラ人』『愚かな物好きの話』『ガラスの学士』『麗しき皿洗い娘』の四編訳出。


『やきもちやきのエストレマドゥーラ人』金持ちの老人と結婚した十代の美女が、召使と豪奢な邸宅で暮らしていた。遮断された家をつくり、妻が人目に触れぬよう閉じ篭って生活してるのを、街の若い遊び人が目を付ける。若い音楽家がそこに忍び込もうと、門番である召使に音楽を教えたりして、機嫌をとって妻をはじめ一家全体を巻き込む。

『愚かな物好きの話』親友に頼んで美しき妻の貞淑を試そうとする。固い絆で結ばれている筈の片方が、妻の貞操を確かめたくて、友人に自分の妻に言い寄ってくれと頼む。友人は最初は適当にお茶を濁すが、次第に真剣になってしまった。「愚かな」と形容詞が題名のとおり、作者は妻をためす男を馬鹿にして、喜劇でもあり悲劇でもある。

『ガラスの学士』女から盛られた媚薬の副作用で、自分の体はガラスでできていると思いこむ主人公。「彼のこのおかしな幻覚から救い出してやろうと、多くの者が、相手の叫び声や懇願などものともせず、彼にとびかかって抱きしめ、ほらよく見るがいい、べつに壊れはしないじゃないかと説得してみたが、そうした努力も結局はすべて水泡に帰した。抱きつかれた学士は、けたたましい金切り声をあげながら地面に身を投げ出すと、そのまま失神してしまい、ほとんど四時間もしなければ正気に戻らなかったし、おまけに正気に戻れば、またぞろ、頼むから近寄らないでくれという例の嘆願を繰り返したからである。そして彼は、近寄らずに遠くからであれば、なんなりと好きなことを質問してもらいたい、自分はガラスの人間であって肉体をそなえた人間ではないから、どんな質問に対しても、より思慮深い返答を与えられるはずだ、なんとなれば、ガラスというのは繊細にして緻密な物質ゆえ、それに包まれた精神が、重苦しくも俗臭紛々たる肉体に包まれたそれより機敏に、しかも的確にはたらくのは明らかなのだから、などと口走った。
 すると、彼の言うことが本当かどうか試してみようとする者も現われて、多くの難問をやつぎはやに吹っかけたが、彼はいささかもとどこおることなく、明快な答えを並べて、驚くべき才知のひらめきを見せつけるのであった。」
学才はあるのに狂乱した学士の問答がナンセンスである。学校の成績は良いのだが、社会的には狂気クレージー丸出しの生き方をする、アタマの頭痛がイタイ男もいるという逸話。

『麗しき皿洗いの娘』放浪生活に憧れて家出する良家の若者。ある街で宿屋で仕える有名な美女に惹かれて、皿洗いの住む込みをする。物語が終わりでは、麗しい娘の正体、生い立ちそして若者との関係が明らかに。古典的な神話や民話などにあるモチーフを現代風にアレンジして、組み合わせて独自のものに昇華させているのはブルースとロックの関係に限りなく近い。

セルバンテス短篇集/ミゲル・デ・セルバンテス(岩波文庫)

https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b270591.html

これらの阿呆らしいキャラクターたちは、長編小説『ドン・キホーテ』の数々のエピソードへつながっているようにも読める。中世にあった物語とするのではなくて、人間本質の普遍的要素と捉えても興味深い。そして誰もが多分に近親者たちにも思い当たる事象から、カルカチュアして現実世界を味わえる春の読書となるだろう。

「頭よ頭、泣くんじゃないの

気をしっかり持って、明るくするのよ

その二つの支えがあってこそ

忍耐にも効き目があるのだから!


希望がなくなるわけじゃないのよ

頭痛がひどくなって

もっと苦しくなったとしても

悲しみのあまりに

何ごとも考えすぎはいけないわ

空想なんてもってのほかよ」 

《頭よ頭、泣くんじゃないの》(プレショーザの頭痛の金言)スペイン歌曲集_世俗歌曲集より


『模範小説集』 M.デ・セルバンテス 著 牛島 信明 訳(国書刊行会)

「ジプシー娘」「犬の会話」「偽装結婚」「リンコネーテとコルタディーリョ」「やきもちやきのエストレマドゥーラ人」「ガラスの学士」「麗しき皿洗い娘」「血の呼び声」の8篇を画期的な新訳収録。


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2019年04月18日

『ローマ帝国の神々―光はオリエントより』 小川 英雄 (中公新書)

古代ローマ帝国はオリエントの進んだ文化や技術を積極的に取り入れた。エジプトやシリアなどを起源とする諸宗教も、皇帝から奴隷まで多くの信者を獲得した。当時ローマ古来の神々はすでに形骸化していたため、新しい宗教が求められていたのである。

イシス信仰からバール神、キリスト教、グノーシス主義、占星術まで、ローマ帝国全域で信仰された諸宗教の密儀と神話、信仰の実態と盛衰に光をあてる。


小川英雄 

1935年、川崎市生まれ。慶応義塾大学大学院修了。ロンドン大学、ユトレヒト大学に留学。イスラエル、イギリスで発掘調査に従事。慶応義塾大学文学部教授を経て、現在同大学名誉教授。文学博士。専攻・古代オリエント史。

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