2017年06月11日

『夜のガスパール レンブラント、カロー風の幻想曲 アロイジウス・ベルトラン散文詩集』風の薔薇 1983/岩波文庫 1991


シュールレアリストに評価された怪奇と幻想の詩人ベルトラン。詩集夜のガスパール』後半を破棄しようとしていたが、散文詩の理想として「第一の書」があった。死の翌年にサントブーヴとダヴィット・ダンジュにより夜のガスパール』は出版されたが、世に知られることはなかった。後にボードレール、マラルメに称賛され、モーリス・ラベルが「オンディーヌ」「絞首台」「スカルボ」の三編をテーマとしたピアノ曲を作曲するにいたってようやく名声を得た。
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ロマン派全盛の時代にあって、散文形式の叙述による詩という新しい形式、そして、客観的な幻想性というシュールレアリストに受け継がれる表現を創始した作品。

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夜のガスパール』原典は65編の詩と序文からなるが、ラベルがとり上げた三編と比較的親しみやすい二編を抜粋し「夜のガスパール 抄」として訳出。

庄野 健氏による新訳夜のガスパール』もあり、読み比べをお勧めします。

https://www.amazon.co.jp/%E5%BA%84%E9%87%8E-%E5%81%A5/e/B00AWOPZKO

posted by koinu at 14:50| 東京 ☀| 本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Gaspard de la nuit


聞いて、聞いて

私よ、オンディーヌよ

やさしい月の光がさす窓を

月光に輝く飾り硝子を

夜露のようにそっとたたくのは私


私こそは

白絹のようなしぶきに身をつつみ

美しい星空を映した静かな湖を統べる

水の乙女


たち騒ぐ波は水の精

すべての流れは私の王宮への径みち

私の王宮は

火と土と風のはざま

湖底にかくされた秘密


聞いて、聞いて

私の父は榛はんの若木の枝で水を従えるのよ

姉さまたちは白い波で

水蓮やグラジオラスが咲きみだれる

緑の小島をやさしく包み

釣人のように枝を垂れた

柳じいさんをからかっているわ


そしてオンディーヌは指輪を差しだした

この私に彼女の夫となるべく

水の宮殿で湖の王となるべく


しかし私は

限りある命の乙女を

愛していることを告げた

オンディーヌは

恨みがましく涙を流したかと思うと

嘲笑を私に浴びせかけた

そして水のなかへと

帰っていった

オンディーヌのたてたしぶきが

青硝子に白い跡を残した


posted by koinu at 07:57| 東京 ☀| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする